- 名前
- 金 カラク
- 学部
- 社会学部 社会福祉学科※ 2020年卒業
- 所属
- みなみのばたの会(代表)
在日韓国人4世の金カラクさんは言葉の壁に苦しむ外国人の子どもたちを支援するボランティア活動に高校時代から取り組んできました。社会福祉を学べる大学として桃山学院大学 社会学部 社会福祉学科※に入学しました。在学中も学内外のボランティア活動に力を入れた金さんは桃大卒業後の現在、大阪市教育委員会人権教育グループのコーディネーターと子ども支援のボランティア活動の二本立てで、外国人や障がい者なども住みやすい地域づくりに取り組んでいます。
高校時代に福祉への関心高める
金さんは小中高校を民族学校で学びました。自身は日本語がネイティブで、言葉の壁に直面した在日1世、2世の抱える困難に直接触れる機会は多くありませんでしたが、授業や周囲の人々の話を通じて在日韓国人の歴史や歩みに触れてきました。そうした経験や自身の生活のなかで、社会の中で困難を抱える人々の存在に関心を持つようになり、福祉分野への思いを深めていきました。
高校1~2年生のころからは、大阪市中央区島之内地区で外国にルーツを持つ子どもたちを支援する活動に取り組みました。島之内地区は飲食店などが集中する繁華街で、接客業などに従事する外国人家庭の子どもも多く暮らしています。ボランティアでは、そうした子どもたちに日本語を教える活動を行っていました。
在日4世である自身の立場や周囲の状況から、
「困難を抱える人たちを支えたい」と、福祉に関心を持つようになりました。
「一生懸命」でいられる場所
進学先について考えるなかで、桃山学院大学 社会学部 社会福祉学科※を見つけました。
桃大の社会福祉学科※には、やりたい活動や授業に打ち込む金さんを受け入れてくれる雰囲気のある場所でした。ボランティア活動に打ち込む日々を過ごす一方で、授業の成績は必ずしも良くはありませんでしたが、恩師からは「一生懸命取り組んでいることがあれば、それでいい」と、学生一人ひとりの挑戦を尊重する姿勢で見守ってもらったそうです。社会福祉士資格を取得するための実習では「地域のなかでも、特に課題の見えにくい子どもたちを支援したい」との思いから、NPOでの実習を選択。こうした経験と、桃大に根づく「多様性を受け入れ、挑戦を後押しする文化」が、社会と向き合い行動する姿勢を育み、今の私の活動の原点となっています。
困難を克服するのではなく「育ちあう社会」を
桃大在学期間中は、児童養護施設の子どもたちをサポートするボランティアサークル「みらくるみん」にも友人と参加していました。施設の子どもたちを学園祭に招待したり、いっしょにキャンプへ行くなどの活動に取り組みました。
同時に学外での活動も幅を広げました。知的障がい者や児童の発達支援をする大阪市生野区のNPO法人でのアルバイトや、島之内での日本語指導も続けていました。そうした活動がきっかけとなり、現在の活動に取り組む考え方にたどり着きました。
島之内での外国出身の子どもたちに対する日本語の指導をするなかで「マイノリティ=課題を持った存在」と考えて支援することは、彼らに対して「日本語が出来ないこと=いけないこと」というメッセージを無意識に伝えているのと同じことだと気がついたそうです。それ以降、金さんは「違ったままでいいやん」と、多様性を尊重する活動に力を入れるようになります。
桃大の社会福祉学科※へ入学後、
福祉について学びながら学内外で活動の範囲を広げていった金さん。
「現場での活動は、私に様々な気づきを与えてくれました」
介入が早すぎる
卒業後はアルバイトでお世話になっていたNPO法人に就職し、知的障がい者や児童の発達支援、放課後デイサービスなどに取り組みました。スタッフの多くは多様性の価値、重要性を深く理解している方たちで、入職直後は「あなたは、(子どもたちへの)介入が早すぎる」とよく指摘されたそうです。子ども同士のいさかいなどをすぐに間に入って仲裁したり言い聞かせたりするのではなく、子ども自らが解決し関係を築いていく過程を見守ることの大切さを説かれました。ある先輩からは「大人の『良かれ』は、子どもの『迷惑』」ということを教えてもらい、「私にとっては一生のテーマです」と、金さんは大きな学びを得ました。
その後、大阪市教育委員会のコーディネーター職に転職、現在は教員や学校で活動する有償ボランティアなどの研修、教材づくりに取り組んでいます。外国人関係が主な担当ですが、「外国人のことだけでは十分でなく、障がい者や子どもの権利なども包括的に理解して取り組むことが必要です」と、社会福祉学科※で学んだ知識やボランティア活動で考えてきたことを生かし、総合力が求められるいまの仕事に取り組んでいます。
NPOを立ち上げへ
外国人の子どもに「頑張って日本語を覚えよう」と教える一方で、「日本語を上手に話せないことへの重荷や苦しさを受け止める場も必要ではないか」と感じたことが、活動を考えるきっかけになりました。同時に、外国にルーツを持つ子どもに限らず、地域には障がいのある子どもや不登校の子どもなど、さまざまな背景を持つ子どもたちがいることにも気づきました。そこで、属性に関わらず多様な子どもたちが「違っていい」と思える場をつくりたい——そんな思いから、活動に取り組み始めました。
「私自身も外国籍。普段から『人と違っていい』と思えることで、生きやすさを感じている。それを、子どもたちにも伝えたい」と考え、子どもたちが中心となって活動する「みなみのばたの会」を2年前に始めました。「ばた」はフィリピンのタガログ語で「子ども」という意味です。
子どもたちが自由に遊ぶプレイパークや山登り、子ども食堂などを行っています。「子どもたちが主役」を掲げているため、子ども食堂ではメニューの考案や調理も子どもたち自身が担当。また、活動では「(子どもたちが)失敗する機会を奪わない」ことを大切にしています。
1人で始めた活動でしたが、「子どもが主体の取り組みをしたい」と考える人たちが少しずつ集まり、現在では約30人のボランティアスタッフが「子どもたちが今を幸せに、生き生き過ごす」という目標のもと活動しています。
2026年度中にはこの活動をNPO法人化する予定です。桃大という多様性を大切にする環境のなかで学びを深めた金さんは、今後も様々な困難を抱える子どもたちが育ちあう活動を発展させていきます。
様々な背景を持つ子どもたち一人ひとりに、
「みんな違っていいんだよ」
そう伝える場をこれからも大切にしていきたいです。
【みなみのばたの会】
https://minaminobatanokai.wixsite.com/bata-org
(この内容は2026年4月取材時のものです。)
※2027年4月、学科名称変更構想中(現:ソーシャルデザイン学科)