〜卒業生教員からのメッセージ

2009年度 「卒業生教育関係者の集い」

11月15日(日)の午後2時から4時、ペテロ館5階の第4会議室にて教職課程委員会主催の2009年度「卒業生教育関係者の集い」が開催されました。この催しは、本学卒業の教育関係者を対象とする同窓会として始められましたが、途中から教職課程を履修する在学生も参加するようになり、教職をめぐる卒業生と在学生との交流の場へと発展したものです。当日は、大学開学50周年となる「第6回 ホームカミングデー」の日でもあり、この集いも今年度で10周年を迎え、記念すべき日となりました。

今年度のホームカミングデーは、当初の計画では5月31日(日)に予定されていましたが、新型インフルエンザ対策により中止となったため、大学祭の最終日に延期されました。そのため、履修学生の参加が難しくなることが予想されましたが、教職課程の授業時に案内プリントを配布したり卒業生への質問アンケートを行ったりしてPRに努めた結果、11名の履修学生の参加がありました。そして、卒業生とそのご家族の8名および教職員6名も合わせて、総勢25名で有意義な意見交換会をもつことができました。

まず、第1部の「卒業生スピーチ」では、山田耕治氏(大阪市立鶴見商業高等学校)と石原誠氏(イング株式会社)から基調報告をいただきました。その後で、竹原正浩氏(豊中市立第八中学校)、境 千鶴氏(明光義塾)、戸江雅一氏(岸和田市立中学校)、芝山和麿氏(堺市立平井中学校)、小野博建(育英ゼミナール)・依子(大阪産業大学附属高等学校)ご夫妻の6氏から、近況報告および教職を志望する後輩たちの質問事項(卒業生への質問アンケートを集約したもの)への回答とともに、熱いメッセージをいただきました。質問事項は次のとおりです。
1.教職とは(教職の魅力、なぜ教職に就いたか、学生時代に考えていた教師像と実際との違い等)
2.教職の現場について(課題と改善点、仕事の楽しいところと苦しいところ、生徒指導上の苦労等)
3.採用試験対策について(勉強の仕方、どのようなテキストがよいか、面接の様子等)

引き続き、第2部「卒業生と教職課程履修学生との懇談」では、最初にグループ討論を行いました。参加者は2つのグループに分かれて活発に意見交換を行いました。卒業生からは、経験に基づいた有意義なアドバイスをたくさんいただくことができました。茶菓子をつまみながら賑やかな懇談が続いた後で、最後の全体会へ移りました。各グループから1名選出された学生代表が、グループでの討議内容について簡単に報告を行いました。盛会の後に今年度の集いは終了しました。卒業生からは、今回のグループ討議が今までの中でとても活発にできてよかったと、お褒めの言葉をいただきました。

以下に、当日の近況報告とともに教職課程履修学生にエールを送ってくださった卒業生たちによるメッセージを紹介します。
 

山田 耕治氏(大阪市立鶴見商業高等学校)

30余年、大阪市の高等学校で社会科教員として働いてきました。いま、少子化と財政難で自治体も教員の採用すら手控える昨今ですが、現場に若い力・エネルギーが必要です。教員を目指す若い人々に、現場からの声としてよく厳しい言葉が投げかけられますが、投げかける本人はその厳しい世界でがんばっています。ぜひ教員になりたいと夢の実現に向けてがんばってください。教育は人を作ります。その一端を担う喜びをぜひ感じてください。

 

竹原 正浩氏(豊中市立第八中学校)

定年退職後5年になりますが、今も講師で中学校の社会科を担当しています。 1967年卒業と同時に府下の公立中学校の教諭として採用されました。授業を通して「感動」があるからこの歳になっても教職に打ち込めるのだと日々感じております。感動が情熱になって生徒達の中に入っていけるのでしょう。教材研究は新卒から43年にもなるのに、わかりやすい授業にするため創意工夫にこだわっています。廊下や校庭で生徒達からよく声をかけられます。楽しいです。

教職は大学がどこであろう関係ありません。教職への情熱と日々の努力の継続があるかどうかです。一人でも多くの桃山大出身者が教職についてくれることを願っています。

 

境 千鶴氏(明光義塾)

私は明光義塾という学習塾の、和泉中央教室と和泉観音寺教室で副教室長をしております。私も最初は教員を目指しておりました。しかし、なんといっても学生時代は、自分のやりたいことに没頭してましたので、将来設計は全くしておらず、当然現役では合格できず…卒業後どうしようかと思っていましたら、竹中先生から「学習塾はどうか」と紹介され、イングという学習塾で非常勤講師をしながら採用試験を受けていました。それでもやはり合格できず、「3年続けてダメなら就職しよう」と思っていましたので、イングを退社し、就職しました。

なぜ教員採用試験に合格できなかったか。それは簡単です。「塾のほうが私に合ってるかも」と思ってしまったのです。そもそもなぜ「先生」になりたかったか。それは「英語をわかりやすく教えたかった」からです。英語が得意だった私は、1人でも多くの子どもに英語の楽しさを伝えたかったのです。そう考えると「先生のおかげで英語がわかるようになった」と言われる塾のほうが私に向いているのかもしれません。こう思っているわけで、就職した先の仕事は本当に面白くなかったです。我慢できなくなった私は、「正社員で働ける塾の仕事」を探し、今現在に至ります。

学生時代から教育の現場に関わっておくことは非常に重要だと思います。ボランティアでサポートに入るのもいいでしょう。いろいろな選択肢があると思いますが、その中に「塾」を入れてみてはいかがでしょうか。塾ではいろんな教科を教えることができます。私は教員免許は英語ですが、理科以外の教科を教えています。そうすると、一般教養対策は勝手にできます。教材研究もできます。来たる教育実習に向けて、これから先のことを考えて、学校のものとは違うかもしれませんが、「教授力」をつけておくには、学生の時が一番です。特に明光義塾は個別指導の塾ですが、1:3です。それも、中1・中2・中3と受け持つこともあれば、極端な話、中3・小6・高3といった組み合わせもあります。こうなると、集団で教えるほうがうんと楽に感じます。しかし、「カウンセリングマインド」が必要とされている昨今、「個別にケアーをする力」をつける意味では、とてもいい環境であると言えるでしょう。

もうひとつ、私は自分のスキルアップのために、「教員採用試験対策講座」を受けています。これ、かなりいいです。勉強は自分1人でするにも限界があります。わからない問題があったときに、特に理数系の科目は、教えてもらわないとなかなか理解できません。仕事をしながら受けるのは本当にしんどいですが、毎回楽しみです。ただ、やはり時間を有効に使える学生の間に受けておくほうがいいです。お値段もリーズナブルです。私はこれを受けて、特に理科を強化し、中学校の5教科を制覇するつもりです。これから教員を目指すにあたり、すぐにでも行動を起こすきっかけになれば光栄です。

 

戸江 雅一氏(岸和田市立野村中学校)

69s入学の戸江です。1969年は、東大が入試を実施しなかった年で本学も学生運動が激しかったですが、私はまじめに本学で教職課程、司書課程を履修し資格を得ました。しかし学生時代は甘い考えで教員採用試験に臨んだため現役合格とならず、一年間の中学校社会科の常勤講師を経て正採用となり、何校かの中学校を経て教育委員会の指導主事を経験した後、教頭となり現在岸和田市立野村中学校の校長です。

第2部では司会役をさせていただきました。冒頭、「私は岸和田の公立中学校の校長をしていますが、現在大阪府公立中学校教育研究会の会長もしていますので大阪の教育については何なりとお尋ね下さい」と話し、「積極的に学生さんから質問を頂き、それに教育に携わっている者が応えるという形で第2部をすすめたい」という方針で始めました。参加された学生の全員から質問を頂きました。多い人で3回ほどの質問がありました。

私は司会役で、話をまとめる役となりましたが、学生さんからの質問に具体的に以下のように発言しました。
@ 面接ではどんな勉強をしたらいいのか
「一般的な面接試験のためのテキストや講習会などで訓練すること」
「エントリーシートでしっかり教職志望の動機を書く。そしてその動機に想定される質問を考えておくことが大切で、熱意を感じられる志望動機にする」

A 子どもの学力不振に対してどのように対処しているか
「全国学力学習状況調査結果でも、大阪の学力不振が目立っているが、学校のがんばりだけで解決しない。生活指導を含めた学習意欲を喚起する取り組みも必要だ。」
「学校では、朝の読書活動や放課後の補充学習、指導方法の改善などおこない、家庭学習に保護者の協力も必要」

B 学校で大変なことはどんなことか
「最近は、子どもより保護者対応が大変です。しかしモンスターペアレンツという認識は、保護者とのコミュニケーションを遮断することになるので大阪府教委は使わない」
「イチャモンという無理難題をいう保護者の裏に隠れた思いや願いをくみ取ることが大切。そして子どもを第一番に大切にする視点を持って対応することが大切」
「特に私のように校長の立場は、そのような苦情処理係のような役目をすることになり大変ですが、管理職は対応をぶれないようにすることが大切」
「学校は社会の縮図のようなものですから、解決困難なことも多く、保護者にはお願いし理解と協力を求めるしかできませんが、常に正義を貫こうと努力することが大切」
「しかし、学校によってちがいがあるし、年度によっても生徒の質はかわるので安心してほしい」

C 生徒との距離感をどのようにしたらいいのか
「確かに、あなた方は若いというだけで生徒たちは集まってきますので、教育実習でも教職についても距離感は大事です。若いんだから積極的に子どもと関わりを持ってほしい反面 教育実習などで生徒と馴れ馴れしく話しているすがたをみると教育の場の雰囲気を壊していると心配するときがあります。どの程度の距離感は経験が教えてくれると思いますが、 男性の場合、女子生徒の指導では個室での1対1の指導は避けることが賢明です。」

 

芝山 和麿氏(堺市立平井中学校)

桃大を卒業してすぐに中学校社会科教員として勤めて34年となりました。

ふり返ってみると、教職というのは本当に多忙な仕事だと思います。特に近年は、地域社会、家族社会の崩壊によって、学校現場での仕事が多様になってきました。ただ教えるだけではなく、しつけから始まり、専門外のカウンセラー的なことや、建物、備品の修理まで、本当に何でもやらなければならない状況になっています。この傾向はしばらく続くと思います。これから教職につくことを考えている人はそれを覚悟してほしいと思います。今の教員に必要なのは、順でいうと、体力、気力、知識力です。強い気持ちを持ってチャレンジして下さい。

あと、採用試験ですが、私は在学中のゼミの黒川先生の教えで、問題集3冊を3回勉強するという方法を行いました。結果、中学校社会科教員に現役合格できました。この勉強法でテストの傾向と知識が理解できたと思います。もしよければ試してみて下さい。夢を持って頑張って下さい。

 

小野 博健氏(育英ゼミナール)

教職を目指す後輩の皆さんへ

私は他学で教職に就こうと頑張っている学生に教える機会をいただいていますが、彼らに言うことは、「探求することに貪欲であってほしい」と「先生になれたと言っても、先生という呼称に自惚れないこと」を言っています。教職に就くことが目的ではなく、スタートであることを自覚できたなら判ると思います。私は、20代、30代は何でも吸収の日々でした。本の「乱読」は当然のこと、授業術を磨こうと落語や漫才の中にヒントを求めたり、伝統芸能の中に授業の幅を持たせる題材がないかと探したりしていました。教える側は知識は持っていますが、教養(人間の「幅」)は磨かれていると錯覚しがちです。日々探求は怠ることなかれ、です。

  また、私がこの世界に入ったときに当時の塾の先輩から「20代で生徒を人前でこいつ呼ばわりしたら、40代ではこの世界にはおれない」といわれました。その心は教える側の期待通りにいかない時に生徒のせいにするな、ということです。生徒がわからないのであるならば、わからないことを言った教師の側の発想を代えて何度も何度も生徒にぶつかっていくことが必要です。「何でわかってくれへんのやろ?」は素人以下、「どこがいけなくて、どこを直せばいいのだろう」なのです。先生だから「偉い」のではありません。「先に生きている」から生徒は信頼もし、人生をぶつけてくるのだと思います。「こいつら・・・」とか「うちの生徒はアホで・・・」と若い学校や塾の先生は言っていますが、我々の仕事に生徒に対してそのような思いを持つ資格も権利もないことを自覚すべきです。

  よく生徒目線という言葉を耳にします。「生徒のために」といいつつ自分の考えを押し付けるのと勘違いしている先生のたまごやひよこがおられます。生徒目線とは、これまで述べたように「探求」と「自己研鑽と反省」から生まれる積極性だと思います。生徒にも親にも心からぶつかっていくことです。先生だから、とええ格好はいりません、失敗も積極的ならばどんどんしていくことです。それでも、本当にあなた方が教師として努力しているのなら生徒も父兄も仲間も先輩も地域も応援してくれるはずです。

 

小野 依子氏(大阪産業大学附属高等学校)

教師にとっての正解

今回の集いには貴学の卒業生の主人とともに参加させていただきました。私は「わけのわかる(授業をする)国語の先生になってやる」という高校時代に決心した人生の目標を実現するべく、大学卒業後に塾や学校で教える機会を得ました。生徒にとって一生に一度の大事な授業をより充実したものにできるようにと、毎日生徒と格闘してようやく7年目になりました。他の先生方のように立派なことはまだまだ言えないので、先輩の先生方から教わり、学び、私が心構えとしていることを紹介します。

まず、教師にとって、「先生のおかげで○○できた(入試に合格できた、ということが多いですが)」というのは屈辱だということです。「先生がいたから合格できた」というのは裏返せば、「先生がいなかったら合格できなかった」ということで、それは教育者として生徒を成長させられなかった、人生を生き抜く力をつけられなかったということを意味するものだ。だから、教師にとっての最上の言葉は「僕頑張った・頑張れた、だから合格できた」だということです。これを生徒に言わせるためには、人にものを教えるという単純に考えれば目立つ立場にいる人間が徹底して裏に回らなければならないにもかかわらず、存在感は保ったまま生徒を引っ張ることを求められます。非常に難しいです。しかし、これが本当の「生徒本位」ということではないかと思うのです。

また、教師にとっての正解は「教えた生徒が天国で笑っているのを、同じく天国にいる自分が見ることができた時」だ、ということです。冷静に考えると教師は生徒の人生において一瞬に近いほどの時間しか関わることはできませんが、関わった生徒に人生を踏み誤らせない影響を与えなければいけない、と考えるとどれほど莫大な力をもってしても足りないのではないかと思ってしまいます。教職とは限りのない力、覚悟、情熱が必要で、現状に満足せず常に努力し続けなければならない仕事なのだと、先輩方は私に教えてくださったのではないかと思うのです。

このように考えると、教師は「生徒の笑顔」に直結する「楽しい仕事」では決してありません。私は先輩方から出された謎かけのような課題の答えを、目の前の生徒に向き合うことで見つけようと暗中模索・試行錯誤しつつ、創意工夫を重ねている今が充実していて楽しくて仕方ありません。教職を志している皆さん、一緒に「先生」しましょう。

 

石原 誠氏(イング 古市校)

*教員になりたいのであればいろいろと社会経験は必要*

ただ単に座学での教授法や採用対策だけに追われるだけでは、実際に現場に立たれてからのギャップが大きいと思います。教師という仕事は専門だけができても何の価値もありません。それをいろいろ得られる機会が多いのが学生の内だと思います。

具体的に言えば、販売や軽作業のバイトでもいろいろ学べることは多いと思います。特に社会科の教員を目指される方は話の幅が広がって大変有益だと思います。 特に社会科の方に向けての具体的一例をあげます。私事ですが私は一時期工作機械のメーカーに勤めていたことがあります。その際に、営業をやっていたときは大学の授業で少しかじった程度の小切手や手形などの有価証券を実際に扱う機会がありました。また、生産現場ではコストダウンに関していろいろと学び提案を出し社内の表彰も受けました。それらのことは、今の自分の授業で話す機会があった際に実体験した内容であるだけに大変生徒にも好評であったことはいうまでもありません。

*塾での体験も必ず活きます*
次に、塾での体験例をお話します。 教員対策のマニュアル本などに時々「塾と学校は異質なものなので塾での体験は役に立たない」などと記してある本を見たことがありますが、それは如何なものかと私は思います。

現在の私の職場での様子をお話いたします。

私の職場である(株)イングでは、学習塾部門で大阪府下と奈良・和歌山に約50数校の拠点があります。ご承知の通り塾での一番の商品は「授業」です。その授業の質の向上のために私どもではアルバイト非常勤の方、そしてもちろん社員全員(模擬授業)の研修が行われています。また、模擬授業でなく実際の授業の映像を撮る場合もあります。それを評価していただくことで被研修者はもちろん、研修担当者も自らの授業に役立てるなどの面で日々質の向上を行っています。そういう環境が整っている塾は、少子化の煽りは多少受けても確実に生き残っていると思います。
もしも、関心をお持ちになられた方は、会の終了後にでもお話できたらと思っている次第です。

*最後に*
私は「「いろんなことは体験してみよう」」というテーマでお話しましたが、どうかここにいらっしゃる学生の皆さんがいろんなかたちで「教員」になられることをOBの一人として応援してゆきたいと思います。おそらくこ のことはすべてのOBOGが思っていることです。

本日の私の話が何かの一助になれば幸いです。

 

 

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