「起業によって人生をサバイブ(生き残る)する」と二浪後の進学先にビジネスデザイン学部を選んだ阿佐泰成さんは、起業に欠かせない情熱や使命感の大切さに気付いたそうです。自分へのインプット(入力)を増やすために取り組んだボランティア活動をきっかけに始めたグループホームでのアルバイトで、福祉業界の課題を感じ、その解決を目指してコンサルタント会社・船井総合研究所の就職内定を得ました。ビジネスデザイン学部の学びが阿佐さんに与えた影響はどんなものだったのか、語っていただきました。

「お笑いの道」を捨てて受験勉強

高校時代は柔道に打ち込み、受験対策はほとんどできていませんでした。結果、1年目は不合格。浪人1年目には、お笑いをやってみたいという気持ちがあって、東京の芸能会社の養成所の試験を受けました。その事務所は「養成所に入る段階で将来を見極めている」ということで、合格すればプロのお笑い芸人になる可能性があると思いました。面接では、有名なお笑い作家が「1分間で面白い話をしてください」と。何を言ったらいいのか戸惑いましたが、お笑い番組を録画して研究していたおかげか、合格しました。ところが、その事務所は関西に拠点がなく、いきなり東京に出ることに不安を感じて断念。受験勉強を始めることにしました。
しかし、それまでの予備校に通わない所謂「自宅浪人生活」で生活が乱れ、軽い引きこもり状態になってしまいました。一浪後も志望校には合格できず、ますます落ち込んで、家に引きこもる生活を続けました。ところが、二浪目の11月に突然、「このままではダメだ、ここで頑張らなければ」と思い直すことができたんです。そこからは、科目をしぼり、各教科1冊の本でひたすら勉強し、3~4校に合格できました。

お笑いの道や浪人生活など、様々な経験を経てビジネスデザイン学部に入学した阿佐さんに、
これまでの経験や学部での学び、将来に向けた抱負を語っていただきました。

起業を目指してビジネスデザイン学部へ

複数の大学に合格した訳ですが、その後改めて各大学の内容を調べ、社会課題の解決やその先に「起業」というものが見えたビジネスデザイン学部に「ここなら生きる力を身につけられる。社会でサバイブできる」と魅力を感じ、入学を決めました。
ほとんどの同級生は現役入学の18歳。入学前のオリエンテーションで私は「二浪しているんだ」と明かしましたが、「確かに、少し年上の雰囲気がした」と言われたぐらいで、皆フランクに接してくれました。入学直後からビジネスプランを考える実践的な授業が多く、「最初は経営の理論を学ぶのだろう」と思っていたのでちょっと驚きました。

頑張っている人を認める文化

課題解決型授業でのビジネスプラン作りはグループで取り組みますが、時に意見がまとまらずチームが崩壊しそうになることもありました。チームがまとまるにはどうすれば良いのか、リーダーシップの本を読み漁りました。授業前にメンバー全員の特徴を理解し、全員が役割を意識して参加できるよう工夫しました。私はじっくり考えたいタイプなので、どちらかというとチーム全体を俯瞰する役割につくことが多かったですね。
ビジネスデザイン学部には〝頑張っている人を認める文化〟があります。「あの発表良かったね」などと素直に評価して声をかけてくれる人が多いです。私の1年生最初のプレゼンテーションの後に声をかけてくれた同級生がいて、すぐに友だちになりました。頑張っている学生同士の横のつながりができるので、とてもいい雰囲気だと思います。

在学中には、ビジネスプランコンテスト(大学主催)にも参加。
ビジネスデザイン学科での学びを、さまざまな場面で発揮した。

体験のインプットを増やすためにボランティア

ビジネスプラン作成では自分のアイデアをアウトプット(出力)し続けます。学内の勉強だけでなく、現場で起こっていることを学ぼう、様々な経験をインプット(入力)しようと考え、高齢者にスマホの使い方を教えるボランティア活動に参加しました。さらに高齢者の困りごとを解決する家事代行にも取り組みました。このボランティアの体験にヒントを得て、指先が乾燥してタッチパネルの操作が難しい高齢者のために「指の乾燥を止める商品」を企画し、ビジネスプランコンテストの特別賞を獲得しました。
現在は、重度訪問介護従業者の資格を取り、身体障がい者のグループホームでアルバイトを続けています。障がい者の方々は日中、就労支援施設で働いています。制度の狙いは、最終的には一般就労として企業で働くことができるように支援することですが、「もう少しお金がほしいけど、働かせてもらっているだけでありがたい」と一般就労へ移行する勇気を持てない方がおられる現実を知りました。雇用契約を結ばずに就労支援を受ける「B型」から、雇用契約を結ぶ「A型」、さらに一般就労へと繋ぐことが理想ですが、実際は「B型」に滞留する人が増えており、この構造をより良いものにする方法をいま、卒業研究として考えています。

アウトプットの質を高めるためには、インプットの量や質を高める必要があると、
学内外問わず様々な活動に挑戦した阿佐さん。
卒業研究も、その活動がきっかけで知ることになった社会課題をテーマに設定しました。

起業は社会のために

2年次の時、学外の方から起業体験を聞く授業に誘われて出席し、その時に聞いた話に衝撃を受けました。双子を乗せやすい自転車を開発して起業した女性だったのですが、双子の子育てを必死に頑張っているのに、ふたりを乗せて自転車で走っていると「危ない」と批判された悔しい経験をしたことがきっかけで「双子を乗せても安全な自転車」の開発に取り組んだそうです。その方は授業でこれまでの話しながら、感極まって涙を流しておられました。商品が完成したのは9年後で、大きくなった双子のお子さんが実際にその自転車に乗ることはなかったそうですが、このとき「この起業は自分のためではなく、世の中のためではないか」と気づいたんです。お話を聞いて、その方には「社会のために」という信念があると感じました。一方で、それまで私が考えていた「起業」は、社会の中で生きていく、サバイブするという「自分のため」のものでした。私には「社会のために」という熱意が足りないと感じた出来事でした。

様々な課題解決への取り組みや協働を通じて、
起業家をはじめ社会人の方々の「本気」に触れることができるのが、
ビジネスデザイン学部の魅力だと思います。

様々な企業・組織に取り組むコンサルタントに

3年次の6月から企業のインターンシップが始まり、私は金融、小売り(ホームセンター)、補聴器メーカーでのインターンに参加しました。小売り(ホームセンター)ではお客さんが必要なものを近くの棚でそろえられるように商品を配置する工夫などが印象的でした。例えば梅酒をつくりたい人には、梅酒を漬け込む大型のビンや角砂糖など必要なものを近くの棚に並べています。様々な業界でのインターンシップを通じて、それぞれの経営戦略を間近で見ることができました。
コンサル業界に就職することは考えていませんでしたが、それまでのインターンシップでの経験やゼミの先生の勧めもあって、コンサル会社のインターンシップにも参加。様々な企業のマーケティング戦略を支援したいと考えるようになり、コンサル会社の船井総研と地方銀行を志望。両社から内々定をいただきました。
船井総研は障がい者施設で働いていることを評価してくれました。私は、さまざまな企業や組織を外から支援する仕事がしたいと考え、同社のお世話になることにしました。障がい者福祉の制度そのものを変えることはできませんが、コンサルタントとして福祉施設の人事管理など職場環境を良くする方策の提案などに取り組みたいと考えています。
ビジネスデザイン学部で学んだことを、これからは社会に役立てていく。私の挑戦は、まだまだ始まったばかりです。


(※この内容は2025年12月取材時のものです。)

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