- 名前
- 西居 豊
- 学部
- 経営学部 経営学科 2005 年卒業
- 会社
- 合同会社五穀豊穣 代表 和食給食プロデューサー
和食給食で次世代を育て、未来の食文化に一石を
出汁の味わいや四季の移ろい、そして洋食に比べてカロリーが低く健康的と、和食はユネスコ無形文化遺産にもなった日本が誇るべき文化のひとつ。だが1980年代以降、食の欧米化が進み、かつては当たり前に家庭の食卓に並んでいた和食が減りつつある。そんな中、未来を担う子どもたちへのアプローチで日本人の食の原点である和食文化を盛り上げようとする人物がいる。桃山学院大学を卒業して合同会社五穀豊穣を立ち上げ、和食給食プロデューサーとして国内外で活躍する西居豊だ。
「週4回の和食給食」実現に向けて、農林水産省や農業団体ともコラボ
魚、肉、野菜…全国各地から店頭に集まる食品には、どれも作り手の思いが込められている。身が擦れないよう交互に重ねたり、板を当てたりと、ベストな状態で消費者に届くよう凝らされた工夫。だがそれは買う側には伝わらず、「少しでも安く」と買い叩かれた結果、安い外国産が市場に出回り、地方の一次産業( 農業や漁業など)はどこも衰退の一途を辿っている。そのことに心を痛めた西居は、卒業後5年勤めた会社を退職し、一次産業を支援することを決意。週末に屋台バーを開いて少しずつ資金を作りながら、農家や漁師を訪ねて製法や流通の仕組みを学び、農産物の卸売や企画を行う会社を設立した。
東日本大震災直後、買い控えで米農家が窮地に陥った際には、小学校で「お米の授業」を企画。その時、洋食が中心となった子どもたちの給食を目の当たりにし、「子どもの和食離れは子どものせいではない」と実感。「売る努力よりも、食べる側へのアプローチが必要だった」と、食育事業への転換を決意した。目標は「和食給食を週4回」だ。
方向性が決まるとあとはスピードが勝負。和食が無形文化遺産登録されると同時に農林水産省や全国各地の和食料理人と共に『和食給食応援団』を結成。給食の献立開発サポートや学校での出張調理や食育授業を行うことで、少しずつ次世代への和食普及を進めている。そこに和食材メーカーや全国の農業団体のスポンサー契約を取り、掲載した食材は給食に実際に取り入れてもらうことで互いに利益が得られるように。2012年には、朝日新聞出版発行AERAが選ぶ「日本を立て直す100人」に選出。また、この取り組みは2015年度グッドデザイン賞金賞をはじめ、さまざまな賞を受賞して脚光を浴びた。
大学時代に磨いたビジネス実践力で国内外への和食文化の懸け橋に
国までを動かしたその才覚は、学生時代に既に発揮されていた。大学時代、不要になった教科書をトラック一杯に預かり、定価の半額で販売、売り上げの半分を提供者に戻すという教科書リサイクルを考案。他にも軽トラを屋台にバーを開いたり、大学周辺を紹介したサイトでバナー収益を上げたりと、経営を実践で学び、学内のビジネスコンテストでも入賞した。そんな経営センスの持ち主が着目した「和食」。最近では海外からの講演オファーも増えた。「和食文化普及の先に日本の一次産業が元気になってほしい」という西居の願いは、今や世界規模に広がりつつある。
(※この内容は2018年6月取材時のものです)