多様な働き方を選べるようになると、離職率が28%から4%へ。
働く人の幸福度を高めることで、理想のカイシャの姿が見えてきた。

私は卒業後、証券会社に入社しましたが、1年4ヶ月で今の会社に転職しました。当時は上司から「3年も我慢できないやつは、どこへ行っても成功できないぞ」といわれましたが、この3年という数字、実際には根拠はありません。みなさんも就職して「この業界は違うな」と思ったら、さっさと見限って転職するのをおすすめします。証券会社でよかったのは、毎日株価を見ていたこと。大企業の株価は安定して動かないのに、この頃に上場してきたサイバーエージェントや楽天などの株価は乱高下が激しく、IT業界が盛り上がっているのを知ったことが、この業界へ転職したきっかけとなりました。

当社はグループウェアのソフトを作る会社として日本一のシェアを有しており、ユニークな人事制度でも知られています。なぜ当社がさまざまな働き方改革に取り組んできたのか?それは、2005年に28%だった離職率を何とかしたいということが理由でした。社員がどうしたらもっと働きやすくなるのか、一人ひとりに聞き取り調査を行い、働く人の幸福度をあげる組織づくりや人事制度を10年に渡って改革してきました。そうしてたどり着いた結論が、「100人いれば、100通りの人事制度があってよい」という考え方です

ダイバーシティという言葉は人種や性別の多様性といった意味で使われますが、当社では会社の中の多様性に着目しています。そうして生まれた人事制度の一例が「副業OK!」、「働く曜日や時間は自分で決める」、「育自分休暇」、「育児休暇6年」など、すべて社員の声から制度化されたものです。企業の生産性はもちろん大切ですが、そこで働く人の幸福度をあげることを追求すると、2013年には離職率を4%にまで減らすことができました。ブラック企業当時の売上げは40~50億円でしたが、人事制度を変えることで人が長く勤めるようになり、毎年売上げは伸び続けて2018年は112億円に。現在では、働きやすい会社ランキングで女性の部で1位、全体でも3位といった会社に成長しました。

幸福感というのは人それぞれで、自分のこだわりが実現できれば幸せという人もいれば、乱高下するような会社で勝負してお金を稼ぐことが幸せという人もいるでしょう。私は後者のタイプでしたから、サイボウズに入社して16年になりますが、日本一のシェアを誇る企業に成長させてきましたし、新しいことにチャレンジする楽しさを実感しています。

みなさんにも就職活動では、自身の「幸福度」と「生産性」の両方を兼ね備えた会社を見つけてほしいと思います。そのためには面接で、異動や転勤、副業の話やお給料の決め方など、その場ではタブーと思われている質問をしてみてください。これまで企業は自社の風土に染まる人材を選別してきましたが、今は労働人口が減少し、若者を確保しないといけない時代です。みなさんは選べる立場にいます。ぜひ自身が働く際の希望を伝え、自分らしく活躍できる会社と出会ってください。


「キャリア教育科目—卒業生経営者から学ぶ社会人に必要な力」より
(※この内容は2018年12月取材時のものです。)