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2023/12/22
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第17回 桃山学院大学図書館書評賞についての講評

【 総合講評 】 

図書館長 小島 和貴 法学部教授

 桃山学院大学附属図書館が主催する「桃山学院大学図書館書評賞」は今年度で17回目を数えました。今回も意欲的な作品に触れることができました。本に接することでわたくしたちの生活が豊かになるものであるとの思いを強くしました。受賞されたみなさま、本当におめでとうございます。
 書評賞では以下の点が重視されます。
 ①書評図書の内容の要約または概要が盛り込まれていること。
 ②書評図書の良い点や悪い点が明示され、それに対するコメントが述べられていること。
 ③文章の読み易さ、表記の適切さ、文章構成の確かさに留意すること。
 応募作品では要約や概要への取り組みはなされているようでした。②については応募者のばらつきが認められたように思われました。書評図書の「良い点や悪い点」を論じる際に、応募者の経験に照らして論じられている作品にしばしば出会うことになりました。しかし書評は読み手の限られた経験のみでなく、選んだ図書が出版される経緯や出版前の議論を踏まえることで、その図書の特徴がより如実に分かってくるのではないでしょうか。例えば、過去に同様の図書がすでに出版されているのかいないのか、そして仮に出版されているのならば新たに出版されることの含意を那辺に見出すことになるのかなど興味深い点であるように思われます。それぞれの経験は貴重です。この貴重な経験が、一個人としての現象なのかより一般的に論じることができるのかは、従前の議論など他の見解を踏まえることで明らかになってくることがあります。書評を科学的な営みとするならば、現象や価値を表する際の根拠が必要になってきます。独善的な状態に陥らないためにも、是非とも科学的な視点を持ち続けたいと思います。
 また書評においては、文章の読みやすさなど、自身の見解を表現する際の文や言葉の適切さが重視されます。形式段落を効果的に活用できることも大切な点でしょう。そして誤字・脱字がないということも求められます。特にキーワードになるような言葉に誤字等の可能性が生じた際に、文意を追うことが難しくなってしまうということがあります。文章の内容を吟味すれば深遠な書評であっても、「表記の適切さ」や「文章構成の確かさ」の点で受賞を逃してしまうことがあるようです。
 本を評しながら、いまだその本に出合えていない人がこれを読みたくなるような情報が書評という作業を通じて提供されます。自身の考えを書いて伝えるというときに、読み手がいるということを忘れないようにしたいものです。
 今回、作品の審査に参加し、受賞の可否を決めることの難しさを改めて知ることとなりました。