仕事をする上でも、起業するときでも、簿記はビジネスの基本として学んでおくべき。

私の大学時代のスタートは寮生活でした。その寮で出会った友人が商業高校出身で「寮で無為に過ごすなら、簿記を学んでみないか」と、高校の簿記の教科書をくれました。それから独学で簿記を学んで3級を取得し、これが後の会社経営の礎になりました。経営者はもちろん、仕事をする上でも、まず経営成績と財政状態が分かる簿記が理解できると、ビジネス上の大きな強みになります。本日、私の話を聞いてくれる皆さんの中にも、将来は起業したいと思う人がいるでしょう。その夢の実現のためにも簿記を、学生のうちにぜひ学んでおいてください。

大学を卒業して就職しましたが、いずれ起業しようと貯金して4年後に寿司屋を開業、最初はなかなか売れなくて苦労しました。このときの月の売上げは54万円。このゴーヨンという数字は、年商1千億円を超えた今でもずっと心にあります。吉川英治の『徳川家康』に、三方ヶ原の戦で敗れた家康が、命からがら城に戻ったときの落ちぶれた姿を絵師に描かせて、戒めとしてずっと傍らに置いたというエピソードと同じような気持ちです。この本は経営者のバイブルと言われますので、長編ですが興味のある人は読んでみてください。

今回のテーマは「人間の幸福」ですが、受験勉強の話にも少し触れます。桃山学院大学の学生は過酷な受験競争にさらされて来なかったぶん幸せだと言えます。勉強するなとは言いません、人は一生かけて勉強しなければならない、でも詰め込み教育や暗記教育が人生を豊かに、幸せにすることはできないのではないかと、私は体験から感じています。

こうして67歳まで生きてきて、人間の幸福に不可欠なことは「愛情」ではないかと思います。男女間の愛情という意味では、私は50年以上連れ添った妻のお蔭で幸福になれたと心から信じています。だから君たちには、良い恋愛をしなさいと伝えたいです。他者を愛すること、愛されることが、人間が幸福に生きていくためには欠かせないことと心に留めておいてください。
最後に皆さんには、輝く一生を送って欲しい!これからの人生、疲れることもあると思いますが、そういうときは基本に立ち返り、前を向いて、まっすぐ未来に歩んでください。

「キャリア教育科目-卒業生経営者から学ぶ社会人に必要な力」より