失敗を糧にしてこそ、新たなチャレンジにつながる。
うどんを通して、地元・大阪を活性化するのが我々の目標。

私は恩地食品の3代目ですが、大学卒業後はタカキベーカリーに就職し、3年間営業職を経験しました。同じ小麦粉を扱う業界であるとはいえ、うどんはどちらかというと家内工業。戦後発展したパン業界からは、経営戦略やマーケティングに関して大きな刺激を受けました。

当社に戻ったのち、常務時代は営業、総務、商品開発に携わっていましたが、前職で培った提案力を活かし、営業・開発・研究室・製造など各部署の情報を横断的に共有する仕組みである商品開発プロジェクトを発足。さらに、より消費者に近い視点を取り入れるために女性を中心とした商品開発チームをつくり、「冷製とまドレめん」や「幅広めんのひろこさん」など、女性の感性を活かした商品づくりにも取り組みました。

うどんといえば讃岐が有名ですが、大阪にもだしを基本としたうどん文化があります。当社はそんな大阪の食文化の発信者になりたいと、大阪府立大学との産学協同で約400年前の大坂城築城までさかのぼり、昔ながらの角のない「大坂のおうどん」を開発。また、「うどん姫」というアニメキャラクターをつくって世界にうどん文化を発信したり、本社のある枚方市を全国にアピールするために、市と連携して七夕発祥の地にちなんだ「天の川紅白そうめん」を開発したりと、地元の活性化にも力を入れています。

さらに、「手打ちを超えためんづくり」・「愛情(こころ)で育てた大阪の味」も当社がめざすものづくりの合言葉。100%機械でつくれなくもないですが、そうするとうどんが工業製品になってしまいます。私たちが大切にしているのは、職人の技術や勘であり、愛情をこめた製品づくりです。

また、私があわせて心がけているのは、社員が楽しくいきいきと仕事ができて、「恩地食品に勤めてよかった」と思ってもらえるような企業づくりです。たとえば社員の失敗を許容できない企業だと、チャレンジする意欲が奪われ、その企業は衰退していくでしょう。遠回りのように思えても、失敗から学ぶ姿勢を持ち続けていれば必ず成功に近づいていきます。私は挑戦者であると同時に社員のセーフティーネットとして、失敗をおそれずチャレンジし続けられる企業風土の醸成をめざしています。

大阪は2025年に万博をひかえ、今後、世界の関心が大阪に集まってくることでしょう。我々はそんな大阪の食文化を担っているという誇りを持ちながら、海外に向けた新たな食提案にも挑戦し、うどんを通して大阪を活性化する一翼を担っていきたいと考えています。

「キャリア教育科目-卒業生経営者から学ぶ社会人に必要な力」より
(※この内容は2019年1月取材時のものです。)