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2016.9.24
お知らせ・イベント
2016年度9月卒業証書・学位記授与式を挙行しました
9月24日(土)午前10時より、本学チャペルにて、卒業記念礼拝および9月卒業証書・学位記授与式を執り行いました。
磯晴久学院長と牧野丹奈子学長より、門出を祝う言葉が卒業生に贈られました。

磯 晴久 学院長

牧野 丹奈子 学長


2016年度9月 卒業証書・学位記授与式式辞

  皆さん、ご卒業おめでとうございます。桃山学院大学の教職員を代表いたしまして、心よりお祝いを申し上げます。また、この晴れの日をともにお迎えのご家族の皆様にもお祝いを申し上げます。

  さて皆さんの多くはこれから社会に出て働くわけですが、今、働き方が大きく変わってきています。今日は働き方の3つの変化をお話ししたいと思います。

  第一は、仕事の質の変化です。情報技術がますます発達し、単純な作業はもちろん、もっと複雑な多くの仕事でもAI(人工知能)が活用されるでしょう。わたしたち人間が担う仕事は、新しいアイデアを生み出すクリエイティブな仕事ということになるかもしれません。また、今の世の中は様々な問題を抱えており、閉塞感が漂っています。今までの考え方、やり方では突破できない問題が多くあります。これまでと全く異なる新しいアイデアが必要なのです。ですから、このように情報技術が発展すればするほど、また社会が行き詰りを見せれば見せるほど、皆さんには新しいアイデアをどんどん生み出すクリエイティブな仕事が求められることになるでしょう。

  第二は、働くスタイルの変化です。たとえば工業化社会の時代では、9時に工場に来てそれぞれが分担して作業を行う、労働時間に合わせて報酬を得る、といったようなスタイルが一般的でした。しかし新しいアイデアを生み出すクリエイティブな仕事に、このような働くスタイルは適切ではありません。日本経済新聞社がこの夏に行った国内主要企業の社長100人アンケートでは、裁量労働制、在宅勤務、また時間ではなく成果に対して賃金を払う脱時間給制など、働き方に関する施策へのニーズが高いという結果が出ています。今後は、個人個人が新しいアイデアを生み出すことに適したスタイルで働くようになるでしょう。

  しかし新しいアイデアを生み続けることは容易ではありません。裁量労働制になったからと言って、それだけで次々とアイデアが湧くわけではありません。新しいアイデアを生み続けるには、強いエネルギーが必要となります。それは仕事へのモチベーションです。

  最後に働き方の第三の変化としてあげるのがモチベーションの話です。ここでは、アメリカの作家で文筆家のダニエル・ピンクという人のモチベーション3.0という本を紹介したいと思います。ダニエル・ピンクは人のモチベーションの進化をコンピュータのOSになぞらえて、モチベーション1.0、モチベーション2.0、モチベーション3.0と名付けました。

  人は生物ですから生存のための欲求があり、これに基づくものがモチベーション1.0です。次に報酬と罰によるモチベーションがモチベーション2.0です。たくさん給料がもらえるので頑張ろう、上司に怒られるので頑張ろうなどがモチベーション2.0に当たります。このモチベーション2.0は決まりきった仕事を効率的にこなすには有効だといわれる一方、仕事の内容そのものへの興味を小さくしてクリエイティブな力を小さくしてしまうという大きな欠点が指摘されています。

  これに対して、外からのモチベーションではなく内から湧き出るモチベーション、たとえば自分の能力や個性を発揮したい!新しいことを学び生み出したい!人の役に立ちたい!などがモチベーション3.0です。そして、このモチベーション3.0は2.0に比べて強いモチベーションと言われています。

  たとえば小学生がお母さんにお使いを頼まれたとしましょう。この子は遊びたいのでお使いがいやだったのですが、1回100円と言われたので、お使いをすることにしました。いわゆるモチベーション2.0が働いたわけです。ところが、何度もお使いを繰り返して一定の金額が貯金箱に貯まったら、もうこの子はお使いに行かず、また自分の好きな遊びをするでしょう。これに対して、その子にお使いの工夫をさせるようにします。たとえば店を自由に選んで良い、上手に節約できたらそのお釣りで好きなお菓子を買って良いなどです。こうなると、自分で色々考えて工夫できるので、お使いが楽しくなります。1回100円もらえなくても続けるかもしれません。つまり、自分の能力や個性を発揮したい!というモチベーションは、報酬と罰などよりももっと強いモチベーションなのです。このことは、子供も大人も同じです。困難な課題を最後までやり遂げるとき、必ずそこにはモチベーション3.0が働いています。

  今後の社会では、自分の能力や個性を発揮したい!新しいことを学び生み出したい!人の役に立ちたい!というモチベーション3.0によって新しいアイデアをどんどん生み出すことが求められるでしょう。

  今後、このような新しい働き方の中で、皆さんがそれぞれの能力や個性をいかんなく発揮しながら社会を支える人材になることを心から願い、また皆さんならきっと社会を支える人材になれると信じて、お祝いの言葉に代えさせていただきます。


2016年9月24日
桃山学院大学学長
牧野 丹奈子