「まずは行動してみる!」ことが、今の仕事につながった。
チームの中で“個”をどう活かしあえるかが今後の働き方のカギに。

現在、スタイリストやファッションディレクターなど、様々な仕事を手がけていますが、もともとそういった職業に就こうと考えていたわけではありませんでした。一つのきっかけになったのが、大学1年生のときに友人と大学主催の国際ワークキャンプの説明会に行ったこと。そこで聞いた「人から受けた恩は困っている人に返してあげること。それがつながって円になることがボランティアだ」という言葉に感銘を受け、思い切ってインドネシアでのボランティアに参加することに。しかしホームステイ先での意思疎通が難しく、コミュニケーションが億劫に…。「このままではいけない!」と現地の子ども達をサッカーに誘ったところ一気に交流が深まり、自分が動くとまわりが変わることを実感しました。

帰国後は就職活動を控え、もやもやする日々。そんなころ、アルバイト先のテレビ局にいたスタイリストさんから「仕事を手伝ってほしい」と声をかけられ、迷いつつも引き受けてみると、テレビ番組の裏側には多くのプロフェッショナルが関わっていることがわかり、「これだ!」と思って大学とのダブルスクールでバンタンデザイン研究所に通い、卒業後はフリーのスタイリストとして独立しました。はじめは仕事も少なく、営業用の作品撮りの毎日でしたが、ある日、東京で活躍するスタイリストさんがたまたまブログにコメントをくださり、それを機にお会いしてみると意気投合。テレビ番組の仕事の依頼をいただき、そこから2週間に一度東京での現場を手伝うように。1~2ヶ月すると某アイドルグループのスタイリングを任され、東京~大阪間を夜行バスで往復するという生活を2年ほど続けたところ、徐々に仕事が舞い込むようになっていきました。

これまでで一番印象に残っているのは、「氷艶」というアイスショーで衣装ディレクターを担当したことです。これは歌舞伎とフィギュアスケートを融合させたもので、演者・ヘアメイク・音楽等に至るまで日本のトップレベルの方々とチームを組んだ、苦労が多い分、刺激や達成感も大きく感じられる仕事でした。この仕事を通じて学んだのが、フリーであろうがなかろうが、チームの中で自分はどういった役割をこなせるのかを考えることが、これからの働き方として求められることなのではないかということでした。様々な技術やキャリアをもつ人々がチームとしてどう支えあい、どうパフォーマンスを上げていけるのか。今後は上からいわれたことをその通りこなす仕事のやり方は減っていき、より個人の能力にフォーカスする時代がきますので、一人ひとりの得意・不得意が補いあえ、チームの中で担える役割がはっきりしている人が生き残っていくのではないかと考えています。

そんな中、みなさんにおすすめしたいのは、“人にアンテナを刺す”ことです。興味のあることややりたいことがあるのなら、それを言葉にしてまわりの人に伝えてみてください。私の場合、今年は東京オリンピックがあるので「スポーツ関連の仕事がしたい」といっていたところ、気付くとそういった案件に関わることが増えていました。自力で実現するのは難しいことでも、人の力を借りると夢は案外叶うものです。そして、人生において大切なのは、“どの道を選ぶか”ではなく、“選んだ道でどう生きていくか”です。これまでの人生を振り返ってみて感じるのは、説明会に参加してインドネシアに行ったこと、現地の子ども達をサッカーに誘ったこと、スタイリストさんの仕事を手伝ってみたこと、それらの積み重ねが人生を変えたということです。要は、“行動できるかどうか”が大事だということ。自分にあっているかどうかは、体験してみないとわかりません。日々のちょっとしたチャンスを見逃さず、数ある道の前で迷ったときには、まずは一度挑戦してみてほしいと強く思います。

(※この内容(学年表記含む)は2020年1月取材時のものです。)