図書館の聖書Bible

  • HOME
  • 図書館の聖書

リンディスファーン福音書  Lindisfarne Gospels 〈完全復刻版〉

     8世紀前半にイギリスでつくられたラテン語聖書です。
    イギリス北部、リンディスファーン島の修道院の司教エアドフリス(在位698-721)が、687年に当地で没した聖カスパートをたたたえて制作した彩色写本です。 原本は、聖ヒエロニムスにより4世紀末に翻訳されたラテン語聖書(ウルガタ)が用いられています。


      本館所蔵レプリカ版聖書



      10世紀末には、首席司祭アルドレッドがラテン語本文の行間に古期英語の逐語訳を書き加えました。 この書き込みは、ラテン語福音書の最古の英語訳であり、この福音書の価値をさらに高いものにしています。
      また、司教エアドフリスは写字だけではなく、ケルト様式の見事な彩色も施しました。豪華多彩な装飾は、目を見張るものがあり、「ケルズの書」「ダロウの書」とともに、ケルトの三大彩飾写本に数えられています。長い歴史のあいだに所有も転々としましたが、1703年ロバート・コットン卿の遺族が国へ寄贈し、現在は英国図書館が所蔵しています。 本館が所蔵のものは、1852年ヴィクトリア時代の金細工師が再現した装幀を基にしたレプリカ版(ヴィクトリア朝装幀本)です。


      リンディスファーン福音書

       
      なお、リンディスファーン福音書にはつぎのような伝説が残されています。
      リンディスファーンは、875年にデーン人の侵略を受け、修道士たちがアイルランドへ逃れようとしたときに、この福音書は 波にさらわれて海中に沈んでしまいました。これを聖カスパートの怒りと覚えた修道士たちは、改悛して引き返すと、 福音書がイングランドの海岸に打ち上げられているのが見つかったと伝えられています。

グーテンベルク聖書(四十二行聖書)〈複製〉

原本は、1455年刊。
ドイツ、マインツの生まれのヨハン・グーテンベルク(1397-1468、活版印刷術の発明者)により着手され、 フスト、シェファーの両名により完成されました。現存するものは、ベラム(子牛皮紙)刷り12部、紙刷36部。 15世紀に印刷刊行された本はインキュナブラ(揺籃期本)といって、珍重されています。 

図書館所蔵本は、原本当時の姿を忠実に再現した複製ですが、当時の技術水準や文化が窺われます。 樫板を芯にした総皮装丁、平(表紙)は15世紀当時のマインツの空押原装丁(表紙の部分に金版を使用して、 箔類を使わず、文字や意匠を押圧する方法)。
 
頭文字・縁・飾り(ボーダー)は裏から押して、表は浮き上がっています。 
豊富な色彩を使った装飾が見事です。文字は、ラテン語のゴシック書体の傑作と評価が高い。 印刷術の発明は、火薬、羅針盤と並ぶ三大発明で、後の宗教改革やルネサンス、科学革命を促しました。
 
 The British Library(英国図書館)が所蔵するグーテンベルク聖書がインターネットで公開されています。

ラテン語聖書 Biblia Latina  

コーベルガー印行 ニュールンベルク刊 第3版(1478年4月)

 ラテン語聖書
印刷術が草創期の15世紀、ニュールンベルクの印刷出版業者であったアントン・コーベルガー(1445?-1513)は、シェーデルの「ニュールンベルク年代記」(1478年4月)など220点にも及ぶ書籍を出版しました。
 
コーベルガーは、1483年に木版画を挿画したドイツ語聖書を印刷しますが、それ以前の出版はすべてラテン語聖書でした。

ラテン語聖書の初版は1475年11月16日で、第3版の本書は1478年4月18日に印刷されています。
テキストには、バーゼルのBernhard Richelによって印刷されたラテン語聖書(ウルガタ)が使われています。

ダブス・プレス版『欽定訳聖書』(通称:ダブス聖書)

The English Bible : containing the Old Testament & the New 5 vols. Cambridge Hammersmith: Doves Press, 1903-05 34cm

世界三大美書のひとつで、ケルムスコット・プレス版『チョーサー著作集』、 アシェンデン・プレス版『ダンテ全集』と並び印刷史に名を残しています。 

英国では19世紀中頃まで、美術工芸が衰退し印刷におけるデザインの水準も衰退していました。そのとき、印刷業界の外からプライベート・プレス〔私家版印刷所〕運動が革命的に生まれました。この運動はその発端と推進力の大部分を、ウィリアム・モリスの力に負っています。

ダブス・プレスは三大プライベート・プレス(私家版印刷工房)の一つです。コブデン=サンダーソンとサー・エマリー・ウォーカーにより1900年に創設されました。三大プライベート・プレスの一つであるウィリアム・モリスのケルムスコット・プレスのものとは対照的に版画(イラスト)・オーナメント(飾り文字)は一切使用せず、改行を避けてページ全面に絶妙なバランスで活字を配置しているのが特長とされています。彩色された頭文字(朱色)が少し入っているのを除けば、装飾はまったくなく、極力抑制された点に清素な美が感じられます。完全無欠な印刷作業、活字の美しさと完璧なデザインとページのバランスが高く評価されています。表紙はべラムで装丁されていますが本紙は和紙に似た良質の手漉きで、背表紙には標題が金粉で小さく印刷されています。

 ダブス・プレス版『欽定訳聖書』
 ▼参考文献:アラン・G・トマス 小野悦子訳『美しい書物の話 : 中世の彩飾写本からウィリアム・モリスまで』晶文社 1997 第4章プライヴェート・プレスの時代(P.157~187)に詳細な記述があります。