研究活動共同研究プロジェクトおよび研究成果

プロジェクト活動概要

2025年度 共同研究プロジェクト活動概要

共同研究プロジェクトの制度は、1975年に学際的研究または専門を異にする研究者の共同研究を支援するために設置されました。今年度は下記のプロジェクトが活動を行います。

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  • 研究テーマ

    障害者差別解消法施行後の大学における合理的配慮と学生支援(Ⅱ)

  • 英文テーマ

    Reasonable Accommodation and Support for College Students after the Disability Discrimination Act(Ⅱ)

  • 研究期間

    2023年4月~2026年3月(3ヶ年)

研究スタッフ、研究課題および 役割分担

代表者
安原 佳子 社会学部教授
全体総括、発達障がいのある学生支援を中心に研究会の企画
小松 佐穂子社会学部准教授
研究会の企画(教育心理学を中心に)及び取りまとめ
篠原 千佳 社会学部准教授
国内外の大学に関する情報収集、研究会への関与
信夫 千佳子 経営学部教授
障がい者雇用を中心に研究会の企画、情報収集
金澤 ますみ 社会学部准教授
スクールソーシャルワークを中心に研究会の企画、情報収集
栄 セツコ 社会学部教授
メンタルヘルスを中心に研究会の企画、情報収集
辻井 誠人 社会学部教授
精神障がいのある学生支援を中心に研究会の企画、情報収集
清水 美穗 本学非常勤講師
スクールソーシャルワークの視点からの情報収集、研究会への関与
長谷川 陽一 人間教育学部教授
障がい学生支援の高大連携を中心に研究会の企画、情報収集
森田 政恒 本学教務課課長
教務上の支援の検討
尾崎 博久 本学学生支援課課長
学生生活上の支援の検討
永嶺 敦史 本学キャリアセンター事務課課長
就職活動上の支援の検討

研究の目的・特色

 「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(以下、障害者差別解消法)施行後、行政機関のみならず大学を含む教育機関や事業所は、配慮を申請する障がい者に対する合理的配慮を求められている。大学においても、増加する障がい学生に対して合理的配慮とそれに伴う支援提供を迫られてきた。常に大学として合理的配慮への理解を含む支援体制があることが前提となった状態で、支援システムの構築および全学生と教職員への啓蒙が大きな課題となっていた。前回(2020~22年度)の研究で我々は、その支援システムの構築開始状況がうかがえる国内データを示すことができた。しかし、コロナ禍で大学や関係機関・企業等の訪問やそれによる情報収集が不十分であったため、本研究では、障がいのある学生に対する支援について、現状を把握するために大学等を訪問し、その関係者・専門家より直接実情に関する情報を収集することを目的とする。学際的な視野で分析を行い、効果的な支援システムを検討したい。本研究の特色としては、障がいのある学生支援について、様々な専門性から多角的に研究することである。さらに、新たな課題を見つけ出し、課題解決に向けての議論を通じて、現実的な支援システムを提案し、学生支援の向上に寄与したい。
 

研究プログラム (計画・スケジュール)

 本研究は3か年を計画している。
・2023年度 研究会(事例検討会を含む)、前回(2020~22年度)の研究成果をもとに大学等の視察・情報収集
・2024年度 研究会(事例検討会を含む)、大学等の視察・情報収集の継続、分析と検討
・2025年度 研究会(事例検討会を含む、情報の整理とまとめ)、成果のまとめ
1年次は前研究成果をもとに大学での視察と更なる情報収集、2年次も継続して情報収集を行いながら情報分析と検討、3年次は情報及び課題の整理、およびそれらに基づいた学生支援システムの構築の検討をする。
なお、研究成果については、学会での報告、成果物(論文)の作成、大学現場への提言を予定している。
 

共同研究の内容および効果

 本研究では、障害者差別解消法(2016年)以後の大学における学生支援の状況に関して、外部講師も招いての研究会(共同研究メンバーを中心に障がいや学生ニーズ、支援の資源等をテーマに研究)、学外にも開放型の研究セミナー(障がいのある学生の支援に関連したテーマでのセミナー)、大学の現状調査(主に国内の大学視察、障がいのある学生の支援に関する情報収集)を通じ、教育的視点のみならず、法学、社会福祉学、社会学、経営学的な視点等幅広く分析し、新たな課題を明らかにする。その課題解決を検討することで、より現実的であり適切な支援システムを提案する。それにより、実際の本学の学生支援実践に役立つこと、また将来的には出版等を通じてその効果を発信し情報共有することで、更なる課題発見と研究効果が期待できる。

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  • 研究テーマ

    新指導要領とデータサイエンスに対応する大学教育の理論と実践

  • 英文テーマ

    Theory and practice of university education corresponding to the new teaching guidelines and data science

  • 研究期間

    2023年4月~2026年3月(3ヶ年)

研究スタッフ、研究課題および 役割分担

代表者
藤間 真 経済学部教授
全体統括、情報教育
櫻井 雄大 経済学部講師
ICT教育
井田 大輔 経済学部教授
経済学教育・初年次教育
井田 憲計 経済学部教授
経済学教育・統計教育
吉弘 憲介 経済学部教授
経済学教育
中西 啓喜 社会学部准教授
初年次教育・入試制度
萩原 久美子 社会学部教授
初年次教育
村上 あかね 社会学部准教授
初年次教育
大田 靖 経営学部教授
データサイエンス教育
森下 裕三 国際教養学部准教授
言語学教育
水谷 直樹 共通教育機構教授
データサイエンス教育
長内 遥香 共通教育機構契約教員
言語・プログラム開発検証
櫛井 亜衣 共通教育機構契約教員
言語・プログラム開発検証
鈴木 小春 共通教育機構契約教員
言語・プログラム開発検証
中村 恒彦 経営学部教授
会計学教育
井口 祐貴 法学部講師
スポーツにおけるデータサイエンス
高良 要多 本学教務課課長補佐
初年次教育

研究の目的・特色

 2025年度から大学に新入生として入ってくる世代は、情報化が急速に進展する社会の変動を受けて大きく変動した指導要領に基づいた教育を初等中等教育で受けてくることとなる。
また、国としてデータサイエンス(以下DS)などに関する人材が非常に不足していることと、それを補うための教育を大学教育を含めた国全体として目指すことが、『AI戦略2021』で宣言されている。 
これらは、大学教育の入口と出口の両面から大学教育に変化が求められていることを意味する。
そこで、我々は、大学の入口出口の変化を、その背景にある社会の変化とそれに対応した政策を踏まえながら明らかにすることを通じて大学教育がどのように変動するべきかを探求する。
この研究においては、単に大学の入口・出口のみに注目するのではなく、その背景にある社会的要求、特に関連する国の政策に注目するのが特徴である。
 
【新規申請書記載内容からの変更】
本プロジェクト申請以降、ChatGPT等の生成AIが急速に普及し、大学に限らず社会におけるICT利用に変貌をもたらしていることを踏まえ、生成AIの活用の実情と大学教育への応用も研究目的に加味する。
 

研究プログラム (計画・スケジュール)

1年目(2023年度)は、新旧学習指導要領の教育内容の変化を調査する。また大学における各学問分野のDSによる変化とそれに対応するための学内外の実践を調査する。その際、大学教育学会にて情報を収集する。さらにそれらを踏まえて本学の試行授業の実践について検討する。
2年目(2024年度)は、新学習指導要領対応初年次教育を試行的に開始し改善の必要な部分を調査する。また、DSの要素を組み込むことが可能な科目を選定して試行実践を始める。DSの要素を組み込んだ科目の連携について、社会に求められる人材という観点より研究する。
3年目は(2025年度)は、新学習指導要領対応初年次教育を本格的に展開し、中高段階での新学習指導要領の内容の定着度を確認すると同時に、科目そのものの実効性についても検証する。さらに、DSの要素を組み込んだ科目群の連携を図ることによる学生の成長についても検証する。

【新規申請書記載内容からの変更】
 データサイエンス班の主要メンバーがSDPの実務準備にエフォートを割いていることや今年に入ってからの生成AIの急速な普及に対応するため、計画が予定通り進んでいないのが正直なところである。
 しかし、共通教育機構に任期付き専任教員として着任され、本プロジェクトにも参加されるお二人(水谷教授・三井准教授)がまさにこのプロジェクトの目指すところを専門とされているので、お二人の専門性を最大限に生かすことによって、ビハインドを取り戻す予定である。
 
 

共同研究の内容および効果

 本プロジェクトは、大学教育への入口と出口の変化に着目して、急激な情報化に対応した大学教育の自己改革の方向性を明らかにするものである。
大学への入口の変化に着目した部分では、特に指導要領について背景にある理論を含めて検討することで、現在の初年次教育に求められる変化を明らかにする。
大学からの出口の変化に着目した部分では、近年人材不足が叫ばれているデータサイエンス分野に注目して、既存学問分野へのデータサイエンスの影響の調査・政策文書や出版物等の比較検討を踏まえて実験授業を学部横断的に立案試行する。本共同研究によって、入学した学生により適合した教育によって、社会のニーズにより適合した人材を輩出する大学教育の理論的根拠を構築することが期待できる。
 
【新規申請書記載内容からの変更】 
生成AIの急速な普及への対応を、共同研究の内容に加味する予定である。その結果、大学教育への生成AIの効果的な導入についての理論的・実践的知見を得るという効果を得ることを目指す。
 

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  • 研究テーマ

    日本の大学におけるアカデミックライティング科目の 指導内容に関する調査

  • 英文テーマ

    A Survey on the Curriculum of Academic Writing Courses in Japanese Universities

  • 研究期間

    2024年4月~2027年3月(3ヶ年)

研究スタッフ、研究課題および 役割分担

代表者
三井 規裕 共通教育機構准教授
全体統括
西藤 真一 経営学部教授
大学教育で実施されている文献の調査
藤間 真 経済学部教授
大学教育で実施されている文献の調査
櫛井 亜依 共通教育機構契約教員
大学教育で実施されている文献の調査
鈴木 小春 共通教育機構契約教員
大学教育で実施されている文献の調査
長内 遥香 共通教育機構契約教員
大学教育で実施されている文献の調査
星 愛美 元本学共通教育機構契約教員
文献調査内容のまとめと分類整理

研究の目的・特色

 本研究の目的は、2000年以降日本の大学教育で実践されている学術的な文章の書き方を対象に、文献調査を通じて指導内容の実態を明らかにすることである。先行研究では、学術的な文章の書き方に関する指導項目について、アンケート調査が行われている(時任ほか 2022)。その内容は指導項目を12項目に分け、どの程度できているかを大学の教員を対象に調査したものである。先行研究によって大学の学術的な文章の書き方の指導の傾向は明らかになっているものの、具体的な指導内容までは十分にわかっていない。そこで、本研究では12項目を参照しつつ、教材として作成されている文献を調査・分析し、12項目の具体的な指導内容を明らかにする。
 日本の大学教育において実践されている学術的な文章の書き方の指導内容の傾向を明らかにする研究は管見の限り見当たらず、本研究の特色であると言える。
・時任 隼平ほか(2022)「初年次生のアカデミックライティングに関する実態調査」.関西学院大学高等教育研
究第12号,pp.31-45.

研究プログラム (計画・スケジュール)

2024年度
4月から9月:文献調査(大学生対象に学術的な文章の書き方について書かれたテキスト対象)
10月から翌3月:指導内容・方法の整理と分類
2025・2026年度
2024年度で明らかになった傾向を元に、日本の大学教育における学術的な文章の書き方の共通点と課題点を明らかにし、課題点については対応策について検討する。
上記期間中は夏休み、春休みに1回ずつ1日使った研究会を大学内で実施。また、学会発表や論文投稿前に全員で議論を行う。3つのグループに分かれ、初年次教育学会、日本リメディアル教育学会、日本教育工学会にて適宜学会発表を予定している。
 

共同研究の内容および効果

 本研究では、大学生を対象とした学術的な文章の書き方に関する文献を対象にその内容を調査する。具体的には、日本語表現の習得を意図しているのか、学術的な文章の構造を重視しているのかなどの指導内容面の実態を把握する。また、学習方法についても個人、グループ、オンデマンド形式など、どのような実践方法が用いられているのか調査していくことで、日本の大学教育における学術的な文章の書き方の指導内容の傾向を一定程度明らかにできる。
本研究に取り組むことで、日本の大学教育における学術的な文章の書き方の指導内容の傾向が明らかになり、その結果、本学の授業実践に研究で得られた知見を反映できると考えている。さらに、本学の学生のための教材を開発することを視野にいれ、より充実した教育実践への波及効果があると考えている。
 

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  • 研究テーマ

    異文化共生に関する越境的研究

  • 英文テーマ

    Global Studies for Intercultural Cohesion

  • 研究期間

    2024年4月~2027年3月(3ヶ年)

研究スタッフ、研究課題および 役割分担

代表者
宮脇 永吏 国際教養学部講師
フランスの現代社会と文化
土屋 祐子 国際教養学部准教授
ローカル・エスニックメディア
今澤 浩二 国際教養学部教授
イスラーム世界の歴史と文化
片平 幸 国際教養学部教授
日本表象をめぐる日本と西洋の交流史
辻 高広 国際教養学部准教授
中国近代の歴史と文化
韓 娥凜 国際教養学部講師
排外主義と多文化共生
王 其莉 国際教養学部准教授
外国人子供の言語使用と社会的ネットワーク

研究の目的・特色

 本研究の目的は、現代社会における異文化共生のあり方を再考し、共生の可能性とそれを阻む障害を明らかにすることである。本研究では、人と文化の越境によって生まれる新しい社会・文化形態、それゆえの摩擦を検討する上で、あえて時代と地域、さらには学問領域を限定しない方針を取ることに特色がある。これによって、例えばヨーロッパにおいて多様な文化形態に現れてきた東方世界への憧憬が、いかにして現代社会の文化的・宗教的軋轢へと転じ得たのかを俯瞰して捉えることができる。逆に、現代において特定の文化圏固有のものとされる現象の中に、古来「外」の視点が織り込まれてきたことを再発見する必要もある。また、ハワイのようにマルチエスニックな社会が成立している事例からは、困難を乗り越えるヒントを得ることが期待できる。こうした点から、本研究では地理的・学問的領域の専門を異にする者たちが一つのテーブルにつき越境に関する知見を共有することに大きな意義がある。

研究プログラム (計画・スケジュール)

1年目:本研究参画者の問題意識の共有。担当分野・スケジュールを確認し、個別研究に着手する。
後半には各分野の専門家を招聘し、異なる立場から共生の問題を検討する研究会を開催。
2年目:個別研究の成果を提示し、進捗状況を報告する研究会を複数回開催する。
引き続き、各分野の専門家を囲んだ研究会を開催し、専門的知見を共有する機会を設ける。
3年目:全体の研究成果を論文にまとめる。引き続き各分野の専門家を囲んだ研究会を開催。
研究成果を学内シンポジウムとして学生に開き、教育現場に還元する。
 
 

共同研究の内容および効果

 各参加者の立場から、異文化共生における可能性と相互理解を阻む誤解等について検討する。宮脇は公教育の場で宗教的表徴を禁じたフランスを対象として、「表現の自由」の理念を背景に持つ異文化共生社会の課題を検討する。今澤はイスラームがヨーロッパに与えた影響やヨーロッパに住むムスリムが置かれる状況について検討し、双方の共生方法を模索する。土屋はハワイなどの国内外におけるローカル・エスニックメディア実践の中から、異文化越境の可能性を検討する。片平は西洋の日本表象の変遷とそれに対する日本の応答を交流史の観点から考察し、他者との共生がどのように実現しうるかを検討する。辻は中国の近代社会において、流入したヨーロッパの文化、制度がいかに受容されてきたのかについて検討する。韓は批判的談話分析の観点から日本の排外主義団体によるヘイトスピーチを分析し、外国にルーツをもつ人々への差別がどのようにして正当化されているかを明らかにする。本研究は領域横断的な対話を実践することで共生の課題解決の糸口を探ると同時に、異文化を学ぶ学生にリアルな認識をもたらし学習意欲を促進する。

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  • 研究テーマ

    認知症の人と家族のピアサポートの場の構築

  • 英文テーマ

    Creating a place for peer support for persons with dementia and their families

  • 研究期間

    2024年4月~2027年3月(3ヶ年)

研究スタッフ、研究課題および 役割分担

代表者
杉原 久仁子 社会学部教授
全体統括
川井 太加子 社会学部教授
本人・家族支援
黒田 隆之 社会学部教授
ピアサポート
栄 セツコ 社会学部教授
ピアサポート
金津 春江 本学非常勤講師
家族支援
武田 卓也 本学非常勤講師
家族支援
藤原 太郎 本学非常勤講師
本人支援
馬 天生 社会学研究科博士後期課程
本人支援
チョウ イクレイ 社会学研究科修士課程
ピアサポート
松川 真也 社会学研究科修士課程
ピアサポート
楊 少敏 社会学研究科修士課程
ピアサポート
家村 哲也 桃山なごみ会家族
家族支援
飯坂 孝子 和泉市認知症機能強化型地域包括支援センター
地域連携
折田 静香 和泉市認知症機能強化型地域包括支援センター
地域連携

研究の目的・特色

 障害、精神疾患などを抱える人たちのピアサポートの実践や研究は多くあるが、認知症の本人や家族の支援は、支援者と当事者間で行われることが多く、認知症の人たちのピアサポートの実践及び研究は、まだ少ない。また認知症家族のピアサポートは、通常、認知症の相談活動の一環として行われることが多く、相談支援活動との線引きははっきりしていないことが多い。
そこで、本研究では、若年性認知症の人・初期の認知症の人と家族におけるピアサポート活動を試み、
ピアサポートの運営、継続の工夫、専門職の立ち位置などを考察し、認知症の人と家族におけるピアサポート活動の継続のための課題を明らかにしたい。対象は、自分の思いを表現でき、活動能力が維持されているという観点から若年性認知症の人及び初期の認知症の人とその家族とする。新薬の開発などによって、今後認知症の診断は早まることが予測される。診断が「早期発見早期絶望」とならないために、ピアサポートの場は有効である。これらの活動は、認知症基本法が目指す「共生社会」への第一歩だと位置づけることができる。

研究プログラム (計画・スケジュール)

1.学内で2カ月に1回、若年性認知症の人や家族が交流できる場を開催し、構成員でピアサポートについての勉強会を開催する。
2.引き続き、学内で2カ月に1回、若年性認知症の人や家族が交流できる場を開催する。交流会にて、徐々に本人、家族のピアサポートの場を作っていく。本人、家族のピアサポートの実施から問題点を明確にする。
3.引き続き、学内で2カ月に1回、若年性認知症の人や家族が交流できる場を開催し、ピアサポートを行う。本人、家族のピアサポートの課題とその解決方法を考える。また支援者の役割を明確にする。
 

共同研究の内容および効果

 大阪府下の中でも認知症の人と家族のピアサポートの場は少なく、泉州地域では本人や家族たちが交流できる場も少ない。そのため、本学で行う認知症の人と家族の交流会は貴重である。ピアサポートは、本学での交流会をベースに場を作っていく。実践を続けながら、本人、家族、支援者へのアンケートなどを元に、ピアサポートのあり方、継続のための工夫、支援者の立ち位置などを考察し、ピアサポートをつくるまでの経過、課題をまとめる。
 認知症の人と家族のピアサポートは、認知症の人が他の人々と力を合わせ支えあう共生社会を目指すものである。当事者同士の支援は、今後の認知症支援の一つのスタイルでもある。本研究をモデル事業とし、他地域に広めることができれば、認知症になっても安心して暮らせる地域づくりに貢献することにもなる。ピアサポーターが養成されれば、自治体などでのピアとしての助言も可能となる。
 

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  • 研究テーマ

    短時間計測における心拍変動評価の妥当性

  • 英文テーマ

    Validity of heart rate variability assessment in short-time measurements.

  • 研究期間

    2024年4月~2027年3月(3ヶ年)

研究スタッフ、研究課題および 役割分担

代表者
松本 直也 経済学部准教授
研究統括
竹内 靖子 社会学部准教授
テータ取集
井口 祐貴 法学部講師
被験者コーディネーター
大西 史晃 経済学部講師
先行研究・学会発表用資料作成
杉 秋成 共通教育機構契約教員
データ解析
川端 悠 大阪公立大学国際基幹教育機構准教授 /本学兼任講師
データ取集・データ解析
小笠原 佑衣 大阪公立大学国際基幹教育機構特任助教
データ収集

研究の目的・特色

 心拍変動は、心電図上のR波の間隔(R-R interval)が心拍毎に変化する生理学的現象であり、周波数解析によって自律神経機能の評価に用いられるものである。連続的に心拍変動を計測することで、トレーニングやゲーム後の疲労度を非侵襲的に定量化できることからアスリートの日々のコンディショニング評価の一つとして期待できる。近年はアスリートを対象に短時間(2分以内)の計測での妥当性(Krejč´ıI et al.,2018;Esco and Fkatt,2014) が報告されているが、サンプルサイズが小さいため、検討の余地がある。よって、本研究は、心電図が簡便に計測できる心拍センサー(Polar H-10)を用いて、男子大学サッカー選手を対象とした短時間の心拍変動評価の妥当性を検証することを目的とした。
 短時間計測における心拍変動評価の妥当性が証明された場合、簡便なコンディショニングツールとして利用が促進されるだろう。また、エビデンスに基づいた効率的な課外活動指導となり、大学生アスリートの競技力向上に寄与すると考える。
 

研究プログラム (計画・スケジュール)

2024年度 実験計画の作成および予備実験
①測定時間、測定姿勢等の決定 ②学会大会での報告(研究が順調な場合)
2025年度 本実験
2026年度 追加実験および論文執筆。
 

共同研究の内容および効果

 本研究は、トレーニング科学の領域から、大学生アスリートの競技力向上および安全なトレーニング指導を継続するための新しい知見の獲得を目指して実施するものである。
近年では、エビデンスに基づいた効率的な指導方法が多くの論文で報告されているが、資金や研究設備の問題で指導者の経験値に基づいた感覚的な評価および指導しか行えないケースが少なくない。本研究が学生やスポーツ指導の現場に幅広く還元されれば、社会的に貢献することとなるため、研究とスポーツ指導がより密接に連動するよう尽力したい。また、研究成果については、日本フットボール学会での研究発表を予定している。

<24共303>

  • 研究テーマ

    大学生における生活実態調査研究

  • 英文テーマ

    Survey research on the actual living conditions of university students

  • 研究期間

    2024年4月~2027年3月(3ヶ年)

研究スタッフ、研究課題および 役割分担

代表者
井口 祐貴 法学部講師
研究統括
大西 史晃 経済学部講師
研究統括補佐
松本 直也 経済学部准教授
実態調査・分析 コーチングの視点から
杉 秋成 共通教育機構 契約教員
実態調査・分析  体力・トレーニングの視点から
松本 大佑 共通教育機構 契約教員
実態調査・分析 公衆衛生学の視点から
松元 隆秀 元共通教育機構 契約教員
実態調査・分析 測定評価の視点から

研究の目的・特色

 近年、我が国の若者の健康意識は増加傾向にある。一方で健康情報を獲得し、活用するためのヘルスリテラシーに関してはアジア諸国と比較しても低い傾向にある(Duong,2017)。また、日本の健康教育は欧米諸国と比べて遅れており、小学校、中学校、高校の保健体育の授業のみでは不十分である。特に大学は社会にでる1つ前のライフステージである。このタイミングでの健康教育は生涯における健康について考える上で重要な位置づけである。
 本研究の目的は、現在の大学生の生活習慣、睡眠、栄養、体力、身体活動、身体組成、メンタルヘルスなどについて調査を行い、学生の現状に適した健康教育の内容について検討することである。
 本研究の特色は、1人の教員の知識や専門性に偏らず、専門分野の異なる教員によって多角的な面から健康教育の内容について検討できる点である。

研究プログラム (計画・スケジュール)

本研究は3年間実施され、以下のスケジュールにそって実行する予定である。
2024年度春学期:役割分担、調査準備(調査対象・調査方法・分析方法・倫理申請・研究スケジュールの調整)
2024年度秋学期:調査実施、測定方法の再検討、研究スケジュールの調整
2025年度春学期・秋学期:調査実施、調査方法・分析方法の検討・改善、データの解析および論文執筆
2026年度春学期・秋学期:調査実施、調査方法・分析方法の検討・改善、データの解析および論文執筆・小冊子の作成
 

共同研究の内容および効果

 本研究では、大学生に必要な健康教育を検討するために大学生の生活習慣、睡眠、栄養、体力、身体組成、身体活動、メンタルヘルスなど日々の生活に関連する項目についてアンケート調査および測定を実施する。2024年度の秋学期より、受講生を対象に調査を行う。アンケートおよび測定項目については、学生への負担を考慮し、安全かつ短時間で実施可能な測定を選定する。
 本研究により想定される効果としては、①本学の学生の生活実態を明らかにできる。効果的な健康教育を行うためには、学生の現状を把握し、学生の現在のニーズと将来のニーズに即した教育を行うことが重要である。②健康教育のモデルケースとなる可能性。一般体育の授業は、ただ運動する機会を提供するだけでなく他国と同様に健康教育の場として期待がされている。しかしながら、各教員の専門性や知識は異なるため1人の教員がこれを統一することは難しい。本研究では実態調査を背景に健康教育を考案するため、それぞれの意見を集約した健康教育が可能になる。
 

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  • 研究テーマ

    フィールドワーク教育の学際的研究

  • 英文テーマ

    Interdisciplinary research on fieldwork education

  • 研究期間

    2025年4月~2028年3月(3ヶ年)

研究スタッフ、研究課題および 役割分担

代表者
大野 哲也 社会学部教授
研究総括 冒険社会学 FW:ツーリズム
石田 あゆう 社会学部教授
メディア論 FW:女性支援ボランティア
竹内 靖子 社会学部准教授
レクリエーション論 FW:福祉レクリエーション
木島 由晶 社会学部准教授
文化社会学 FW:ファンとオタクの文化
長﨑 励朗 社会学部准教授
メディア文化論 FW:関西文化
金 太宇 社会学部准教授
環境社会学 FW:環境とコミュニティ
濱田 武士 社会学部准教授
地域社会学 FW:農業と地域おこし
彭 永成 社会学部講師
メディア社会学 FW:出版業界
生井 達也 兼任講師/ 国立民族学博物館 外来研究員
文化人類学 FW:ライブハウス・地域創生
植田 里美 兼任講師/大阪市長居障がい者 スポーツセンター指導員
障がい者スポーツ支援論 FW:障がい児・者スポーツ
水流 寛二 兼任講師/ NPO法人キャンピズ代表
アレンジスポーツ支援論 FW:障がい児・者福祉
石田 易司 名誉教授/(社福)大阪婦人ホーム 理事長
助言 ボランティア論 FW:福祉ボランティア
福山 正和 地域連携課課長補佐
ボランティア支援論 FW:ボランティア コーディネート

研究の目的・特色

大学では、人文社会科学、自然科学など様々な分野でフィールドワークを通した教育や研究が行われている。もっとも広い意味でのフィールドワーク(野外調査)は、デスクワークや図書館で行う文献研究あるいは、実験室での実験など室内で行われる研究活動との対比で使われる言葉(佐藤, 1992:32-35)とされており、調べようとしている出来事がおこなわれている現場でさまざまな教育や研究が展開されている。
パンデミック以降のフィールドワークはデジタル空間でも行われ、活動の考え方や在り方が急速に変化し、個々の教員や学生や関係者の工夫により主にデジタル導入が進められているため、個々の工夫や課題を集約し、より安全安心なフィールドワーク教育(研究)環境をいかに構築するかは喫緊の課題である。そのため、本研究の目的は、多様なフィールドワーク教育(研究)事例を分析し、課題やその解決方法を、学際的共同研究から明確化することである。(本研究は、社会学研究におけるボランティア論、メディア論、文化論、コミュニケーション論、レクリエーション論、野外教育論、障がい者スポーツ論や支援論等の観点を有する専門家で構成されている。)
本研究の特色は、①現代におけるフィールドワーク教育事例検討、②「フィールドワーク」受講生のデジタル活用実態調査・分析③インクルーシブな支援の3つの視点から、総合的に検討することで、より多角的にフィールドワーク教育(研究)事例を分析し、課題やその解決方法を検討することである。
 

研究プログラム (計画・スケジュール)

本研究の研究期間は3年間であり、計画・スケジュールは以下を予定している。
・2025年度:役割の確認、先行研究の整理・分析、フィールドワーク教育事例報告・視察、調査準備(調査対象・調査方法・分析方法の選定・倫理委員会申請)
・2026年度:フィールドワーク教育事例の分析・検討・改善、論文・書籍執筆
・2027年度:フィールドワーク教育事例の分析・再検討、論文・書籍執筆
 

共同研究の内容および効果

多様なフィールドワーク教育(研究)事例を分析し、課題やその解決方法を明確化するために、多様な専門家と共に、実態調査・実践研究・理論研究を通して、以下3つの視点から研究を進める。
研究内容は、①社会学(メディア等)の視点からフィールドワーク教育に関する事例を検討することで、実態や課題が明確化すると考えている。②デジタル活用については、学生の特徴に合わせた指導・支援方法の検討を行う。さらに、③インクルーシブなフィールドワーク教育を推進するために、ダイバーシティに関する現状を理解し、教育方法も検討する。
これらの研究により、大学生のフィールドワーク教育に関する意義や課題、支援方法が明確化されれば、より学生の主体的な学びを促進する支援環境構築の一助となることが期待される。
 

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  • 研究テーマ

    公共施設の情報公開の現状と課題

  • 英文テーマ

    The current status and issues of information disclosure of public facility

  • 研究期間

    2025年4月~2028年3月(3ヶ年)

研究スタッフ、研究課題および 役割分担

代表者
伊藤 潔志 経営学部教授
情報公開の倫理学的意義の考察/研究の総括
川口 厚 経済学部教授
学校の情報公開の分析
橋本 あかり 共通教育機構契約教員
学校図書館の情報公開の分析/データの処理・分析
水沼 友宏 経営学部准教授
公共図書館の情報公開の分析/論点整理
中村 恒彦 経営学部教授
公共施設の財務情報の公開の分析
吉弘 憲介 経済学部教授
財政学/地方自治体の財政情報の公開について
藤間 真 経済学部教授
数学/データ分析の妥当性について
井上 敏 経営学部教授
博物館学/博物館の情報公開について

研究の目的・特色

1990年代後半以降の急速なインターネットの普及に伴い、学校・図書館・博物館を始めとするさまざまな公共施設がホームページをウェブ上に公開し、そこから情報公開を行うようになった。他方、2001年に情報公開法が施行されて以降、各自治体の情報公開には格差があることが指摘されている。公共施設の情報公開についても、その情報公開の質・量にはかなりの幅がある。これは知る権利や説明責任の観点からも重要な問題であるとともに、公共施設の組織の在り方が問われる問題でもある。
2020年のコロナ禍で外出の自粛を余儀なくされたことにより、公共施設がホームページから情報を公開したり発信したりする頻度が高くなった。本研究では、コロナ禍が終息しつつある現在において、どれくらいの公共施設がホームページから情報を公開・発信しているのかに着目する。そして、どのような情報を公開・発信しているのか、またその更新頻度について全数調査し、都道府県あるいは市町村ごとの違いを分析し、公共施設が抱えている問題を明らかにしたい。
 

研究プログラム (計画・スケジュール)

2025年度:
・公共施設の情報公開に関する論点整理および先行研究の調査
・公共施設の情報公開に関する調査の下調べ
2026年度:
・公共施設の情報公開の状況や更新頻度の全数調査
2027年度:
・得られたデータの分析および考察
※定期的に研究会を開催して進捗状況を共有する他、公共施設あるいは地方自治体へのヒアリング調査、外部講師による講演会、合宿研究会などを適宜実施する。

共同研究の内容および効果

本研究では、公共施設の情報公開の在り方や今後の展望について提示したい。学校・図書館・博物館を始めとする公共施設がどのようなコンテンツをホームページで公開し、どのような情報を発信しているのか、また関係者や利用者にどのような影響を与えているのかを調査することによって、ホームページの内容を充実させるための方策を提案することができると考える。また、都道府県あるいは市町村ごとの情報公開の状況の差異を明らかにし、積極的に情報公開を行っている地方自治体あるいは公共施設にヒアリングを行い、その要因を明らかにすることで、今後のホームページ運営について提言をしたい。
本研究では、各研究者の研究対象や専門分野の違いを活かして、公共施設の情報公開の在り方について、多様な観点から専門的かつ現実的な提案がなされることが期待できる。
 

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  • 研究テーマ

    日本における福祉国家の形成過程—社会問題とそれへの対応の諸相

  • 英文テーマ

    How are social policies developed in Japan ?!

  • 研究期間

    2025年4月~2028年3月(3ヶ年)

研究スタッフ、研究課題および 役割分担

代表者
小島 和貴 法学部教授
日本行政史
見浪 知信 経済学部准教授
日本経済史
永水 裕子 法学部教授
医事法、人権
鈴木 康文 法学部講師
西洋法制史
島田 克彦 経済学部教授
日本都市史
瀧澤 仁唱 本学名誉教授
労働運動、労働法
天本 哲史 法政大学社会学部教授
行政法
松澤 俊二 社会学部准教授
近・現代日本とプロレタリア
松本 未希子 名古屋経済大学法学部准教授
行政法
向村 九音 元非常勤教員
日本史

研究の目的・特色

近代市民革命を経て法治国家の要請が高まると、人々は「国家から自由」になることを要望した。夜警国家への接近である。しかし20世紀に入ると社会主義を標榜する国家が誕生し、世界大恐慌を経験すると、それまで夜警国家の維持に力を注いだ国々は職能国家・福祉国家の可能性を模索するようになる。  
 福祉国家以前には失業や貧困は個人の責任とされたが、それ以降は「国家による自由」が求められる。福祉国家時代には、感染症や貧困、住宅問題や医療など、人々の生活と密接な社会の諸問題に対して国家が関わりを持つことが予定されることとなるのである。そこでこの研究プロジェクトでは日本がいかにして福祉国家を形成していくのかについて、失業や労働者の労働環境、感染症患者の強制隔離などの問題も取り上げながら、接近しようとする。その際、法、行政、都市空間、経済問題、労働運動、労働者の生活など多面的な視点より、外国との比較や歴史的な経緯、さらにフィールドワークを踏まえて検証することを予定する。

研究プログラム (計画・スケジュール)

<2025年度>資料を収集し、資料批判を行う。資料の収集は各研究員が相互連絡の下行い、資料批   
     判ののち収集した資料に関して適宜報告を行う。研究報告は2〜3か月に一度を予定する。
<2026年度>資料を収集し、資料批判を行う。資料の収集は各研究員が相互連絡の下行い、資料批   
     判ののち収集した資料に関して適宜報告を行う。研究報告は2〜3か月に一度を予定する。   
     研究成果がまとまったところから適宜論文等で成果を公表する。
<2027年度>資料を収集し、資料批判を行う。資料の収集は各研究員が相互連絡の下行い、資料批 
     判ののち収集した資料に関して適宜報告を行う。研究報告は2〜3か月に一度を予定する。    
     研究成果がまとまったところから適宜論文等で成果を公表する。また本研究の総括を行う。

共同研究の内容および効果

福祉国家のメルクマールとして生存権の保障、所得再分配、景気調節がなされていることとされる一方で、感染症や貧困の問題は生存権の保障以前にも国が関与するものであった。ここでは日本において感染症や貧困などの社会の諸問題への国の対応がいかに進められていくのか、国の政策に対して人々はどのような反応を示すのかについて解明することを予定する。本研究プロジェクトは日本の福祉国家の形成過程を「総合的」に解明するものであり、官僚や労働者、社会運動家、あるいは法制度の視点だけでなく、庶民の生活にも配慮して研究を進める。その際、関連文献・資料や統計データなどの批判的考察の作業に加えて、博物館など人々の生活を記録する施設へのフィールドワークや貧困や健康の問題などの諸問題の解決に取り組んだ関係者への聞き取り調査を実施することを予定する。
 本研究プロジェクトを通じて、日本の社会問題とそれへの対応をめぐる総合的・理論的な論点が明らかとなると思われる。本研究の成果は、学術論文等の形で随時公表することを予定する。