2025年度 卒業証書・学位記授与式 祝辞
「新しいステージにあがる皆様へ ~土の器として生きる」
皆様、ご卒業おめでとうございます。今まで、見守り、支えてこられたご家族はじめ、ご関係の皆様、おめでとうございます。学院を代表して、お祝いの言葉をお贈りします。ご存知の方もあるかと思いますが、桃山学院は1884年C.F.ワレン大執事によって、現在の大阪市西区川口の地に、小さな種が植えられました。諸先輩方がバトンを受け継いで、受け継いで今年2026年で142年を迎えました。少し先ですが、2034年には創立150周年を迎えます。皆さまも入学の時、桃山学院のバトンと受け継いでくださって、今日ご卒業の時を迎えられたわけです。
さて、桃山学院大学での学生生活はいかがだったでしょうか。中学・高校の時よりも高く、深く、広く、大きな世界を垣間見ることができたのではないでしょうか。英語で卒業式のことをコメンスメント(Commencement)と言います。
卒業と聞きますと、お別れの時、寂しさを感じる季節ですが、このコメンスメントには、「開始、始まり、初め」という意味があります。さよならの季節ですが、同時に「開始、始まり、初め」の季節でもあります。皆さんは、大学時代からさらに、高く、深く、広く大きな世界に向かって新しいステージ、新しい舞台に上がる時を迎えようとしています。
新しいステージに上がろうとしている皆様に、聖書のことばをお贈りします。創世記の第2章、人間の創造神話です。「主なる神は、土の塵で人を形作り、その鼻に命の息を吹き入れられた。人はこうして生きた者となった。」
人間が土の塵から創られた。人間は「土の器」だというのです。昔昔の人々が、人間が死に土に埋めるといつの日か土に帰っていくことから、土の塵から人間が創られたと考えたのでしょう。「土の器」と聞きますと、人間のはかなさ、もろさ、弱さを感じます。
人間(ホモサピエンス)の誕生は約38億年前頃と言われます。山や木の上で暮らしていた人間の祖先が、何故か、山から、木から下りてきます。犬歯も大きくない人間は、確かに大変弱い存在でした。猛獣たちの格好の標的になります。人間は大変危機的な状況に生きることになります。その後も幾度となく人間はいのちの危険、危機的な状況にさらされます。たとえば、氷河期などです。しかし、人間は幾度となく危機的状況を乗り越えて、今に至っています。「いのち」は38億年前から皆さんまで、一度も途切れることなく続いています。危機的な状況は幾度となくあったのですが。奇跡と言ってもいいかな?
ところで、危機的状況を乗り越える力は一体何だったのだろうか。京都大学の山極寿一先生(ゴリラの先生)は、人間に与えられているいくつかの要素があったからだと語っておられます。
① 共同体性 血縁・家族を越えて支え合っていく、分かち合っていく、広く仲間で生きていっていること
② 共感する力 相手のことを心配したり、愛おしく思ったり、お互いに思い合ったりすること 私たちは2足歩行。なぜか、諸説あります。ある方のお話に、家族や仲間のために食べ物や飲み物を運ぼうとして立ち上がったところから始まったというちょっと素敵なお話を聞いたことがあります。
③ 忍耐力や柔軟性 多様な人々を仲間として受け入れていくおおやかな心寛容の心をもっていること
人間は弱さ、もろさを持っていますが、共同体性、共感する力、忍耐力、柔軟性を与えられて、弱みを強さに変えて生き抜いてきたのです。桃山学院大学のスピリット、校風である自分を大切にし、他者に対して責任を負う自由と、いつも他者に気配りをする愛の心が、共同体性・共感性・忍耐力・受難性等には地下水のように流れています。皆様は桃大において、こうした風に触れたのです。
また、土にはもう一つの側面があります。土には宝が隠されています。生き物を育て、守り、生かす力をもっています。自然界、農業を思い浮かべて下さい。陶芸、焼き物も土をこねて、こねて作られます。土から、薬の原材料が発見されることもあります。土は、目には見えないのですが沢山の宝をもっています。それは、ここにおられる皆様一人一人と同じです。皆様は宝をもっておられます。可能性と言い換えていいでしょう。それも一つではなく、いくつももっておられます。そのことに気づいて、新しいステージへ上がる方もあるでしょう。まだ見つけていないという方もあるでしょうが、心配いりません。必ず、神さまは、宝、可能性を与えてくださっています。自信をもって新しいステージに上がってください。
そして、人間創造の場面では、土の塵から創られた人間の鼻から、神様は「いのちの息」を吹き込まれ、人間は生きるものになったと記されています。
私たち一人一人に、神様の息、いのちの息が吹き込まれていて、神さまは、私たちが弱さやもろさに悩むとき、働いて力づけてくださいます。
今日皆さんは卒業の時を迎えました。いよいよ出発の時、旅立ちの時です。
しかし時代は「順風満帆」というより「逆風」の時代と言っていいのではないでしょうか。さようならのことを、グッバイと申します。
これは、「GOD BE WITH YOU 神さまが共におられますように」ということの略です。皆さんの新しいステージの上に、神さまが共にいて、守り、導いてくださいますようにお祈りしています。皆さん、ご卒業おめでとうございます。
GOD BE WITH YOU!
2026年3月17日
学院長 磯 晴久(日本聖公会大阪教区主教)