〜卒業生教員からのメッセージ

2011年度 「卒業生教育関係者の集い」

2011年11月20日(日)に行われた「第8回 ホームカミングデー」の午後2時から4時にかけて、ペテロ館第6・7会議室にて、教職課程委員会主催の2011年度「第12回卒業生教育関係者の集い」が開催されました。この集いは、教職にかかわる卒業生と教職課程履修学生との貴重な交流の場として回を重ねてきたものです。

2011年度のホームカミングデーも大学祭最終日に実施が決まったため、履修学生の参加が難しくなることが予想されました。そこで、教職課程の授業時に積極的に「集い」への参加を呼びかけた結果、9名の履修学生(在学生および科目等履修生)が参集し、卒業生とそのご家族15名、教職員5名を加えた計29名で、活発な意見交換を行うことができました。

第1部の「卒業生による講演」では、阪口要氏(姫路市立香寺中学校)と北野正浩氏(大阪府教育委員会)から約30分ずつお話をいただきました。 引き続き、第2部「卒業生と教職課程履修学生との懇談」では、卒業生と履修学生が二つのグループに分かれ、それぞれ阪口氏と北野氏の司会により活発な議論を行いました。茶菓子をつまみながら賑やかな懇談が続いた後で、最後の全体会へ移りました。各グループから選出された学生代表1名が、グループ討議の内容についてまとめて報告を行いました。今回の集いも、参加した履修学生にとっては大変有意義な情報交換の場となったようです。卒業生からいただいた数々のアドバイスを、これからの学習に十分活かしていってほしいと願っています。

次に、当日の集いで履修学生たちにエールを送ってくださった卒業生によるメッセージの一部をご紹介します。
 

63E 竹原 正浩 氏(豊中市立第八中学校)

「最大の生徒指導力は教科指導力」

教員を定年退職して7年になります。今も非常勤講師で中学生相手に社会科の授業をしています。 教職にとって何よりも大切なのは授業です。授業で生徒から信頼を得ることは、学校の荒れを防ぐ力の一つになります。専門教科だけでなく、広く一般教養と関連づけた知識の吸収と教材の構成にはそれが必要です。また、最近は保護者対応能力が問われるほど現実は厳しい。採用試験合格が難しい社会科ですが、正式採用までとにかく現場を経験することです。できれば常勤講師がベストですが、非常勤でも支援でもいいから現場を通して学ぶことです。

 

69S 戸江 雅一 氏(岸和田市立教育研究所)

団塊の世代の退職に伴う大量採用の時代で、教職希望者はこのチャンスを生かしてほしい。
教育委員会が「即戦力」を求めて独自の講習会など開いているので活用してほしい。
 「教師は授業で勝負する」といわれ「学習指導」が最も大切なので教育的力量を高めてほしい。
ただ最近は、保護者対応など含めた「生徒指導」が重要で人間関係能力を高める訓練が必要。
社会体験や社会奉仕を通じて豊かな社会性や人間性を育てること。「教育は人なり」人物重視の採用となりつつある。
中学校は「部活指導」も大切な要素であり、自己アピールできるものを育ててほしい。

 

71E 山田 耕治 氏(鶴見商業高等学校)

「後輩の諸君に期待」
教員を目指す皆さんへ、皆さんの情熱に敬意を表します。
私は大阪市立の高等学校で37年間勤めました。大阪市が持つ高等学校は昔大阪府との取り決めにより実業系高校が主ですので、私も工業高校、商業高校、さらには定時制高校と勤務しました。
若い時に先輩から教えられたのが、「教師にはいろいろな仕事がある。しかし生徒を前に勝負しなければならないのは教科指導の力だ。専門科目は決して人に負けない知識をもっておけ。生徒に質問されたら、知らんというな」という言葉でした。
採用は年々厳しくなってきますが、いざ教壇に立つときが来たときに、戸惑わないようにしっかりと勉強しておいてください。若い皆さんに期待します。

 

86S 北野 正浩 氏(大阪府教育委員会)

現在わたしは、大阪府にある児童自立支援施設にて勤務して二年が経とうとしております。
立場上は大阪府教育委員会の指導主事になりますが、兼任と言うことで現在の職場で働いております(授業やホームルーム・クラブ活動等)。
児童自立支援施設????おそらくおわかりになりにくい名称かもしれません。一昔前の言い方をすれば「教護院」といった方がわかりやすいかもしれません。大部分が大阪府内の各地域から入所してきた児童達が男女別の寮にて、それぞれ集団生活をしている施設であります。教護院と呼ばれている時代では、ほとんどが非行等で入所をしていました。現在は家庭環境も考慮され、非行等以外でも入所してくる児童もいますが・・・大部分は非行等の問題行動が原因となっております。各地域ではそれなりにやんちゃ小僧・やんちゃ娘で通ってきた児童です。その児童達が各寮に分かれて集団生活の中で色々なことを学んでいます。朝起きると布団の整理、身支度を整え分担(寮の日課の1つで朝・夕に一人ひとりに割り当てられた掃除場所・食事の準備などをすること)があり、その後朝ご飯になります。その後グランド朝礼があり、夏場はラジオ体操・冬場はグランド三周のマラソンを行いその後、月・火・木・金曜日は本館(施設内の学校)での5時間授業、水曜日は4時間授業で午後からは児童全員で施設内の草木などをカマできれいにする公共作業を行っています。公共作業以外でも各寮毎で作業指導として児童みんなで取り組んでいます。土日は寮毎で違いはあるもののゆっくりしたり、みんなで買い物に行ったり、映画に行ったりと過ごしています。

寮においては、寮長先生・教母さんがいて、それぞれが父親・母親代わりとなっています。
入所したての児童のほとんどは、自分から好んできた場所ではないので・・・・(入所の方法としては大きく2種類あります。一つは家庭裁判所による審判・送致されるケース・もう一つは「子ども家庭センター」を通して、保護者の承諾を得ての入所)・・・・嫌そうにしていますし、反抗的な三角のような目をしています。しかし、何週間か寮で生活をしていく内に、三角が四角に変わり、何ヶ月か経った頃には丸い目になっている児童がほとんどです。なぜそうなるのかわたしなりに色々考えてみました。1つの結論としては、施設では毎日、朝・昼・晩と三食をきちんと食することができます。それが非常に大きい要因ではないかと一人納得している今日この頃であります。本当のことは児童が一番分かっていることですが、そのようにして施設で生活する児童達は日々生きる力を学びながら、自立を目指してがんばっているところです。わたし自身も日々元気な子ども達と共に野山を走り回って楽しんでおります。

 

86S 小野 博健 氏(学習塾役員・大学教員)

「型にはまるな!!型は創れ!!」

 最近の皆さんの世代を見ていると、私たちの世代はもどかしくなります。もっと自分に自信を持ってほしい、もっと失敗を積み重ねてほしい、もっと何でも成功して自信をもってほしい、本当に思います。
日頃は他人を気にしていないくせに他人の目を気にする、だから目立ちたがらない。やって失敗したことがないから活かせる知恵がない、だから立ち止まる、成功したことがないから次のことが見えない…では、子どもたちに何を教えるのですか。
講義で学んだり、机上で考える、想像するだけでは「教育」者としては成長しません。「あかんかも」と尻込みするよりもやってみること、成功すれば儲けもの、失敗もきっと次にいかせることが見つかります。若い時からいろいろ考えることが大切で、こぢんまりと「型」にはまってしまった先生なんて魅力はないです。
私は大学時代キャンプ場でカウンセラーに明け暮れました。夏の林間学校の季節はキャンプ場からTシャツ、ジャージで通いました。先輩から、職員の方々からとにかくやってみろ、とことん失敗して先輩に助けてもらえ、子どもの表情から学べ!と叱咤され、教えるだけではなく自分も「体験」を「共感」して「実感」する、それらを活かして子どもたちに行動の道標を立ててやる(押しつけるのではなく、あくまでも考えて行動するのは子ども・・・これが解かってない先生がどれだけ多いか)ことこそが教えることの原点だと知りました。自分が実感しているから、自分の知識だけでなく心からの言葉で伝えることができる、もっと実感したいから、自分で何かをやってみたくなる、押しつけるのではなく、共に考えてやってみるのです。そうしていくと他と同じだったら面白くないので、やんちゃになる…一人で考えるだけではなく周りも一緒にやってみようとする、まさに大きなガキ大将、の繰り返しです。その行動パターンは今も変わらないと思っていますし、変わってしまったら私は教壇から降りるつもりです。引退するまで「やんちゃなガキ大将」です。
今でも探究・挑戦・創造が自分の原動力です。立ち止まるのは安心できるのかもしれませんが、「老いて」いくような気がして、先生としてそこまでのような気がしています。それなり以上に塾の世界で評価をもらっても、そこに酔っているといつかは老いぼれて消えてしまいます。公立・私立、塾の先生も本当は競争の世界なんです。私は若い先生の高く厚い壁でありたいので、まだまだ貪欲に若さと情熱を持って、時間の許す限り、子どもや教え子とぶつかり合っていこうと思います。
 後輩のみなさん、もっと「やって」みましょう、考えただけで「あかん」では何もはじまりません。やって「あかん」かった「ボツ」ネタは知恵になり、武器になります。 前向きな失敗は教師の糧である・・・ではないでしょうか。

 

小野 依子 氏(交野市立第四中学校)

「3割→4割→4割」さて、何でしょう

 私は、3年前から貴学出身の夫とともにホームカミングデーに参加させていただいています。教えている教科は国語です。授業で伝えきることは教員の能力や技量のうちかもしれませんが、授業が終わっても生徒が文章を自分なりに味わったり、物語の背景を教わるのではなく感じようとしてみたり、知識欲を駆り立てて自主勉強につなげたりできるように、国語通信を発行しています。
勤めている中学校では実力テストを除くと、一学期中間・期末試験、二学期中間・期末試験、学年末試験、の5回の定期試験に夏休み明け宿題テストを加えた合計6回の試験を実施します。
国語通信の話題として、今年度の宿題テストから、読解問題、文法や四字熟語などの知識問題、漢字問題の平均得点率を出すようにしました。題にも挙げた「3割→4割→4割」は、宿題テスト→二学期中間試験→二学期期末試験の平均得点率の推移ですが、読解・知識・漢字のどの分野のものだと思いますか。一般に、国語は「勉強方法がよくわからない」と言われることの多い教科で、「わからない分野」の代表として文法や読解問題が挙がることが多いです。だから、これは文法か読解問題のどちらかかな、と思う人も多いでしょう。でも、実はこの「3割→4割→4割」は漢字問題の平均得点率の推移なのです。ちなみに、読解問題は「6割→5割→6割」、知識問題は「4割→6割→5割」と平均得点率は推移しました。
母集団が少なく、試験の範囲や難易度にも影響されるため、参考程度の数字かもしれませんが、最初にデータ化した宿題テストの「読解・6割、知識・4割、漢字・3割」という平均得点率は私にとっても予想外でした。宿題テストという特性上、読解問題は実力テストに近いので理解はしにくいかもしれない、夏休み明けなので一学期に勉強した文法分野は忘れているかもしれない、という予想を大きく覆し、覚えていたら絶対に答えられて点数に直結する漢字問題の平均得点率が他のどの分野よりも低くそれも3割しか取れていなかったからです。
漢字は何度も書けば必ず覚えられるけれども、何度も書かなければ覚えられないものです。そして人間は誰でも単調でしんどい作業はあまり好きではありません。最近は特にしんどいことに体当たりして取り組むことを「かっこ悪い」と、避けてきた大人と大人から避けさせられている子どもが増えている傾向が強いのではないでしょうか。でも、単調でしんどいことに耐えられる力を育て、子供の将来を花開かせることが私たち教員に求められていることだと思います。
宿題テストの結果から、書いたら絶対に覚えられる漢字の得点率の低さはもったいないと言うことと、5回書いても覚えられなかったら10回書け、10回書いても無理だったら20回書け、絶対に覚えられると言い続けた成果が今は少し見え始め、試験勉強として漢字を何度もノートに書いている姿が増えました。生徒のことを思い、伸びるためには何をすればいいか具体的に言葉で表し続ければいつかは絶対に伝わります。何ごとにも要領をかまさずに泥臭く体当たりをする体験をとにかくしてください。その経験が、生徒に教科を問わず勉強や生き方を教えることにつながることと確信しています。

 

99L 境 千鶴 氏(岸和田市立中学校)

「教職を目指す後輩の皆さんへ」

 私は卒業してから20代の多くを学習塾で勤務しました。30代になって今年は講師として公立中学校で働いています。そして今年、やっと大阪府教員採用試験(中学校英語科)に合格することができました。
教職を目指すにあたり、まず学生の間にいろんな経験をしてほしいなと思います。アルバイトでも何でもいいです。「自分は学生のときこんなことをがんばった」と自信を持って言えることを1つでも増やしてもらえたら、面接のときに役に立つと思います。特に、ボランティアの経験は学生のうちにできたら大きいですよ。面接個票(自己アピールシートみたいなもの)に「ボランティアの経験」を書く欄があります。社会人になるとなかなかボランティア活動に関わる機会が少なくなるので、学生のうちにされることをお勧めします。
それから、公立学校の教員を目指すのであれば、すぐに試験に合格できなかったときは講師として教育現場に携わるのが近道なのかな、と感じます。面接では具体的な場面を多く問われます。そのときの場面や教師の動きがイメージできるのとできないのとで大きな差が出てきます。実際に私は、塾で勤務しているときはさっぱりイメージできず不合格、イメージできた今年は合格できたので。(たまたまかもしれませんが…)
最後に、1人でも多くの桃大教職課程出身者が、今後教育現場で活躍されるよう、心から応援しています。

  

 

 

 

 

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