2001年前期 科学と技術III(害虫とたたかう)
期末試験 問題と解答


【問題】

以下の問題群から5つを選んで下の欄の枠内に解答せよ。[1問20点]

  1. 自然界では目立たない昆虫が、田畑で害虫として繁栄する理由を3つ述べよ。
  2. BTトウモロコシと除草剤耐性ダイズは遺伝子組換えでどんな性質を付与されたのか、それは通常の品種改良でも可能なものか、説明せよ。
  3. 日本は単位面積あたりの農薬使用量が欧米よりはるかに多い。日本のどのような状況がこのような事態を招いているのか説明せよ。
  4. 新しい殺虫剤が市場に出されようとしているとき、予防原則にもとづけばどのように対応すべきか、また予測原則の場合はどうか、説明せよ。
  5. 最初に広く使われた有機合成農薬の通称名、その農薬が自然界にもたらした事態を記した本のタイトル、そして多くの国で使用禁止になりながらその農薬が一部の国でまだ使われている理由を述べよ
  6. 化学肥料のみを連用していると畑の土壌はどのような状態になるか説明せよ
  7. コナガは(オスメスこみで)1個体あたり200個産卵すると仮定すると、成長途中の死亡が全くなければ3世代で何倍に増えることになるか。また、このコナガが増えも減りもしないとすれば、毎世代の死亡率は何パーセントか。
  8. 侵入生物が侵入地で猛威をふるうことが多いのはなぜか説明せよ。また侵入生物の害を抑えるためによくとられた方策はなにか。
  9. イネの害虫トビイロウンカの防除に関して、通常の害虫の防除と勝手が異なるのはどのような点か説明せよ。
  10. 害虫防除史の金字塔ウリミバエの根絶を可能にした技術を説明せよ。
  11. 緑の革命で作り出された高収量品種が実力を発揮するにはどのような栽培環境が必要か説明せよ。

【解答】

1. 自然環境で目立たない虫が、田畑で害虫として繁栄する理由を3つ述べよ。

 田畑では、その作物を餌とする昆虫にとって大量の食物が定期的に供給されるため餌不足の心配がない。また農薬が使用されると、その昆虫の天敵となるような他の生物が少なくなっているので生存率が飛躍的に高くなる。さらに、作物として品種改良された植物は本来持っている昆虫への抵抗力を失っている場合が多いので、これを食べる昆虫の生存率や成長速度が高くなる。これらのことが合わさって、自然環境よりはるかに急速に昆虫が増殖するため害虫化するのである。

【コメント】エサ、天敵、作物の抵抗性の3点がそろって満点。なぜ天敵が少ないかがなければ3点減点。

2. BTトウモロコシと除草剤耐性ダイズは遺伝子組換えでどんな性質を付与されたのか、それは通常の品種改良でも可能なものか、説明せよ。

 BTトウモロコシは、昆虫の病原性細菌バチルス・チューリンギエンシス(BT)が持つ殺虫性タンパクの遺伝子をトウモロコシに組み込んだもの。全く異なる分類群(植物と細菌)に属する2種間での遺伝子の移動であり、通常の品種改良ではぜったいに起こり得ないものである。一方、除草剤耐性ダイズは、特定の除草剤をかけても枯れないような遺伝子をダイズに組み込んだもの。除草剤耐性は雑草などに繰り返し除草剤をかけていると発達するものなので、通常の品種改良技術でも時間をかければできたかもしれないが、きわめて長い時間と手間がかかっただろう。

【コメント】通常の品種改良で可能かどうかの判断はちょっと難しかったようなので、ある程度ちゃんとしたことを書いてあれば結論が「できる」でも「できない」でもマルとした。

3. 日本は単位面積あたりの農薬使用量が欧米よりはるかに多い。日本のどのような状況がこのような事態を招いているのか説明せよ。

国土が狭くしかも山がちな日本では、農業に利用できる土地が限られており小規模で集約的な農業にならざるを得ない。小規模なため目が行き届きやすく消毒指向に走りやすいし、不要にまきすぎても損失が小さい。また消費者が虫食いを許容しないため完璧な商品が求められる。

【コメント】上記のうち3点が書かれていれば満点とする。

4. 新しい殺虫剤が市場に出されようとしているとき、予防原則にもとづけばどのように対応すべきか、また予測原則の場合はどうか、説明せよ。

予防原則にもとづけば、考え得るありとあらゆる安全性試験を行いすべてに合格して安全であることが100%保証されるまで市場に出してはいけない(100%安全を保証することは現実的には不可能であるから、厳密にいえば出荷はできない)。予測原則では、その製品がもたらすメリットとリスクをはかりにかけ、世の中へのメリットが大きければある程度のリスクは許容する。

【コメント】わかってる人はわかる、わからない人はまるっきりでたらめなことを書く。0点か20点に分かれた問題。

5. 最初に広く使われた有機合成農薬の通称名、その農薬が自然界にもたらした事態を記した本のタイトル、そして多くの国で使用禁止になりながらその農薬が一部の国でまだ使われている理由を述べよ

最初の有機合成農薬:DDT(5点)
本のタイトル:「沈黙の春」(5点)
使われている理由:野生生物への影響や残留性など問題はあるが、熱帯地方を中心にまだ世界中に流行しているマラリアの防除に有効なため使われている。マラリアの流行を抑えるには、媒介者である蚊の駆除が必須である。マラリア流行地帯の多くは貧しい発展途上国であり、安価に製造できるDDTにかわる殺虫剤がないため、この農薬に依存せざるを得ない。

【コメント】「DDTはマラリアの治療に有効」などの記述が多かった。クスリじゃないっての。「マラリアの防除に使われている」とだけ書いて「媒介するカの駆除」がなければ5点減点。

6. 化学肥料のみを連用していると畑の土壌はどのような状態になるか説明せよ

新たな有機物の供給がないため、土壌中にすでに存在していた有機物が微生物によってすべて分解されると有機物が無くなり、それを食べる土壌生物もいない状態になる。有機物が作り出していた土の団粒構造が無くなると土はさらさらになり、保水力や保肥力が低下する。土壌流失も起こりやすくなる。

【コメント】「化学肥料は毒」で「ミミズを殺す」「土中に蓄積して作物を汚染する」「死の土地になる」「作物は全く育たなくなる」などの記述の多いこと。「化学肥料は土を殺す」というようなキャッチフレーズだけ覚えていて、理屈を全然わかってない。そんなに強力な毒だったら、毎日食べてる野菜や米で今頃みんな死んでますって。化学肥料は植物たちの栄養ですよ。

7. コナガは(オスメスこみで)1個体あたり200個産卵すると仮定すると、成長途中の死亡が全くなければ3世代で何倍に増えることになるか。また、このコナガが増えも減りもしないとすれば、毎世代の死亡率は何パーセントか。

1世代で200倍だから、3世代で200×200×200=8000000(800万)倍

1世代で200倍になるはずが増えも減りもしないということは、200匹産まれた子供のうち199匹が死亡するということ。つまり、死亡率は199/200=99.5%

【コメント】上のような答えを予定していたのだけど、「1世代目から2世代目で200倍、2世代目から3世代目で200倍だから、結果40000倍」という答えが多かった。そういう解釈もできるので、4万倍でも正解にしました。死亡率の計算ができない人の多いこと。

8. 侵入生物が侵入地で猛威をふるうことが多いのはなぜか説明せよ。また侵入生物の害を抑えるためによくとられた方策はなにか。

生物は通常多くの天敵(捕食者、寄生者、病気など)によってその増殖を抑えられているが、生息地から遠く離れた土地に単独で侵入した場合、その土地にその侵入生物の増殖を抑えるべき天敵が存在しないと爆発的に増殖して猛威をふるうことがある。このような侵入生物に対し、その生物の原産地から天敵となる生物を探し出して侵入地に導入することで制御しようとすることが多かった。(導入によって新たに生態系を撹乱するおそれがあるので最近は簡単には実行できない。)

【コメント】単に「天敵を導入する」として、「どこから」が書いてない場合は5点減点。

9. イネの害虫トビイロウンカの防除に関して、通常の害虫の防除と勝手が異なるのはどのような点か説明せよ。

トビイロウンカは、毎年梅雨前線にのって中国大陸から海を越えて日本に飛来し、日本で2〜3世代増殖した後、冬の寒さで死滅する。翌年発生するトビイロウンカは前年の虫の子孫ではなく、新たな集団が毎年大陸から供給される。したがって、今年徹底的に防除して全滅させたとしても、翌年の発生にはなんの影響も及ぼさない。

【コメント】トビイロウンカには短翅型と長翅型があって環境によって型を変える、というのはたしかにトビイロウンカの特徴ではあるけれど、防除には関係ないので不正解です。

10. 害虫防除史の金字塔ウリミバエの根絶を可能にした技術を説明せよ。

不妊化虫放飼法:大量増殖施設で飼育したウリミバエのオスに放射線をあてて精子が作れない身体−不妊化−にして、これを野外に放す方法。この不妊オスと交尾した野生のメスは無精卵を生むため子孫が残らない。野生オスを上回る膨大な数の不妊オスを放し続けることで、琉球列島からウリミバエを根絶した。

【コメント】「金字塔ウリミバエ」という名前の害虫だと思っている人が数人いて爆笑した。「金字塔」という言葉の意味、わかりませんか?読点が必要だった?
 どうやって不妊化したかという点が書かれていなければ5点減点。

11. 緑の革命で作り出された高収量品種が実力を発揮するにはどのような栽培環境が必要か説明せよ。

これらの高収量品種は十分な水と肥料を前提とする。そのため、近代的な潅漑設備と化学肥料が不可欠で、また害虫に弱い傾向があるため農薬を必要とする。

【コメント】「改良品種と潅漑設備と化学肥料の3点セット」という表現がプリントにあったようで、これを書いた人が多かった。なので、農薬はなくてもOKとしました。

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2001. 9. 21.