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2022.3.18
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2021年度卒業証書・学位記授与式を挙行しました
3月17日(木)、本学総合体育館メインアリーナにて、2021年度卒業証書・学位記授与式を執り行いました。磯 晴久 学院長と牧野 丹奈子 学長より、門出を祝う言葉が卒業生に贈られました。


<2021年度卒業証書・学位授与式の様子>

(感染症拡大防止の観点から、撮影時のみマスクを外しています。)

2021年度 卒業証書・学位記授与式式辞

皆さん、ご卒業おめでとうございます。ご家族、ご親戚、関係者の皆様おめでとうございます。桃山学院大学の教職員を代表し、心よりお祝い申し上げます。この2年間、突然の遠隔授業やクラブ・サークル活動の中断など、皆さんにはさまざまなご苦労をおかけしました。我慢することも多かったと思います。よく頑張られたと心から敬意を表したいと思います。

さて、これから社会へ出ていく皆さんに、ひとつお聞きしたいことがあります。皆さんの夢は何ですか?この質問、就職活動などでもよく聞かれたことと思います。そして、答えに困った方が多かったのではないでしょうか。もちろん、若い時から夢を持つことは素晴らしいことです。しかし今の社会で、夢は何かと聞かれたとき、すぐに答えられない人が多いのではないかと私は思います。 今の社会は、不安定で不確実で複雑で曖昧だとよく言われます。過去の成功体験も安易な将来予測も、もはや役に立ちません。どこへ向かっていけばよいのかが実に見えにくい不透明な社会だといえるでしょう。では、このような社会では、どのように夢を見つけて、どのように実現すればよいのでしょうか。

今日は、その一つの考え方を、皆さんにお伝えしたいと思います。それは「パッチワーク方式で進みましょう」です。パッチワーク方式とは一体何か?その前にまずは、大阪生まれのある若者の話から始めたいと思います。

その人は運動が好きで、中学校・高校と柔道部でした。けがによく悩まされたために、将来は運動選手をサポートする整形外科の医者になりたいと思い、大学は医学部に入学します。ところが、残念なことに手術が苦手でした。他人が20分で終わらせる手術に2時間もかかり、教授からは邪魔だと言われ続けます。そこで彼は整形外科医をいったん断念し、医学の基礎研究の道へ進もうと思い、大学院に入り直します。そして、そこで初めて任された実験で、これまで味わった事のない興奮を体験することになります。教授の仮説を覆す実験結果が出たのです。彼は「すごいことが起こりました!」と大興奮して、教授に報告します。後の彼曰く、それは大したことのない実験だったそうですが、そのときのドキドキ感の記憶が「自分は研究者に向いている」と思える拠り所になったそうです。それから彼は研究のとりこになります。そして、どうしてもやりたい遺伝子の研究を見つけますが、当時、その研究に取り組んでいる大学は日本にはありませんでした。そこで彼は、アメリカの求人広告を見て、手当たり次第に申し込んで、自力でアメリカに渡ります。そしてアメリカで仲間と共に実験を続けていたある日、「オスのマウスが妊娠?まさか。」といった驚きの結果が出ます。やはり妊娠ではありませんでしたが、そのときの実験結果が、やがてIPS細胞の研究へと繋がっていきます。そしてそのIPS細胞の研究によって、彼は2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞します。

もうお分かりですね。この若者だった人は山中伸弥氏さんです。

山中伸弥さんは、自分の人生について、「人間万事塞翁が馬」のようだと言います。確かに、IPS細胞の実現という夢を見つけるまでの道のりは、決して単純な一本道ではありませんでした。それはまるで小さな布切れを1枚1枚繋ぎあわせながら大きな作品を仕上げるみたいに、一歩ずつ道を探しながら進んで行ったように見えます。いわばパッチワーク方式の生き方です。そして、その場その場での羅針盤となっていたのは、自分の能力と想いでした。そのため、自分がそれに向いていないと判断すれば、ときには撤退もしました。また、人との出会いが背中を押すこともありました。
 

このようなパッチワーク方式の生き方を説明するものとして、サラスバシーという人のエフェクチュエーションという研究があります。これはアントレプレナーシップについての研究ですが、夢を見つけ実現したい人に役立つ内容が多く書かれています。そこで、今日はその中から3つのルールについて、私なりに紹介したいと思います。

第一のルール。それは、自分の手の中の鳥を活用しよう!です。先が見えないときは遠くの青い鳥を追いかけるのではなく、今の自分の手の中にある鳥を見てみよう。鳥とは、自分が持っている能力、個性、人脈などの例えです。つまり、まずは足元から始めようということです。

第二のルール。それは、失敗したら発想を転換しよう!です。たとえば、ケーキを作ろうと思い、イチゴを買いに行って、形の悪い粗悪品のイチゴを掴まされたときには、予定のケーキをやめて、イチゴジュースを作ってみよう、といった具合です。何が起こるかわからない状況では、失敗を嘆くのではなく、失敗を活かして思い切ってものの見方を変えてみよう、つまりリフレーミングをしようということです。

第三のルール。それは、関係する人と繋がりながら進むべき方向を見つけよう!です。たとえばライバルの人も対立する人ととらえずに、同じことに関心を持つ人ととらえてみよう。そして、このような関係する人をできる限り巻きこみ、交渉し、つながることによって、自分たちの新しい行き先を作り出していこうということです。 このようなルールを使うことによって、不透明な社会で起こる偶然をチャンスに変えることができると私は考えています。また、スタンフォード大学の調査でも、「ビジネスで成功した人の8割はキャリアプラン通りにはいかなかったが、さまざまな偶然をものにすることで成功した」という結果が出ています。
 

皆さんの手の中には、皆さんそれぞれの鳥が必ずいます。4年間の大学生活において、特にこの2年間の頑張りによって、その鳥は間違いなく成長しています。さらに、研鑽を積みながら、その鳥を育て活用しつつ、パッチワーク方式で一歩ずつ前へ進みましょう。パッチワーク方式の生き方は遠回りになるかもしれません。しかし、このように一歩ずつ夢を追うことによって、自分流の人生のスタイルができるはずです。桃山学院大学の卒業生ならば、どのような社会においても、夢を見つけ実現できると信じています。



2022年3月17日
桃山学院大学 学長
牧野 丹奈子