ロンドンで見つけた一足の革靴から。

「靴磨きは家事の分類だと思う。今はやる人とやらない人がいるけれど、家事みたいにあたり前になってほしい」。靴磨き・革靴のお手入れ用品を取り扱うブランドに内定が決まった新庄が考えていることだ。
彼はファッションにこだわる父親の影響で、無類の服好きだった。大学2年次に、趣味が合う仲間と紳士服の本場であるイギリスへ語学留学。平日は朝から夜まで英語を学び、週末はロンドンで服を探す日々。革靴への憧れはあったが、何としても手に入れたいという気持ちではなかったという。新庄の気持ちが高ぶった一足は、たまたま訪れた靴屋にあった。「ぱっと見て、自分が好きなシルエットだった」。当時を思い出しながら、彼はいう。

1日でも長く、そして格好良く履きたい。帰国後、通いなれた服屋で靴の手入れについて相談し、アドバイスを受けた。いつのまにか革靴はもちろん靴磨きに魅了された新庄は、さらに専門的な技術・知識を身につけるために梅田にあるR&Dという店に通った。ここは、のちに新庄が内定を得るブランドが運営している店だった。

いつかイギリスで靴磨きを。

スタッフにも顔が知られるようになった新庄だが、R&Dの入社試験では特別扱いされることなく、書類選考や筆記試験、面接等、他の学生と同様に選考に臨んだ。不安もあったが、内定通知を受け取った。入社後、まずは商品の管理や開発を担当するという。「一日でも早く、靴磨きの担当になりたい」と夢はふくらむ。

彼には叶えたい夢があるという。それは、靴磨きの世界大会でチャンピオンになることだ。その理由をこう語る。「世界の頂点に立って、影響力を持つ人になりたい。そして靴のメンテナンスを普及させたい」。いい靴だから長く履ける訳ではない。しっかりと手入れをしているからきれいに長く履けるのだ。新庄は、同じ靴を10年以上履いている人に出会ってから気付いたという。
さらにこうも語る。「いつか、はじめて革靴を買ったイギリスで靴磨きをしたい」。桃大のゼミで経験した人前での発表が、靴磨きの魅力や大切さを伝えるときに役に立つことだろう。どこかに属することなく、街行く人と会話を楽しみながら、靴を磨く。彼が想像する、最高の職業だ。
新しい道を力強く歩みだした新庄から、目が離せない。

(※この内容は2017年12月取材時のものです。)