甲子園での思いを胸に、
大学で野球に燃える。

 2014年8月。全国高校野球選手権大会の熱戦が繰り広げられる甲子園球場。試合は1-1のまま延長12回裏を迎え、1アウト一、三塁。その時二人はグラウンドに立っていた。ピッチャー赤尾の投球に対し、相手のセカンドゴロを山根がキャッチして一塁へ送球。2アウトとなったが、その間に三塁ランナーがホームへ帰り、試合は終わった。「宿舎に戻っても食べ物が喉を通らないほど落ち込んだ」(山根)、「和歌山県大会で山根は38の打球をアウトにし、エラーは一度もなかった。山根の守備があったから甲子園へ来られた」(赤尾)。二人の高校野球はこうして幕を閉じた。
 卒業後の二人は偶然同じ桃山学院大学へ入学したが、それぞれ別々の「野球の道」を歩もうとしていた。エースだった赤尾は肩・肘に不安を抱え、桃大では硬式野球部に入らなかった。しかし時が経つにつれ、物足りなさを感じる。「勉強だけではなく、大学生活の中で何かを残したい」。彼は準硬式野球部へ入部したが、高いレベルで野球をしてきた自身から見て、そのレベルには満足できなかった。「自分は適当にやるのは嫌だったので、このチームを変えてやろうと思った」。生意気だと知りながらも先輩に提案し、同級生や後輩の意識を高めるよう自らが手本と
なった。言いたいことを言い合う中で信頼が生まれ、主将・赤尾のもとチームは一丸となり、2016年の西都六大学秋季リーグで優勝を果たした。
 一方、甲子園での悔しさを胸に硬式野球部へ入った山根。堅守を武器に大学でもセカンドでレギュラーを勝ち取り、1部昇格をめざして日々戦っている。2017年の阪神大学野球連盟2部東リーグを春・秋で連覇し、当リーグのベストナイン(二塁手)を連続受賞。春季は西リーグ優勝チームとの入替戦出場決定戦で敗れ昇格にはならなかったが、現在は秋季リーグでの昇格へ向けて、ふたたび挑戦を続けている。「自分がいる間に昇格を実現するには、秋季リーグがラストチャンス。全試合、全力で」。

社会へ出ても
新たな野球のストーリーを。

 硬式と準硬式。それぞれの大学野球で戦っている二人は、卒業後も野球と関わっていきたいという。赤尾は、軟式野球部があり、大会などへ出場できる企業への就職も選択肢のひとつである。「野球をやってきたから人として成長できたし、野球があったからこそ、今の自分があると思う。これからも野球と関わりたい」。
 山根は大学で教職課程を取り、教員の道へ。その理由には、彼の甲子園に対する熱い思いが込められている。「母校の教員になり、野球部の監督になって選手を率い、もう一度甲子園に出場する。その時は必ず勝つ」。
 新たなストーリーがどんな展開になろうとも、二人の野球愛は変わらないだろう。

 

(※この内容(学年表記含む)は2017年10月取材時のものです。)