「第5回桃山学院大学図書館書評賞」受賞者 <2010年12月1日発表>


第5回桃山学院大学図書館書評賞には88篇の応募作品が寄せられました。 図書館書評賞選考委員会で審査した結果、下記の通り受賞作が決定しましたので 発表します。

受賞作一覧はこちら。
最優秀書評賞 該当作品なし
優秀書評賞 根来 厚志 (国際教養学部3年次生)
伊坂 幸太郎 『ラッシュライフ』
新潮社  2005年
  中川 洋子 (文学部4年次生)
須賀 敦子 『コルシア書店の仲間たち』(須賀敦子全集第1巻所収)
河出書房新社  2000年
佳   作 木谷 友子 (文学部4年次生)
瀬尾 まいこ 『図書館の神様』
マガジンハウス  2003年
  高橋 未央 (経済学部1年次生)
重松  清  『十字架』
講談社  2009年
  堂馬 悠理香 (法学部4年次生)
勝間和代、香山リカ  『勝間さん、努力で幸せになれますか』
朝日新聞出版  2010年




総合講評

図書館長 経済学部教授 滝田和夫
 図書館書評賞は今年度で第5回目となった。昨年度は締切日前日の台風襲来の影響もあり応募作品数が50篇と少なかったが、今年度はそれを超える88篇の応募があった。受賞作品の選考は各学部から選出されている図書館委員5名による投票と審議によって行われ、優秀書評賞2篇と佳作3篇が決定された。今年度も最優秀書評賞の該当作品はなかった。
 今回も応募要件を充たさないために審査の対象外となった作品があった。本文が40字×40行の設定になっていないものや、本学図書館に所蔵されていない図書を対象としているものなどである。応募要項をよく読んでいただきたい。また、応募作品の中には明らかな剽窃と断定されたものもあった。剽窃が最も恥ずべき行為であることは言うまでもない。絶対にしないでいただきたい。
 書評においては、本の内容を簡潔かつ的確に要約した上で、その本の良い点や悪い点を具体的・説得的に示す必要がある。応募作品の殆どは、内容紹介にとどまらず何らかのコメントを付けていたが、単に「面白い」とか「深く考えさせられる」、「お薦めの一冊」という類の表面的な指摘にとどまるものも少なくなかった。どこがどう面白いのか、何をどのように深く考えさせられたのかを、自分自身の言葉で読み手に伝わるように説明してほしい。その際、書評全体の構成を十分に検討し、わかりやすく適切な文章で表現することも大切である。
 今回の入賞者5名中3名は、過去の入賞経験者である。優秀賞の根来君は今回で3年連続入賞、同じく優秀賞の中川さんは2年連続入賞、佳作の木谷さんは何と4年連続入賞である。この書評賞の審査は、応募者の氏名を伏せたうえでの投票と審議により行われるから、過去の受賞歴は一切考慮されない。それなのに、多数の応募者の中から何度も入賞するというのだから、審査員一同脱帽というしかない。大変な力量の持ち主たちである。
 優秀賞の2作品のうち『ラッシュライフ』の書評は、審査員の評価が最も高かった。原作は奇想天外でトリッキーなミステリー仕立ての小説であるが、評者は作品に込められた作者の意図を自分なりに把握しようと考え抜いている。その真摯な姿勢と議論の説得力は高く評価できる。また、作品の内容紹介そのものは簡単にとどめ、読者の興味を誘うように巧みな表現を織り交ぜながら考察を進めることによって、原作のイメージをくっきりと浮かび上がらせているところもまことに見事である。
 もう一つの優秀賞受賞作、『コルシア書店の仲間たち』の書評も評価が高かった。原作はミラノでの著者の体験を綴ったエッセイ集であり、全体を貫くストーリーがあるわけではない。しかし、評者は手短にその内容を紹介した上で、書評の焦点を作品全体のテーマ、文章表現の美しさ、その背景としての翻訳家の経歴に絞ることによって、原作のもつ魅力を余すところなく読者に伝えている。構成がよく、読みやすくて説得的であり、また原作に劣らぬ洗練された文章という点で、とても完成度の高い作品である。
 佳作3篇の中では『図書館の神様』の書評が一歩抜きん出ていた。原作は心に傷を負った主人公の再生のプロセスをその日常生活を通じて淡々と描いたものである。評者は、このどちらかといえば平凡な話の中に込められた作者の意図を自分なりに深く読み込み、持ち前の素晴らしい文章力で生き生きと説得的に表現している。この書評のよさは原作を読むとよくわかり、ある辛口の審査員は、「本書の内容よりも書評の方が『おもしろく』感じる」と絶賛したほどである。
 もう一つの佳作の書評の原作、『十字架』は、評者の紹介通り、重いテーマを扱った小説である。評者はこの小説の要点を要領よく的確にまとめており、また小説のテーマや特徴の捉え方も概ね妥当といえる。また、評者がこの小説のどのような点に共感したかもよく伝わってくる。難点をいえば、コメントがやや一般的なことと、文章表現の詰めの甘さが若干目に付くところである。文章を磨き、また、それに説得力を持たせる訓練をしていくことによって、一層の成長が期待される新人である。
 最後に、『勝間さん、努力で幸せになれますか』の書評であるが、評者は原作の対談者の主張を非常に手際よく紹介しており、原作に書かれていることはこの書評の内容に尽きるといっても過言ではない。さらに、評者は、二人の対談者の主張に共鳴しつつ、自分自身の生き方を模索しているが、その真面目で前向きの姿勢にも好感が持てる。だが、引用と紹介の部分がいささか多すぎる。二人の主張についてもう少し深く考え抜き、自らの考えをより明確に打ち出すことができれば、もっとよかった。
 今回の応募作品も力作揃いであった。また、残念ながら選外に終わった作品の中にも、入賞にあと一歩という作品が少なくなかった。来年はさらに多くの諸君が応募するよう期待したい。


第5回の応募要項はこちら





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