2008年秋期 自然科学(生物学1)
期末試験 問題と解答


I. 次の変化のうち、明らかに進化でないものに丸をつけよ。(5点)
a. 病気に抗生物質が効かなくなってきた
b. 毎日上っている階段が苦痛でなくなってきた
c. ゴムの木の幹に定期的に傷をつけていたら樹皮が厚くなってきた
d. まめに芝生を刈っていたら生えるタンポポの丈が小さくなってきた

  => b と c

【解説】aは病気の原因となっている細菌が抗生物質による淘汰を受けて耐性を進化させてきたことをうかがわせる。dでは背の高い個体が選択的に刈られるという淘汰で進化した可能性がある。bは同一人物の繰り返し負荷による筋力アップ、cは同じ木の樹皮の変化。生物個体の世代内の変化は明らかに進化ではない。bは多くの人が丸をつけていたが、cにつけた者は少なかった。bにだけ丸をしていれば3点。2つ丸をして片方が不正解なら2点。3つつけた場合bcを含んでいれば3点、ひとつはずしていたら0点。

II. 次の文章の[ ]に入る言葉や数字を右の回答欄に記入せよ。(各5点, 合計35点)

 DNA分子は、糖とリン酸と[  ]種類の[ 塩基 ]で構成されている。このDNAに書かれている遺伝暗号は、[  ]つの塩基がセットとして翻訳されて、それがひとつの[ アミノ酸 ]に対応している。可能な暗号は全部で[ 64 ]種類あるのに、アミノ酸は[ 20 ]種類しかないので、同じアミノ酸に対応する暗号が複数ある。これを[ 同義コドン ]という。

【コメント】毎回のように出しているつもりなのだけど、意外と正解率が低い。今度は出ないとふんだか、問い方を変えたらわからないのか。

III. 生物の進化は主にふたつのメカニズムによって起きる。偶然の力に依存するメカニズムを[A]、環境に対する必然的な適応として生じるメカニズムを[B]という。

(1) 上の文章中の[A]と[B]に入る言葉をそれぞれ記せ。(各5点, 合計10点)
A:  遺伝的浮動  B: 自然選択 

(2) ある生物集団でAのメカニズムが強く働くためには、どのような条件が必要だろうか。(5点)

[回答例]集団のサイズが小さいこと

(3) ある生物集団でBのメカニズムが働くためには、どのような条件が満たされなければならないだろうか。(10点)

[回答例]ある形質にばらつきがあり、その形質は遺伝し、その形質と適応度の間に相関があること

IV. 人は脳をよく活用するようになったから脳が巨大化した、というようなことがよく言われる。これは進化のメカニズムから考えて妥当な言い方だろうか。解説せよ。(10点)

[回答例]脳をよく活用すれば大きくなる、ということ自体事実とは考えにくいが、たとえそうであったとしてもそれは個体の一生の間に起こる形質の変化であり、次世代に遺伝することはない。したがって、よく活用したということが理由で大きくなるよう進化するとは考えられない。

【コメント】脳が巨大化した原因をいろいろ書いてくれた人が多かったが、そんなことは授業で扱わなかったはず。問題の意図はそこにはない。

V. 有性生殖の効果として、多様な子孫を残せるという説明がある。しかし子孫が単に多様であるということは、必ずしも無性生殖より有利とは言えない。(各10点, 合計20点)

(1) そのわけを説明せよ。

[回答例]親がすでにその環境に最適な状態であるとすれば、子孫も親と同じである方がその環境では有利なはず。多様な子孫を生めば、むしろその環境に適さない子孫を作ってしまうかもしれないから。

(2) ではどのような場合に多様な子孫を残すことが有利になるのか説明せよ。

[回答例]毎世代のように予測不能な形で環境が変化すれば、多様な子孫の中から生き残りがでるだろう。寄生性生物は進化が早く、親世代の多数派に適応してくるので、親とは異なる形質を持った子孫を残すことが、寄生性生物から逃れる上で有利になる。

【コメント】(1)については、無性生殖が有性より2倍有利という点の説明でもよしとした。(2)は単に環境の変化だけでは5点。

VI. 以下の問いに答えよ。

(1) 生物の真社会性とはどういう意味か。(5点)

=> 不妊のワーカーが存在する、個体によって分業のある生物社会

(2) 他の分類群ではまれな真社会性が、ハチやアリで進化しやすかった最大の理由はなんであると考えられているか。その主な要因を簡単に説明せよ。(10点)

[回答例]オスとメスの決まり方が半倍数性のため、姉妹間の血縁度が3/4となり、親子より姉妹の血縁度の方が高いという現象が起きる。そのため、子のために奉仕するより新女王となる妹のために奉仕する方が、より自分の遺伝子を残せることになるため。

【コメント】(1)は「不妊」がなければ2点。(2)は半倍数性が説明されていれば5点。



おまけ:珍答・怪答 傑作選

  • 遺伝的浮遊、浮動的遺伝、浮動的進化 (←正しくは「遺伝的浮動」)
  • 自然汰、自選淘汰 (←自然淘汰)
  • 然変必然変異 (←突然変異)
  • 義コドン、同義デボン、同義コロン (←同義コドン)
  • 確得形質(←獲得形質)大化(←巨大化)、奇生(←寄生)、世和(←世話)受撲(←授業!)

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    2008. 2. 27.