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お知らせ
2015.4.2
お知らせ・イベント
2015年度入学式を挙行しました
4月2日(水)、満開の桜の下、午前9時より本学チャペルにおいて新入学生歓迎記念礼拝が、10時より総合体育館において2015年度入学式が執り行われました。今年度は、学部生1683名、大学院生26名が入学されます。
式では、大勢の保護者も見守る中、壇上で各学部の新入生代表が宣誓し、国際教養学部の浦田 良さんが宣誓の言葉を述べました。
また、入学のお祝いとして、本学の卒業生でもあるリンゼイ・キャメロン・野見山・河合団長率いる「ラムゼイ・パイプバンド」によるバグパイプ演奏がありました。

新入生の皆さま、ご入学おめでとうございます。

新入生歓迎記念礼拝

松平功チャプレンによりお祝いのことば

大西修学院長より祝祷

2015年度入学式

前田徹生学長より式辞

入学宣誓

バグパイプ演奏

大西修学院長より祝祷

2015年度入学式 学長式辞

 本日はご多忙中のところ、入学生の保護者ならびにご来賓の皆さま、教育後援会、大学同窓会の関係者の皆様、入学式にご臨席を賜りまして、心より厚く御礼申しあげます。とりわけ、今日までの長きにわたって皆さんの勉学を支え、励ましてこられたご家族や保護者の皆様に対し、心からのお慶びを申し上げます。
 さて、新入生の皆さん! ご入学おめでとうございます。ようこそ桃山学院大学へ!大学教職員一同、皆さんの御入学を心より歓迎いたします。
 皆さんの中には、将来への夢に胸をふくらませながら入学してこられた方もおられるでしょう。将来何をすべきかまださっぱり思いつかない、という方もおられるでしょう。おそらく、将来の夢は大学に入ってから見つけるのだ、という方が一番多いのではないでしょうか。多くの皆さんは大学という未知の世界を前にして、期待と不安の入り混じった気持ちでおられることと思います。

 さて、4年後、順調に行けば皆さんは大学を卒業し、社会人となります。大学は、皆さんを「成熟した一人前の大人」として世に送り出すことを使命としております。では「一人前の大人」になるとはどのようなことを意味するのでしょうか。どのような職業に就くか、それは人によって様々ですが、仮に企業人として働くとしたら、どのような資質が求められるのでしょう。経済団体連合会が昨年行った新卒採用にあたってのアンケート調査(2014年7月660社回答率50.4%)をみますと、企業が採用にあたって最も重視すると答えた資質の第一位は「コミュニケーション能力」で83%に上ります。以下50%を超える項目として「主体性」(61.1%)、「チャレンジ精神」(52.9%)が挙げられ、さらに「協調性」「誠実性」といった項目がこれに続きます。「オヤ?」と思われるのではないでしょうか。勉学の目標たる「学力」は重視されないのでしょうか。このアンケートで「学業成績」を重視すると答えた企業は、わずか6%、17位となっています。

 我々の社会はすべて人間と人間のコミュニケーションによって成り立っているといっても過言ではありません。家庭、職場、社会、様々な人間関係で成り立っております。そこでは異なる価値観、異なる立場、異なる文化をもった人たちとお互いを理解し合い人間関係を円滑に進めて行かなければなりません。礼儀作法や言葉使いから始まり、人柄、聞く力、話す力、理解力、説得力、精神力、体力など、総合的な人間力が試されます。そればかりではありません。仕事やビジネスの世界では、文章が読め、書けること、相手の言うことをきちんと理解し、自分が伝えるべきことを正確に表現できること、数字をきちんと把握し、計算できること。いわゆる昔から言われている「読み書きソロバン」といった基礎学力から始まり、さらに、国境を越えて人・モノ・金が行き交うグローバル化された世界では、国際言語としての英語等の能力も不可欠なものとなってきます。加えて、IT化が進む世界では、今やどの職場においてもパソコンを使って仕事が行われていますので、「情報処理能力」も不可欠な素養です。狩猟採集時代の人間の生活を想像し、比べて見てください。高度に発達した現代社会に生きる我々は、その社会で求められる資質、基礎的な言語能力や数的処理能力、情報処理能力、人から信頼され、好感をもたれる魅力的な人間力までスーパーマン的教養人になることが求められているのです。
 「そんなの無理です!」「できっこありません!」皆さんからはそんな言葉が聞こえて来そうです。

 私は学長に就任してからいつも「不思議だな!」と思うことがあります。例えば、三菱東京UFJ銀行といえば、メガバンク中のメガバンクです。有名大学の卒業生が沢山働いています。そんな中で30歳にして出世頭として活躍しているのは本学の卒業生です。日本の国家試験で最難関の試験といえば司法試験ですが、この試験にも既に8人の卒業生が合格しております。帝国データバンクの最新の調査によりますと、昨年1月末までのデータで、社長職に就いておられる本学の卒業生は973名、卒業生総数が7万人弱と決して多くはない中で、本学は社長の出身大学ランキング六四位(『大学ランキング2015』)に位置しております。他にも例をあげればきりがないのですが、なぜ有能な人材を輩出できるのでしょうか。その理由は3つあげられると思います。
 理由の第一は、社会人として求められる能力は、単に学力、すなわち知識を蓄えそれを再生する能力、いわゆる偏差値脳といった部分脳だけでは足りません。社会人として必要とされる「コミュニケーション能力」を発揮するためには、学力だけではなく、全体脳に関わるバランスのとれた「脳」が必要なのです。これは今までの学校教育では十分意識的に鍛えられて来なかったのです。第二は、最新の脳科学の知見に拠れば、脳細胞は、誰でも、何歳になっても鍛えさえすれば発達するものだといわれています。それも有酸素運動を伴って鍛えると樹木が枝を伸ばすように毛細血管が発達しニューロン新生が行われるのです。幕末に水戸藩が作った学校『弘道館』を訪れたことがあります。3千人を超える若者が学んだと言われますが、そこでは「文武両道」を旨とし、ただ座って学ぶだけではなく武術により体を動かすことが奨励されていたそうです。これは脳を鍛えるには最適な方法であったと言えましょう。血の流れを良くし、その上で脳を鍛えればいつでも誰でも優れた脳を持つことはできるからです。第三は、脳には一定の「癖」があります。脳は「新しい」ものが好きです。例えば、数学の成績を上げたければ、一度解いた問題を繰り返すよりは、まったく新しい問題を解く方がよいのです。逆に、インターネット依存症といわれる、ゲームに極度に夢中になり、部分脳を繰り返し酷使すると、神経ネットワークそのものが変質し、それはあたかも麻薬中毒患者の脳に起きるのと同じ器質的変化、脳の破壊をもたらすといわれています。脳はほめられることや成功体験により発達します。ほめられることにより感情系脳番地と隣接する思考系脳番地も一緒に刺激され良い循環を生み出すことになります。また、やらされているという「させられ思考」に支配されると脳は不活発となります。やりたい(want)という「したい思考」にすると脳が開かれるのです。さらに脳は好き・嫌いの情動の影響を受けやすく、「好き」には脳は開き、「嫌い」には脳は閉じてしまいます。これらの脳の「癖」を熟知した上で、スポーツ等の有酸素運動を伴えば、誰でもいくつになっても脳は成長をし続けるのです。
 本学の卒業生が、「桃大には勉強にしろ、遊びにしろ、学生がやりたいことを自由に挑戦できる環境があった」と述べております。優れた頭脳を育てるためにはこの「自由の風土」が必要であり、桃山学院大学の伝統にはこの自由の気風が滔々と流れています。その自由の風土が、活発でのびのびとした学生を生み出し、「優れた脳」を育てるのです。多くの卒業生が様々な世界で活躍することも頷けるというものです。

 さて、私の挨拶を閉めるに当たり、私が出会った一人の若者の話をご紹介したいと思います。
 昨年の暮れに九州の島原・天草を旅しました。ここは江戸初期に天草・島原の一揆があったことで有名な場所です。宿泊した天草のホテルで給仕をしてくれたY君という青年に会いました。彼は天草生まれ、天草育ちの生粋の『天草っ子』。天草以外の世界を経験したのは、東京の大学へ進学した4年間だけと言っておりました。そんな彼が東京で受けた最初のカルチャー・ショックは、水が臭くてお風呂に入れなかったことだそうです。天草の清らかな水をあたりまえのように感じて育った彼には、初めて浴びた都会の水は臭くて耐え難く、結局、ずっとシャワーで済ませたそうです。Y君が東京での生活を重ね、天草に帰ったある時、故郷の海を見ていると知らず知らずのうちに涙があふれでてきたそうです。「自分のふるさとはなんと美しいのだ!」と初めて気がついたのです。それを機に「天草に帰ろう」と決心したとのことでした。生まれ育ったふるさとを空気のように感じて育った彼が東京での生活体験、異文化体験を通じて初めて故郷の素晴らしさに気がついたのです。そんなY君の天草愛にあふれた天草観光案内は、聞いている我々の心にもしっとりと沁みてくるものがありました。
 よその世界を知ることは自分の世界を知ること、他国を知ることは自国を知ること。Y君にとっての東京体験は、天草の素晴らしさを体験することでもありました。本学が標榜する「世界が変わる体験がある」という言葉は、改めて意味の深い言葉であると感じた次第です。

 これから桃山学院大学で学ぶ皆さんは、小さな自分の世界にとどまらず、新しい世界を体験し、経験を積み重ねてください。質の高い体験や経験は、必ずや学び、鍛えることの大切さ、自分が生きることの意味を教えてくれることでしょう。まずは、自分の頭で考え、自分の足で一歩を踏み出してください。それが新しい自分、新しい世界と出会うチャンスとなります。これからの4年間、緑豊かで自由の気風があふれるキャンパスで、悔いのない、「物語ることのできる」充実した学生生活を送ってください! 皆さんの前途が実り豊かで祝福に満ちたものであることを祈念して、私の式辞といたします。
2015年4月2日
桃山学院大学学長
前田 徹生