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2024.7.23
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【大学開学65周年・学院創立140周年記念】レクチャー・コンサート「サン=シモン・万博・ドビュッシー」を開催しました
大学開学65周年・学院創立140周年記念公演・国際セミナー特別企画「サン=シモン・万博・ドビュッシー」が7月19日(金)、本学和泉キャンパスのカンタベリーホールで開催されました。当日は、学内外から約400名の来場がありました。

19世紀にはじまった万国博覧会の背景や、パリ万博で紹介されたアジアの文化がヨーロッパの作曲家や画家に与えた影響について本学経済学部の豆原啓介准教授が解説し、アジアの民族音楽から影響を受けたドビュッシーとラヴェルのピアノ曲を国立音楽大学講師のピアニスト、佐野隆哉さんの演奏で楽しみました。

世界初の万博は1851年、ロンドンで開かれました。豆原准教授は「イギリスは世界で初めて産業革命を開始し、工業化に成功しました。最新のテクノロジーや工業製品を展示する万博が最初にイギリスで開催されたのはそうした経済史的な背景があります」と解説しました。

続く万博は1855年のパリ。パリ万博開催を主導した官僚、ミシェル・シュバリエが傾倒していた哲学者がサン=シモンでした。豆原准教授は「貴族の出のサン=シモンは、アメリカ独立戦争に義勇兵として参戦し、ヨーロッパのように戦うことを仕事とする貴族が社会を支配するのではなく、実業家が社会を支配するアメリカ社会の在り方に大きな刺激を受けました。そして、理想的な社会を築くには、戦争ではなく産業が重要であると唱えました。サン=シモンに傾倒していたミシェル・シュヴァリエは、産業振興のための万博開催を主張してナポレオン三世に受け入れられ、1855年に第1回パリ万博が開催されました」とサン=シモンの思想とパリ万博の関係を説明しました。

さらに1889年の第4回パリ万博では、ドビュッシーがジャワの民族音楽「ガムラン」から影響を受けたこと、「ガムラン」が演奏された背景には第4回パリ万博において植民地の人間を万博会場で生活させるという「人間の展示」が行われたこと、万博に帝国主義的な要素が侵入してきた点などについて触れられました。その後、ドビュッシーが「ガムラン」から受けた影響が最もダイレクトに表れている作品「塔」(「版画」より)を、佐野さんが演奏されました。

続いて、印象派「音楽」と美術の関係について、レクチャーが行われました。ドビュッシーやラヴェルなどの作曲家とモネを始めとする印象派画家には作風に共通点があり、雰囲気の描写に力点が置かれたこと、自然をモチーフとした作品が多いこと、アジアからの影響が認められるといった点が挙げられました。そして、音楽印象派の代表的作曲家、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」、「水の戯れ」の演奏を第一部の最後に楽しみました。

第二部では、最初にドビュッシーの晩年期の作品「前奏曲集第2巻」の解説が行われました。ドビュッシーが「塔」を経て創作した「前奏曲集第2巻」には実験的な要素が見られること、また、「前奏曲集第2巻」が発表された1910年代には、バレエではニジンスキーの「春の祭典」、美術ではデュシャンの「泉」など、実験的・前衛的な作品が登場してきた点について、触れられました。その後、ドビュッシーの「前奏曲集第2巻」から後半6曲が演奏されました。

また、ドビュッシーはアメリカの大衆文化からも影響を受けました。豆原准教授は「20世紀初め、経済や文化の中心がヨーロッパからアメリカに移るとともに、パリでもアメリカの大衆的な音楽やダンスが流行を見せるようになり、ドビュッシーは黒人文化にルーツがある音楽を取り入れました」と解説し、「ゴリウォーグのケークウォーク」の演奏を最後に楽しみました。

最後に、豆原准教授は「『人間の展示』は明らかに非欧米圏の人々を見下して見世物にする差別的な視点に根差したものでしたが、ドビュッシーは対照的に、まっさらな眼差しでジャワの音楽やアメリカの大衆音楽のような異文化に向き合い、自身の中に取り入れていきました。私も関西万博に参加するときには、ドビュッシーのようなまなざしを持って参加したいと思います」と話しました。アンコールでは、「月の光」が演奏され、万雷の拍手のうちに、公演が終了しました。

【参加した学生の感想】
・音楽鑑賞は非常に好きで、これまではピアノ曲を鑑賞するときはその音楽が奏でる音の素晴らしさをみていましたが、レクチャーによってその曲の背景を知ったうえで耳に入るので、いつもと違った聞き方ができて心揺さぶられる公演でした。

・ピアノとレクチャーの双方がマッチしていたからこそ、90分がとても早く感じました。最後の演奏の、最初の一音が会場に響いた瞬間は鳥肌が立つくらいで、疾走感が漂う音の流れだったり、なめらかな音でありながらも抑揚があったりする演奏で素晴らしいと思いました。このような贅沢な時間を味わうことができ、この公演を鑑賞できる機会に参加できて良かったと心から思いました。

・とにかく演奏がすごかったです!自分自身は、ピアノを弾くことができないので、講演会に来て下さって、ピアノを演奏してくださった佐野さんに憧れの気持ちをいだきました。今回の講演会でパリ万博の歴史やアメリカの文化について学ぶことができて良かったです。またこのような講演会が桃山学院大学で開催される機会があれば、参加したいと思いました。この講演会は、私の心の中に一生残るものとなりました。

当日は、学内外問わず多くの方にご参加いただきました

会場(和泉キャンパス カンタベリーホール)の様子

ピアニストの佐野隆哉さん

本学経済学部の豆原啓介准教授