将来に不安を抱くより、目の前のことに集中しよう。
自分を信じて10年やり抜けば、新しい景色が見えてくる。

私はナレーターとして活動しながら、声優プロダクションの代表取締役社長を務めています。テレビやラジオ番組のナレーション、CMのナレーション、イベントのMC、洋画の吹き替えなど、声にまつわる幅広い仕事を受けています。 人前に出る仕事に就きたくて、大学3年生のときに友人の誘いでタレント養成所に通ううちにタレント業界に憧れを持つようになりました。しかし4年生になり、このままタレントになるか、まわりと同じように就職するかで悩んでいました。そんなとき、大学祭であるジャーナリストの方の講演を聞く機会があり、あまりに感動したので、講演後に思いきって悩みを相談してみました。するとその方は「やればいい。10年やってだめなら20年、20年やってだめなら30年やればいいんだよ」とおっしゃいました。この言葉で腹が決まり、卒業後、22歳でタレント業界に入りました。

タレント活動を始めるとすぐラジオ番組のレギュラーが決まり、順調に活動していたのですが、ある仕事で大失敗をして、番組を降板。さらにほかの番組も終了し、3年目にはレギュラーがゼロに。すっかり自信を喪失し、「もうやめようか」と悶々とした日々を送っていました。そんな頃、あるイベントの仕事で「悩みは大きければ大きいほど、開けるときはパッと開ける」という言葉を聞き、涙がとまらなくなりました。心の闇がサーッと晴れ、「もう一度やってみよう!」と発奮。すると少しずつ仕事も増え、33歳のときには年収が急増。42歳で独立し、キャラを立ち上げました。

売上は順調に伸びていきましたが、ある日、大勢の所属タレントと信頼していたスタッフが辞めるという事態が起こります。売上が一気に落ち、そのときはもうダメかと思いました。そんなときに大学時代の友人が「何をメソメソしてる。彼らが『キャラを辞めて失敗した』と思ったら勝ちや」と励ましてくれ、そこから本気の戦いが始まりました。「残ってくれたメンバーに何ができるだろう」と、若いメンバーをしっかり育てていくことを決意し、再出発。そうすると売上も徐々に回復していき、現在では所属するタレント・ナレーターの数は130人になりました。

20代の頃は将来に不安を抱き、今のような人生になるなんて想像もできませんでした。だから若い人達には、「将来のことなんて楽観主義でいい」と伝えたいです。今、目の前にあることにしっかりと取り組めば、今がどんなに辛くても、人生はなんとかなります。そして、やりたい仕事があるのなら、まずは10年続けてみましょう。そうすると新しい景色が見えてきます。人生は一度きりで、それをどう使うかは自分自身で決められます。私が常に意識しているのは、「自分が楽しいと思えること」、「人が喜んでくれること」、「社会の役に立てること」です。楽しくて生きがいのある人生を送るために、自分の軸となる人生観を若いうちにしっかりと身につけていってください。

「キャリア教育科目-卒業生経営者から学ぶ社会人に必要な力」より
(※この内容は2018年11月取材時のものです。)