〜卒業生教員からのメッセージ

2010年度 「卒業生教育関係者の集い」

11月21日(日)は「第7回 ホームカミングデー」の開催日でしたが、その日の午後2時から4時、T-003教室にて、教職課程委員会主催の2010年度「第11回卒業生教育関係者の集い」が実施されました。この催しは、本学卒業の教育関係者を対象とする同窓会として始められましたものですが、途中から教職課程を履修する在学生も参加するようになり、教職をめぐる卒業生と在学生との交流会へと発展しました。

今年度のホームカミングデーも大学祭の最終日に実施されたため、履修学生の参加が難しくなることが予想されました。教職課程の授業時に案内プリントを配布し、参加・不参加を問う事前アンケートを行ってPRに努めた結果、4名の履修学生の参加を得ました。そして、卒業生とそのご家族17名、教職員6名も合わせて総勢27名で近況報告とともに活発な意見交換を行うことができました。

第1部の「卒業生スピーチ」では、戸江雅一氏(岸和田市立野村中学校校長)、中西 現氏(昇陽高等学校教諭)、赤松和希氏(岸和田市立光陽中学校教諭)から基調報告をいただきました。 引き続き、第2部「卒業生と教職課程履修学生との懇談」では、今年度は履修学生の参加が少なかったため、卒業生とのグループ討議を行うかわりに、参加者同士で近況報告をしていただくことにしました。その後で、事前アンケートから抽出した履修学生たちの質問事項に対して、思い思いのご回答および応援メッセージをいただきました。以下に、その一部をご紹介します。
 

井上 和彦 氏(京都市立下京中学校)

「最大の生徒指導力は教科指導力」

 学級経営、部活指導、委員会指導等さまざまな場面で『生徒指導力』が「教師」には要求されます。個々の場面において「生徒」をしっかりと指導していくのは当然です。又、人間関係の調整力も必要です。その上でしっかりとした『教科指導力』が必要不可欠です。

『生徒指導』というと『補導』と同じように解釈されがちですが『補導』しないでいいように日頃から行うのが『生徒指導』です。又、『生徒指導』とは生徒を教師が『コントロール』するのではなく生徒が『自律』出来る力を培うことです。生徒を『自律』させる為には「教師」が「教師」たる毅然とした姿を生徒に見せることが要求されます。その毅然とした姿を見せる『場』こそが『授業』です。「生徒」が「教師」を「教師」として本来認識するのはやはりこの『授業』以外にないのです。「教師」が「生徒」といくら仲良くなっても「友達」になってはしまっては失格です。本当の「生徒」に「生徒」対する優しさは『教科指導力』をベースにし真剣に接する事だと思います。「最大の生徒指導力は教科指導力」です。

 

小野 博健 氏(エール教育学院、大学講師)

先生になるために「やんちゃ」であれ…。

私は塾では研修と教務部門を担当し、他学で教職課程や採用試験対策の講座を担当しています。私が若い先生を目指す若者を見て日々願うのは、もっと「やんちゃであれ!!」です。もっと積極的に学ぶことに貪欲であるべきです。読書でも映画でもテレビでもなんでもかんでも吸収して「物知りな挑戦者」になってほしいのです。大学の講義や採用試験の勉強だけでは、人間性を磨くのには役立ちません。それは誰でもやっていることであって、そこからどれだけ「知ってみよう!やってみよう!」を当然と思えるか、なのではないでしょうか。

とは言っても、実際に教える側に立つと理想より現実が重くのしかかってきます。ですが、理想を持って日々挑戦することが大切です。教員で最も恥ずべきは、「為さざるにしかず、試さざるにしかず」です。とにかくなんでもやってみる、試してみること、そのためには何にでも好奇心を持つこと、少々無理かなぁと思ってもやってみることです。大人しけりゃいいってものではありません、「やんちゃ」であってこそ教員だと思います。やる前にあれこれ考えるのではなく、子どものためならやってみることです。あかんかったら改善すればいいし、ボツになっても何か活かせることはあるはず。考えてもやらなければ、考えていないのと同じです。

難しいことを言いましたが、周りの心ある先生、子どもたち、保護者や地域には「師匠」も「応援団」もたくさん待っています。初心を忘れなければ、きっと報われる、いや花が咲くと思います。楽しみに一生懸命頑張ってください、いつか熱い教育談義が出来ることを期待しています。

 

境 潤一 氏(クラーク祈念国際高等学校)

現在の社会状況は非常に厳しいものがありますが、「教育」というものは社会生活において必要なものであり質の向上が求められています。ネット社会が進み現在の教育現場は昔と違い情報があふれており、生徒・保護者が何を吸収していいのか混乱しているのが実情です。教員がその正しい情報をわかりやすく伝えるには、教員自身が誰よりも多くの情報をスピーディーに吸収してかみくだいて伝達するコミュニケーション能力を身につけなければなりません。

大学での勉強と同時に何事にも興味をしめして、チャレンジする能力を身につけることで人間力が養われますので、「この一瞬・この出会い」を大事に勉学等に励んでください。

 

小野 依子 氏(大阪府交野市立第四中学校)

私は塾や学校で教えて今年で8年目です。今年度は「褒める」ことを意識することが多い年でした。

生徒との信頼関係を築く上で「褒める」ことは重要です。長々と説教をするよりも些細なことを褒めたほうが、生徒から早く「信頼」されます。だから、とにかく褒めるといい、と言われます。例えば、掃除をさぼっている生徒がいたら、「掃除をしている生徒を褒めたら掃除をしてくれる生徒が増えるよ」と、先輩から助言いただいたことがありました。

一方、「褒める」ことはそこが合格点だと生徒に錯覚させ満足させることとも言えるので、「めったに褒めないほうが生徒はがんばる」と、教えてくださる先生もいらっしゃいます。私自身を振り返ってみると、「するのが当たり前」の掃除などをしているからといって褒められた記憶はなく、逆にそんなことを褒められたら、「している人は褒められるくらい立派な人ということだから、していなくても普通ということ。そしたら、掃除はしなくもいいんだ」という考えに至ったかもしれません。

どのような内容を、どのような状況で、どの程度褒めるのか、その見極めは本当に難しいです。でも、それが、正解がない教育の醍醐味なのでしょう。「100点で説教が必要な子もいれば、0点で褒めたい子もいる」から、子どもとしっかり向き合っていれば取った行動が正解なんだと信じようと思っています。

学生の皆さんには、生徒に近い立場で先生方から叱られたり、褒められたりできるチャンスがまだあります。心に残る叱られかた、うっとうしい褒められかた、少しでも多く経験して心に刻んでください。

 

竹原 正浩 氏(豊中市立第八中学校)

定年退職をしてから6年連続で非常勤講師をしています(教師生活44年目)。今でも中学校3年生を相手に授業できるのは、私の社会科の授業に反応してくれる生徒が多いからです。年齢差が大きいために生徒指導面で悩むこともありますが、授業での感動が生徒たちと分かち合えるから、やる気がでるのでしょうね。卒業生スピーチで最初に若い二人の先生が述べておられたように、生徒はかまって欲しい。行事を通して感動を分かち合うなど、私が担任をしていた頃と重なって、日々の教育活動の中には授業以外にいろいろとやってきたことも、今と繋がっているのだと直感しました。

教師は、まず授業を通して信頼を得る。そのためには、日々、創意工夫と生徒指導を含めた教材作りが必要です。映像の必要性から1985年から授業はすべて視聴覚室で取組んできました。私も、担任をしていた頃は教材研究の大半は学校では出来ませんでした。それだけ、学級経営や行事、個別指導、部活などに追われていたからです。

学校教育でもう一つ大事なことは、生徒と教師が友だち関係のままでは教育はできません。行事やクラスの取り組みなどでそうしなければならないことも多々あると思いますが、最終的には教師と生徒であることが本当の信頼です。親子関係が友だち関係になってしまい正面きって親として子どもに向き合わない親も多くなりました。このことが学校現場の今の教育に大きく影響しています。

以上ですが、何らかのお役に立てばありがたいです。

 

 

 

 

 

 

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