生徒に真正面から向き合う恩師のような教員を目指して国際教養学部で英語教員の免許を取得した山口颯人さんは、大阪府の教員採用試験を突破し、2026年4月から大阪府内の中学校で教員生活を始めます。教員を目指すようになったきっかけや教員採用試験合格に結びついた大学での学び、教え子に伝えたい夢などについて語ってもらいました。

「お前たちを変える!」恩師との出会い

私が通っていた中学校は当時、規律や学習環境に課題を抱えていました。そんな中学2年生の時、他校から転任してきたのが今井先生でした。最初の学年集会で、先生が「お前たちを変える!」と高らかに宣言された時の強烈なインパクトは、今でも忘れられません。40歳代半ばで働き盛りだった今井先生は、私たちの将来を第一に考え、時に厳しく指導してくださいました。先生のおかげで、学校の雰囲気も少しずつ変わっていきました。

恩師の今井先生との出会いは、衝撃的でした。

私には3歳下の妹がいますが、彼女の代でも今井先生が学年主任を務められました。私の家は母子家庭で、母は私たちを立派に育てようと厳しく接していましたが、その反動からか妹は次第に荒れていきました。そんな妹はある時、母と共に今井先生に呼び出され、三者面談が行われました。その席で先生は、「お母さん、(娘さんを)殴ってもいいですか」とおっしゃったのです。一見すると体罰を連想させ、信頼関係がなければ職を失うリスクすらある言葉ですが、それは先生が妹のことを思い、本気でぶつかろうとしてくださっている証でした。

「最初の衝撃」のあとも、今井先生は常に生徒と正面から向かい合ってくれた。

その後、先生はガンを患い余命宣告を受けましたが、それでも生徒にぶつかっていく熱情溢れる指導スタイルは変わりませんでした。その姿を見て、私は「こんな先生になりたい」と教員への志を強くしました。ちなみに、妹もその後落ち着き、今は幼稚園教諭を目指して大学で学んでいます。

卒業式の日に撮った、今井先生との写真。
衝撃の出会いから2年。熱く指導してくださった先生の姿は、
その後の山口さんの「生き方」に大きく影響を与えた。

「桃山祭」に捧げた情熱

私は英語が得意だったこともあり、英語教員を目指して国際教養学部に入学しました。実は第一志望の大学ではありませんでしたが、空手教室の先輩が桃大のサイトで「THE 桃大人」として紹介されているのを見て、「自分も将来取り上げてもらえるよう、何にでも挑戦しよう」と前向きな気持ちでスタートを切りました。
入学後、私が真っ先に飛び込んだのは、約150人が所属する「桃山祭」実行委員会です。1年次は一委員として経験を積み、2年次には事務局長、そして3年次には実行委員長に立候補し、選任していただきました。 私は新しいことに挑戦するのが好きなので、実行委員長として「移動動物園」や「VR(バーチャルリアリティ)スポーツ」といった新しい催しを企画しました。大学当局との折衝や他の委員の協力を取り付けるのは大変でしたが、来場者数目標をクリアしたい一心で必死に汗を流しました。

桃山祭(学園祭)に捧げた3年間。
3年目には、150名の大所帯を率いる実行委員長として、新しい企画に取り組んだ。(前列中央:山口さん)

教職センターの手厚いサポートと猛勉強

3年次まで桃山祭に全力投球していたため、教員採用試験の準備は周りから出遅れていました。4年次の春、教職センターから届いた講座案内のメールを見て、本格的にエンジンをかけました。大学受験の経験から一人で勉強することには慣れていましたが、出遅れを取り戻すために教職センターの指導を仰ぎながら、過去問と復習を繰り返す日々を送りました。図書館にこもって猛勉強を続けましたが、かつての受験勉強の蓄積が役立っていると実感できました。
教員採用の2次試験では、専門教科の試験に加えて面接や模擬授業が行われます。特に模擬授業は、採点官の前で15分間の授業を行うという教育実習とは異なる形式で、非常に緊張します。私は教職センターの先生に何度も模擬授業を見ていただき、アドバイスを受けながら対策を繰り返しました。その結果、無事に採用を勝ち取ることができました。

教職センターの上野先生と。
出遅れを挽回できたのは、上野先生がいつも支えてくださったおかげです。

桃大で実感した「英語の楽しさ」を生徒たちへ

英語に苦手意識を持つ中学生は多いです。教育実習中も、生徒から「英語は嫌いやねん」と直接言われたことがありました。私は、留学生も多く在籍する桃大で「英語を使う楽しさ」を体感してきました。受講生の8割が留学生という授業も珍しくなく、日本人とは異なる考え方に触れるのは本当に刺激的でした。

生徒たちが英語を嫌いになる前に、その楽しさを伝えたい。だからこそ、私は中学校の教員という道を選びました。病を抱えながらも今なお母校で頑張っておられる今井先生のように、生徒に正面から向き合い、生徒が世界と触れるきっかけを作れるような教師を目指します。不安もありますが、それ以上に生徒たちに会えることに今からワクワクしています。

恩師の今井先生は教育実習の際、「ようやく追いついてきたか!」と心から喜んでくれた。
春からは、同じ中学校の教員として教壇に立つ。
目標はもちろん、「生徒と正面から向かい合う」今井先生だ。


(※この内容は2026年2月取材時のものです。)

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