桃山学院大学図書館書評賞

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「第4回桃山学院大学図書館書評賞」受賞者<2009年12月2日発表>

                                  
最優秀書評賞該当作品なし
優秀書評賞中村 那於 (社会学部1年次生)            
   新田次郎『槍ケ岳開山』(新田次郎全集:第18巻所収) 新潮社  1975年
佳 作 木谷 友子 (文学部3年次生)
   北村薫『スキップ』 新潮社 1995年
中川 洋子 (文学部3年次生)
   八木 宏美『違和感のイタリア:人文学的観察記』 新曜社 2008年
根来 厚志  (国際教養学部2年次生)
   伊坂 幸太郎『終末のフール』 集英社 2006年
松谷 彩可 (国際教養学部1年次生)
   諏訪 哲史『アサッテの人』 講談社 2007年

受賞作一覧は
こちら

審査講評(全般)

図書館長  経済学部教授 滝田和夫

 図書館書評賞は今年度で第4回目である。今年度の応募作品数は去年の121篇に比べて大きく減少し、50篇であった。減少の原因として、台風襲来のために応募締切日前日に大学が臨時休校になったこともあるが、基本的には宣伝が十分ではなかったことがあるかと思われる。次年度に向けての反省点としたい。選考は各学部から選出されている 図書館委員5名の合議によって行われ、優秀書評賞1篇、佳作4篇が決定された。残念ながら今年度も、最優秀書評賞に該当する作品はなかった。
 今回も、応募要件を充たさないために審査の対象外となった作品がいくつかあった。本文が40字×40行の設定になっていないもの、800字以上1,600字以内の制限を越えるもの、あるいは本学図書館に所蔵されていない図書を対象としているものなどである。これらの要件は応募要項にはっきりと書いてあるので、よく読んで応募していただきたい。
 書評においては、本の内容が的確に要約され、その本のよい点や悪い点が具体的に明示される必要がある。今回は内容紹介だけのものはさすがに少なく、殆どの応募作品には内容紹介に加えて何らかのコメントが付けられていた。しかし、紹介に大半を費やし、単に「面白かった」「役に立った」という類のコメントを一言付けただけのものも少なくなかった。 その本のどこがどのように優れているのか、あるいは劣っているのかを自分の言葉で具体的・説得的に指摘しなければならないのである。その際、書評全体の構成を十分に検討し、わかりやすく適切な文章で表現することも非常に大切である。
 今回の入選作のうち優秀賞、『槍ヶ岳開山』は、審査員の評価が最も高かった。これは素直で歯切れのよい短文を主体に書かれており、読みやすくて明快な作品である。文に無駄がないし書評全体のバランスもよい。原作は数多くの小さな物語から構成されているが、細部にとらわれずに小説全体の流れが要領よく紹介されている。また、ストーリーの面白さや 山の描写のすばらしさといった原作のもつ魅力が、焦点を絞って具体的・説得的に示されている。但し、推敲が十分とは言えず、文章の完成度という点では問題が残る。
 佳作4篇中、相対的に評価が高かったのは『スキップ』と『終末のフール』の書評であった。この二人の受賞者は、いずれも過去の書評賞の受賞者でもある。『スキップ』の受賞者は今回で3年連続の受賞であり、また、『終末のフール』の受賞者は今回で2年連続の受賞である。二人ともなかなかの実力の持ち主だということである。
 さて、その3年連続受賞者の作品、『スキップ』の書評だが、これはとてもよく作りこまれた上質な作品である。推敲が十分に重ねられており、緻密に構成された完成度の高い作品である。テーマの捉え方も適切といえよう。しかし、説得力の点で物足りなさが残った。この書評には、原作の中の美しい言葉や気の利いた表現がところどころにちりばめられている。 そのこともあって、技巧的で美しい作品に仕上がってはいるのであるが、その反面、評者の肉声が聞こえにくいという惜しい結果を招いたのではないかと思われる。
 もう一つの2年連続受賞者の作品、『終末のフール』の書評は、それとは対照的に、自分の言葉で飾らず素直に書かれており、その分わかりやすくて説得力のある作品である。特に、原作の状況設定を自分の大学生活と重ね合わせているあたりを読むと、思わずニンマリとさせられる。構成もよく考えられている。しかし、推敲が十分ではなく、文章ミスや不要と 思われる語句も散見される。また、書評としては感想文にやや近いところも気になるところである。
 次に、『違和感のイタリア』の原作は、イタリアとイタリア人を理解するためのいくつかの話題を綴り合せた「モザイク画」(原作p.12)のような作品である。そのため、原作それ自体必ずしもまとまりがよいとはいえず、その影がこの書評にも投影されて若干散漫な印象を与えている。しかし、評者がポイントを思い切って絞ることによって、それなりに まとまりのある書評に仕上げているところは評価できる。また文章の完成度も高く、内容も概ね正確に理解されており、受賞に十分値する作品である。
 最後に、『アサッテの人』の原作はやや難解な小説だが、評者はその内容をほぼ正確に理解して紹介している。文章の完成度は高く、書評としての体裁もよく整っており、いい作品である。しかし、この書評には、説明不足のためにわかりにくい箇所もある。例えば、叔父の「定型化されたアサッテ」がチューリップ男の「無作為的なアサッテ」と対比されるが、 「チューリップ男」とか「無作為的なアサッテ」とは一体何のことか、この書評を読んだだけではわからない。字数にまだ余裕があるのだから、もう一工夫欲しかった。
 今回の受賞作は、最優秀賞作品がなかったとはいえ、いずれも実力を感じさせる力作揃いであった。また、選外となった応募作品の中にも、あと一歩と惜しまれる作品が少なくなかった。今回応募された諸君も、またされなかった諸君も、さらに研鑽を積んで、来年は一層審査員をうならせる作品を提示されるよう期待したい。




≪≪過去の書評賞≫≫

     第1回     第2回     第3回





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