The world is wonderful! 海外 国際体験レポート

留学国:
インドインド
派遣先:
ジャダヴプール大学
制 度:
インド異文化・ボランティア体験セミナー

生と死の境界

国際教養学部 英語・国際文化学科 1年 鎌田 航平

 「インドには墓がない。」引率の先生が僕に言いました。国民の約8割がヒンドゥー教徒のこの国では亡くなると火葬され遺灰はガンジス川に流されます。ヒンドゥー教の聖地バラナシで僕たちは小舟に乗り、まんまるで美しい朝日を見ました。たくさんの死者の魂が流れるガンジス川の上は、太陽の照明が輝く舞台で鳥が羽ばたきイルカが跳ね踊っていました。あの時、僕たちは間違いなく生と死の境界にいました。

 たくさんの人で覆われた街を歩くと、生きているのか死んでいるのかもわからない野良犬が横たわり、牛が道を塞ぎ、震える物乞いの手が目の前に伸びてきます。鳴り止まないクラクションの下の無数のゴミで子供たちが遊んでいます。道の脇では肉がさばかれ、生きた鶏が自転車にくくりつけられています。ボランティアでは顔も名前も知らぬ遺体を火葬場まで運んだ仲間がいます。あの三週間、僕たちは間違いなく生と死の境界にいました。

 日本で魚を食べ、肉を焼き、卵を割る僕たちはいつでもその境界にいることを、インドに気づかされました。

ガンジス川の朝日
ガンジス川の朝日
川面で羽ばたく鳥
川面で羽ばたく鳥
道をふさぐ牛
道をふさぐ牛