- 名前
- 森本 たから
- 学部
- 国際教養学部 英語・国際文化学科 2017年卒業
- 会社
- クウケン株式会社(積算部)

海外で活躍するような「キラキラした」仕事に憧れて国際教養学部で学んだ森本たからさんは、挫折や困難をばねに前向きな努力を続け、やりがいのある仕事を見つけました。建築業界で空調や給排水設備の工事を担当するクウケン株式会社(本社・大阪市浪速区)で、文系出身ながら建築図面を読み込んで設備工事の原価を計算する積算部で勤務しています。「(困難な)壁は自分が成長できる機会だと思います」と話す森本さんの歩みを聞きました。

過去の挫折をバネに、現在クウケン株式会社で活躍されている森本さんにお話を伺いました
二度の挫折をバネに
中学時代は勉強嫌いで、高校入試では志望校に不合格でした。結果、第二志望の高校に進学しましたが、それが本当に悔しくて高校3年間は一生懸命勉強しました。高校の担任の先生から「卒業後はどうしたいの?目標を持たなければ、良い結果には結びつかないよ」と言われたことで危機感を覚え、大学へ進学したいという気持ちを固めました。一方で、大学入学後は「勉強一筋」だった高校時代の青春を取り戻したいとも考え、また担任の先生の勧めもあり、「好きなことに、とことん取り組める大学だ」と感じた桃山学院大学に進学しました。入学後はアコースティックギターサークルに所属し、個性あふれる先輩や友人、先生方と出会い、高校では経験できなかった学生生活を満喫しました。
ただ、将来やりたいことがなかなか見つからないまま時間だけが過ぎた3年次の終わりごろ、好きだった海外の建築物に魅入られて、「海外で仕事をしたい、海外と接点のある仕事を見つけたい」と考えるようになりました。そのためにはまずは留学をしようと、第二国語として学んでいたイタリアへ1か月半の研修に参加しました。現地での生活は序盤から順調に進んでいたのですが研修後半のある日、キャッシュカードの暗証番号を間違えてロックがかかってしまい、お金を引き出せなくなってしまいました。現地の銀行窓口で必死に事情を説明しましたが、「海外で自分の生活すら成り立たない」と落ち込み、再び何をすれば良いのかわからない状態に陥りました。就活に取り組む気力を失っただけでなく、学業にも身が入らなくなり結局、最後の最後で卒業に必要な単位を落としてしまいました。

「海外で仕事をする」という目標を胸にイタリアへ向かいましたが、そこで再び挫折を味わうことになりました
(左から二人目が森本さん)
半年遅れの9月に卒業することになりましたが、ふと「親に養ってもらっているけど、こんな状態が一生続くわけではない」と思い至り、「とにかく社会人として自立してから、じっくり人生でやりたいことを考えよう」と、1学年下の後輩たちと一緒に就活に全力投球しました。
入社後2年はひたすら勉強
大学のキャリアセンター等に通いながら新卒採用の企業を紹介してもらいました。当時の私は、社会や会社、就職活動に対する知識が十分でなく、企業選びには「やりがい」ではなく、自宅から通える大阪市内、事務の仕事、転勤なし、福利厚生の充実などの条件をあげていました。何社か紹介していただいた会社の面接を受けましたが、「なぜ半年遅れの卒業になったのか?」といった原因を追究するような質問ばかりが集中し、私自身と正面から向かい合ってくれる会社にはなかなか出会えませんでした。
一方で、クウケンは採用担当の部長がわざわざ玄関口まで出迎えに来てくださり、「君かー、森本君は!」と気さくな雰囲気で接してくれました。面接では、サークル活動のことなど私の個性を引き出すような質問をしてもらい、柔らかな雰囲気とオープンな社風に惹かれました。募集職種は「積算・事務」で少し不安もありましたが、桃大の先輩でもある杉本知紀・現社長が「大丈夫だよ」と声をかけてくださり、入社を決めました。

温かい社風と、桃大の先輩でもある杉本社長のお人柄に支えられる日々です
結局、仕事を覚えるのは大変で全く「大丈夫」な状態ではありませんでした(笑)。積算の業務は、空調や給排水などの設備工事でかかる材料費や施工費を積み上げてコストを算出する仕事です。適正な価格を提示しないと受注することはできませんし、過小に積算して受注すると会社が損失を被ることになります。私たち担当者は設計図面を見て、黒い線で示されている設備の配管が給水管なのか排水管なのか、消防設備用なのかを見極めないと、材質等も異なるのでコストを計算できません。また、平面の図面から立体の建物をイメージできるようにならないと、上下の階の配管、設備の位置関係などを把握できません。最初の2年は、過去の施工事例を使って設計図面の理解や積算の基礎を学びました。会社の収益には貢献せず、勉強させてもらう日々でした。
入社して7年経ちますが、これまで辞めようかと思っても、辞めませんでした。仕事がうまくいかなくても、その度に誰かが声をかけてくれて、ここまでしてもらって「ここで諦めたらただ弱い自分を認めるだけになる」と感じたからでした。建築現場に足を運び、実際の施工現場の状況を把握することも大切にしています。年に1回の社員旅行、旅好きな人とのお土産交換、銀行OBの部長の資産運用アドバイスなど、入社前の印象通りのオープンで柔らかな社風が気に入っています。

二次元の設計図を頭の中で三次元化し、配管の配置や周辺環境などから適切な素材や部材を選択していきます
桃大のチャレンジする環境
最近結婚し、夫は転勤のある会社に勤めているので、私も今後転職を迫られるかもしれません。ただ、杉本社長は「積算業務は、自宅でもリモートでできるよ」と言ってくださるので、これからも仕事を続け、部署の要になるような、指導してくださる上司のような存在に成長していきたいと思っています。
現在、積算業務の傍ら会社のSNS発信も担当しています。また、就職活動の説明会では自分自身が就活で苦労したことなどを話す機会もいただいています。特に、就職活動をしている学生に話をする際には「なりたい自分と社会が求める仕事にはギャップがあること」、「クリエイティブな仕事で、海外で活躍するようなキラキラ輝いている人だけが成功者ではないということ」に気づき、諦めないで就活に取り組んで欲しいと伝えています。もちろん、そのうえで積算という仕事のことも知ってもらいたいと思っています。
誰にでも、人生の様々な局面や仕事でステップアップするときには、越えられないと感じる壁に突き当たることがあります。でも、その壁は乗り越えていかなければなりません。私は「壁に直面したら、自分が大きく成長できる機会だな」と考えるようにしています。
桃山学院大学には、様々なことにチャレンジする機会が用意されています。エネルギーをどんどん使う場があり、「さあ、あなたは次にどうしますか」ということを常に問い続けてくれる大学だと思います。後輩の皆さんには、そんな桃大で大きく成長し自信をもって社会へ飛び出してもらいたいですね。

「あの時の挫折があったから、今の私がある」と感じています
後輩の皆さんには、挫折や壁にはポジティブに立ち向かってもらいたいと思います
▼森本さんが勤める、クウケン株式会社
http://kuuken.co.jp/
(※この内容は2025年3月取材時のものです。)