- 名前
- 北口 達也
- 学部
- 社会学部 社会福祉学科(現:ソーシャルデザイン学科) 2019年卒業
- 所属
- 合同会社SR(代表)、一般社団法人Social Reform
中学時代から桃山学院大学志望だった北口達也さん。学科選択では社会福祉学科か経営学科か大変迷ったそうです。社会福祉や公務員の道か、経営・起業の道か。両親の影響もあって複数の選択肢の間を揺れ動いてきましたが、社会福祉学科(現:ソーシャルデザイン学科)へ入学。同じ学科で出会った友人や先輩との縁に導かれて、社会福祉分野の仕事に居場所を見つけました。卒業後は奈良県生駒市役所職員として社会人の歩みを始めた北口さんですが、大学での学びや市役所職員としての業務経験を生かし、社会課題を解決する起業に挑戦しました。将来は福祉の現場で気づいた課題を経済学などの視点で理論化することを目指し、大学院への進学を予定している北口さんの歩みをうかがいました。
社会福祉学科⇒市役所職員⇒社会福祉協議会を経て昨春、
社会課題解決のために起業をされた北口さんにお話を伺いました。
学友のアドバイス
志望して入学した桃大でしたが、最初の2年間は自転車で台湾一周、徒歩で城崎温泉へ(途中で体力の限界に)など、若者らしいチャレンジやアルバイトで青春を謳歌していました。そんな私を見かねて、2年次の後半から親しくなった同級生が「もっと勉強しろ」と口を酸っぱくして説いてくれたのですが、なかなかやる気を見せなかった。すると彼は、私に講義で学んだ内容を基にしたクイズを出題してきたのですが、悔しいことに1問も正解できなかった。「同じ講義を受けているのに、まったく身についていない。あと2年で取り戻せるのか!?」と大きなショックを受けました。ただ、その時に友人がもう一つのことを教えてくれたんです。「成績優秀者は学費半額が免除」。この時点で、私の次なる目標が定まりました。目標を掲げたのであれば、もうあとは必死で突っ走るのみ。そこから必死で勉強し、最終的には目標にしていた「学費半額免除」の奨学金を受けるほどに成績が急上昇しました。
大学3年から猛然と勉強に取り組んだ北口さんは、教員の目にも止まります。様々な情報を共有してもらえるようになり、社会福祉協議会で児童生徒の学習支援や生活困窮者支援のアルバイト、ビジネスプランコンテストなど多くの経験を積みました。「行動しているからこそ出会いがある」と、北口さんは自ら動くことの大切さを痛感したそうです。社会福祉協議会で知り合った社会福祉学科卒の先輩と一緒に起業することにもなりました。桃大での友人、先輩との出会いが北口さんの人生を大きく動かしました。
学生時代の北口さん。
当時、北口さんを「目覚めさせてくれた」友人たちとは、今も家族同士の付き合いが続く。
在学中、お互いを励ましあいながら勉強に打ち込んでいた4人。そんな4人の学科内での愛称は「GPA※軍団」だった。
(※GPA=学生が履修した科目の成績を点数化し、その平均値を示した指標)
両親の影響
桃大のキャンパスがある大阪府和泉市の出身です。父はスノーボードやスケートボード、ピストという自転車などの販売と、長野県・野沢温泉のゲストハウスを経営する自営業。母は学校の障がい児支援員。「こんなことが出来るようになった」「こんなかわいいところがある」など障がい児支援の仕事の楽しさを語ってくれました。
母から「桃大から公務員になる人がいるそうだよ」と教えられたことが桃大を志望する大きな理由でした。経営者の仕事も楽しそう、福祉の仕事のやりがい、どちらも魅力的でしたが、「福祉のことを学べば、将来福祉関係の経営に挑戦できるかもしれない」と考えて、社会福祉学科を選びました。
両親、どちらの生き方も「素敵」だなと思っていました。
そんな二人を近くで見ていたからこそ、「福祉で起業」という選択も、自然にできたんだと思います。
公務員として起業支援を経験
就職では、「自分の本当にやりたいことはまだ見えていない。福祉以外のことも経験したい」と公務員を目指しました。福祉職で入職すると定年まで福祉の仕事だけになると考え、事務職で受験。生駒市と大阪市の筆記試験に合格しましたが、面接試験の日が重なってしまいました。商店街などを実際に歩いて「住民の方と近い距離感で仕事ができそうだ」と感じた生駒市を選びました。
生駒市では「福祉以外の仕事に挑戦したい」という希望通り、商工観光課に配属され、市内の商工業者への補助金、創業支援などを担当しました。銀行や商工会議所の職員、デザイナーなど市役所外の多彩な人々と仕事をする機会に恵まれ、公務員以外の仕事の楽しさに触れました。
3年後、希望して生活支援課に異動しました。生活保護の担当者に社会福祉士がおらず、「社会福祉士の資格を持っています」と申し出たことが決め手となって、生活保護ケースワーカーに。「資格を取得していてよかった」と振り返ります。業務を通じて、生活困窮者支援の意義を感じました。
桃大の先輩と起業
商工業者支援や創業支援を通じて経営感覚を身につけ、その後生活支援課で生活保護の業務をしていた頃、社会福祉学科の先輩である三林さんから生活困窮者などの住宅確保を支援する一般社団法人Social Reform(ソーシャル・リフォーム、和歌山市)の起業に誘われました。生駒市役所では副業が認められていたので、同法人の役員として参加することになりました。土日や有給休暇を利用して、母子父子世帯や障がい者、高齢者、DV(ドメスティックバイオレンス)被害者、刑務所出所者など、賃貸住宅を借りることが難しい人たちの住まい確保を支援する仕事に取り組み始めました。
生駒市役所で5年間勤めた後、福祉の知識を更に深めるため高石市社会福祉協議会への転職を経て、Social Reformの専業に就きました。有難いことに退職時は、貴重な人材として慰留されましたが、最後は「応援しているよ」と快く送り出してもらえました。
社会福祉学科の先輩で、共に社会福祉士でもある三林さん(左)と起業した。
いまでは、スタッフで後輩の花房さんを含めた「3世代」で事業に取り組んでいる。
三林さんとの出会いは学生時代。
岸和田市社協でアルバイトをしていた際、三林さんは社協の職員だった。
3つの仕事で福祉に貢献
Social Reformは和歌山県内を対象に、行政等から紹介された住宅確保が難しい人の住宅支援に取り組んでいます。住宅支援が必要な方を民間賃貸住宅で受け入れてもらうためには、大家と直接対話し、理解を得ることが不可欠です。しかし、居住支援法人という立場だけでは、大家さんと継続的・直接的につながることには限界があるという課題がありました。
そういった現状の課題を解決するには、私たちが自ら不動産仲介業を営むのが合理的だと考え、合同会社SRを2025年4月に設立しました。社団法人は先輩の三林が代表、合同会社は私が代表を務めています。
実は私自身、生駒市役所入職後に奈良県内の古い民家を購入、自らリフォームをして賃貸する大家さんを始めていました。SRを立ち上げるにあたっては、宅建(宅地建物取引士)の資格も取得。現在では、弊社がアパートや民家を購入・改修し、賃貸住宅として提供する取り組みも行っています。特に、一人暮らしに挑戦してみたい方や、他の民間賃貸住宅では受け入れが難しい方を対象とし、住まいへのハードルをできるだけ低くする「ファーストステップ」としての住まい提供を意識しています。
また、今後の展開として、「一人暮らしに寂しさを感じる方向けのシェアハウス」「刑務所出所者の再犯防止や再出発を支援するための一時的な住まいの提供」なども企画・検討しており、住まいを起点とした多様な生活再建の選択肢を地域の中に増やしていきたいと考えています。
また、私や三林が持つ社会福祉士の資格は、判断能力の低下などにより財産管理に支援が必要な方について、家庭裁判所の選任を受け成年後見人として関わることもできます。行政からの補助金や成年後見業に加えて、仲介手数料、火災保険・保証会社の代理店など収入源の多角化を図ることで、安定した収入を確保しています。
一方で、私は個人として和歌山県と岸和田市でスクールソーシャルワーカーを務めています。いじめなどの問題を第三者の立場で把握し、学校の教員などに対応を助言します。法律(いじめ防止対策推進法等)の定義を踏まえた事実の把握、対処方法を一人で考える難しい仕事で自主的に学ぶことが必要ですが、成長していく子どもたちを福祉の視点でサポートするやりがいを感じています。
大学での学びや市役所・社協での勤務経験があったから、見えた、気づくことができた「現代社会の課題」。
次は、その「課題」ひとつひとつを解決していくことが北口さんの目標だ。
理論化に挑戦へ
現在、和歌山県海南市の8DKの建物を取得し、1階を地域の交流拠点、2階をシェアハウスに改装する計画を進めています。「独立したいが、いきなり一人暮らしするのは寂しい」という方などに利用してもらうことを想定しており、さまざまなアイデアの具体化に取り組んでいます。
自分が目指すものは福祉か経営か。ずっと悩んでいたことが、様々な経験を経て一本の線につながってきた実感があります。そんなやりがいあって楽しい毎日ですが今、さらに新しい挑戦を計画しています。
市役所に勤務しているときは、困難を抱えている人が生活保護などの支援制度を利用すると考えていましたが、現場で困窮者支援に取り組む中で、制度と実態にギャップがあり支援制度からこぼれ落ちてしまう人、制度に頼ることが出来ない困窮者が少なからず存在すると気づきました。次第に制度の不備や、制度があってもなお頼れない理由、頼れる状態をどうつくるかを言語化・理論化したいと考えるようになり、大学院(経済学研究科)で学ぶことにしました。経済学を学び、それを福祉の現場にフィードバックし、さらには将来、福祉についても大学院で学びたいと思っています。
自らの経験を、後輩に伝えることも大切にしている北口さん。
ゼミの指導教員でもある南先生の依頼で授業に登壇した際には、
仕事の話だけでなく、大学時代に得た教訓を真っすぐに伝える。
【一般社団法人 Social Reform】
https://socialreform.sakura.ne.jp/
(※この内容は2026年2月取材時のものです。)