■2022年度9月 卒業式祝辞
桃山学院を代表して、皆様に祝辞を申し上げます。
本日桃山学院大学を卒業される皆様、おめでとうございます。また今までずっと見守り支えてこられたご家族をはじめご関係の皆様、おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。
桃山学院大学での学生生活はいかがだったでしょうか。高校までとは違った広く、高く、深く、大きな世界を垣間見られたのではないでしょうか。大きな世界への入り口となったのではないでしょうか。一方では新型コロナウイルス禍の下、思い通りいかないこと、不安なことも多くおありになったでしょう。
きっとこうした経験が、皆様の人生の糧になると私は信じております。
卒業式のことを英語でcommencementと言います。この言葉は同時に「開始」「始まり」「初め」という意味をもつ言葉です。卒業式は別れの時、寂しさを感じる時なのですが、同時に新しい旅立ちの時、新しい世界に一歩踏み出す時でもあります。皆様はこれからさらに広く、深く、大きな世界へと、新しいステージに立たれるわけです。
今年桃山学院は138周年を迎えました。大学は開学68年です。先日エリザベス女王の葬送式が行われました。桃山学院のバックグラウンドにあります聖公会という教会の葬送式の伝統にのっとって行われました。女王は聖公会の信徒、英国聖公会のメンバーの代表。138年以上も前、その英国聖公会から派遣されたC.F.ワレン大執事が1884年現在の大阪市西区川口にありました聖三一教会の一室に生徒11人という小さな学校が始まりです。
桃山学院大には、ワレンさんをはじめ宣教師や、先人たちがもたらした聖公会のスピリットが、風のように流れています。この聖公会のスピリットが、皆様のステージできっと役に立ちます。
皆様を待ち受ける日本や世界の状況はどうでしょうか。大阪では万博、カジノ開設、経済的な右肩上がりを取り戻そうとしています。しかし新型コロナの影響もあり、私は右肩上がりの時代は終わって、右肩下がりの時代に入ったと感じています。
また、現在日本には、在日韓国・朝鮮の方、中国、台湾の方はじめ190か国260万人以上の外国からの方が暮らしています。この5年間で50万人増加しました。新型コロナが落ち着きましたら、今後さらに増えるでしょう。日本は多民族・多文化社会になっていきます。
そうした時、聖公会が大切にしてきたスピリットが役に立ちます。
一つは、絶対主義とか独裁主義を容認しないことです。人間は完全無欠ではありません。私は世界の指導者たちが、あまりに偉くなりすぎているのではと危惧しています。さらに、聖公会が、そして桃山学院が大切にしてきたのは、「なっていく」充全に向かって徐々に、成長し続ける、変化し続けることです。
そして、もう一つは、「ブリッジチャーチ、橋渡し」の役割を大事にしているということです。今世界に必要なのは、人と人、宗教と宗教、国と国、民族と民族の間に大きな壁をつくることではなく、大きな橋を架けることです。寛容な心をもって、他者と和解し、共に生きようと努力することです。皆様が新しいステージにおいて、特に「橋渡しの役割」「橋を架ける役割」を担ってくださることを私は心から期待しています。
新しいステージでは、きっといろいろなことがあるでしょう。腑に落ちないこと、納得できない状況、壁にぶつかったり、自分の力のなさにがっかりしたり、転んだりと。南アフリカで人種隔離政策(アパルトヘイト)と闘い、逮捕され、獄中に27年間留置された故ネルソン・マンデラさんは、1991年に人種隔離政策を撤廃に導き、1993年のノーベル平和賞を共同受賞されました。マンデラさんは、「生きる上で最も偉大なことは、決して転ばないことではありません。転ぶたびに起き上がり続けることにあります。」と語っておられます。どのようなときも、転んでも希望を失わず、ゆっくりでいいので、起き上がり続けてください。
これからの皆様の新しいステージにおいて、神様が共におられ、神様が豊かに祝福してくださいますように、お祈りしております。皆様ご卒業おめでとうございます。