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2025.1.31
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桃山学院大学における生成AIの利用ガイドラインについて

2024(令和6)年10月9日
大学評議会承認

1 本ガイドラインの目的

桃山学院大学は2023年6月8日に「ChatGPT等の生成系AIに関する基本方針について」を発表しました。その趣旨に基づき本ガイドラインを作成しました。
本ガイドラインは、桃山学院大学における学修・教育・研究・業務でChatGPT等の生成AIを利用する際に注意すべき事項を解説したものです。
生成AIは業務効率の改善や新しい企画等の提案に役立つ反面、入力するデータの内容や生成物の利用方法によっては法令に違反したり、他者の権利を侵害したりする可能性があります。
生成AIは大変便利でありますが、利用に関してトラブルが発生しないように、本ガイドラインを熟読して利用してください。


2 生成AIに関する基本方針

既に発表しました基本方針のとおり、今後広く生成AIが利活用されていくであろうことを踏まえ、その利用を一律に禁止することはしません。学生・教職員が学修・教育・研究・業務において生成AIを適切に利活用することを基本方針とします。


3 本ガイドラインが対象とする生成AI

本ガイドラインは生成AI全般を対象としています。
また、これらの生成AIによって機能拡張されたソフトウェアも同様と考えます。


4 生成AIの利用が禁止される用途

本学では以下の用途・業務での生成AIの利用を原則として禁止します。
(1)個人情報を用いての利用(個人情報保護法に違反する可能性があるため)
(2)機密情報(情報公開されていない財務・業務計画情報等)を用いての利用
(3)他の組織から秘密保持義務を課されて開示された秘密情報を用いての利用

5 本ガイドラインの構成

生成AIは、利用者が何らかのデータ入力を行い、その生成物を得る構造になっています。
したがって、本ガイドラインでは、まず「6 データ入力時に注意すべき事項」と「7 生成物の利用時に注意すべき事項」の2項目について記載し、さらに「8 学修・教育・研究・業務における個別の観点」について記載しています。


6 データ入力時に注意すべき事項

生成AIに入力(送信)するデータは多種多様なものが含まれますが、知的財産権処理の必要性や法規制遵守という観点から以下のデータを入力する際は特に注意が必要です。


(1)著作権侵害に対する配慮
単に生成AIに他人の著作物を入力するだけなら原則として著作権侵害に該当しません。
ただし、当該入力対象となった他人の著作物と同一・類似するAI生成物を生成する目的がある場合には、入力行為自体が著作権侵害になる可能性があります。


(2)登録商標・意匠(ロゴ・デザイン)
商標や意匠として登録されているロゴ・デザイン等を生成AIに入力することは商標権侵害や意匠権侵害に該当しません。
もっとも、この点は著作物と同様、あくまで「入力行為」に関するものである点に注意が必要です。


(3)著名人の顔写真や氏名
著名人の顔写真や氏名を生成AIに入力する行為は、当該著名人が有しているパブリシティ権の侵害には該当しません。


(4)個人情報
生成AIに個人情報を入力する場合、個人情報保護法に基づき特定される本人の同意を得る必要があります。毎回そのような同意取得は運用上現実的ではなく、また入力した情報が他の生成AI利用者の回答に反映されることにより情報が漏洩・拡散する恐れがありますので、個人情報を入力しないでください。


(5)自組織の機密情報
組織内の機密情報を生成AIに入力する行為は、生成AIの処理内容によっては情報漏洩につながります。さらに、特許などの権利が発生する機密情報の場合は法律上保護されないリスクがありますので、当該機密情報を入力しないでください。


(6)他の組織から秘密保持義務を課されて開示された秘密情報
外部事業者が提供する生成AIに、他の組織との間で秘密保持契約(NDA)等を締結して取得した秘密情報を入力する行為は、生成AI提供者という「第三者」に秘密情報を「開示」することになるため、契約に反する可能性があります。そのため、そのような秘密情報は入力しないでください。


7 生成物の利用時に注意すべき事項

(1)生成物の内容に虚偽が含まれている可能性がある
GPTやBERTといった生成AIの大規模言語モデル(LLM)の原理は、「ある単語の次に用いられる可能性が確率的に最も高い単語」を出力することで、もっともらしい文章を作成していくものです。したがって、生成内容には虚偽が含まれている可能性があります。
生成AIのこのような限界を知り、その生成物の内容を鵜呑みにせず、必ず根拠や裏付けを自ら確認するようにしてください。


(2)生成物の利用が既存の権利を侵害するリスク

①著作権侵害

生成AIを利用して出力された生成物が、既存の著作物と同一・類似している場合は、当該生成物を利用(複製や配信等)する行為が著作権侵害に該当する可能性があります。
そのため、以下の留意事項を遵守してください。
・特定の作者や作家の作品のみを学習させた特化型AIは利用しないでください。
・プロンプト(質問・作業指示)に既存著作物、作家名、作品の名称を入力し、生成されたデータが入力したデータや既存のデータ(著作物)と同一・類似している場合は、当該生成物の利用が当該著作物の著作権侵害になる可能性がありますので注意してください。
・特に生成物を「利用」(配信・公開等)する場合には、生成物が既存著作物に類似しないかの調査や、生成物の利用が権利制限規定(著作権法30条1項や同30条の3等)に該当するかの検討を行うようにしてください。
ただし、学生や教職員がAIを利用して生成したものが、既存の著作物と同一又は類似のものだったとしても、授業の範囲内で利用することは著作権法第35条により可能です。


②商標権・意匠権侵害
故意に、あるいは偶然生成された、他者の登録商標・意匠と同一・類似の商標・意匠を商用利用する行為は商標権侵害や意匠権侵害に該当します。よって、生成物が既存著作物に類似しないかの調査に加えて、登録商標・登録意匠の調査を行うようにしてください。


③パブリシティ権侵害
生成AIを利用して生成された著名人の氏名や肖像等を商用利用する行為はパブリシティ権侵害に該当するので注意が必要です。


④虚偽の個人情報・名誉毀損等
生成AIは、個人に関する虚偽の情報を生成する可能性があることが知られています。虚偽の個人情報を生成して利用・提供する行為は、個人情報保護法違反(法19条、20条違反)や、名誉毀損・信用毀損に該当する可能性がありますので、そのような行為は行わないでください。


(3)生成物について著作権が発生しない可能性がある
仮に生成物に著作権が発生していないとすると、当該生成物は基本的に第三者に模倣され放題ということになりますので、自らの創作物として権利の保護を必要とする個人や組織にとっては大きな問題となります。
この論点については、生成AIを利用しての創作活動に人間の「創作的寄与」があるか否かによって結論が分かれますので、生成物をそのまま利用することは極力避け、できるだけ加筆・修正するようにしてください。


(4)生成物を商用利用できない可能性がある
生成AIによる生成物をビジネスで利用する場合、当該生成物を商用利用できるかが問題となります。この論点は、利用する生成AIの利用規約により結論が左右されます。

<例>
※ChatGPTの場合、生成物の利用に制限がないことが利用規約に明記されているので、この点は問題になりません。


(5)生成AIのポリシー上の制限に注意する
生成AIについては、これまで説明してきたリスク(主として法令上の制限)以外にも、サービスのポリシー上独自の制限を設けていることがあります。

<例>
※ChatGPTを利用する場合、以下の点に注意してください。
ChatGPTの利用ポリシーでは、「アダルトコンテンツ、アダルト産業、出会い系アプリ」、「許可なく法律実務を行うこと、または資格のある人が情報をレビューしないままに特定の法的助言を提供すること」などの具体的禁止項目が定められています。また、医療、金融、法律業界、ニュース生成、ニュース要約など、消費者向けにコンテンツを作成して提供する場合には、AIが使用されていることとその潜在的な限界を知らせる免責事項をユーザに提供する必要があることも同ポリシーには明記されています。さらに、関連ポリシー上は、ChatGPTなどOpenAI社のサービスを利用して生成されたコンテンツを公開する際には、AIを利用した生成物であることを明示することなどが定められています。
※Usage Policies(https://openai.com/policies/usage-policies


8 学修・教育・研究・業務における個別の観点

(1)教育の観点
【学修における留意事項(学生対象)】
学修において重要なのは、自身が主体的に学び、その学びを深めていくことです。学修における生成AIの活用方法としては、例えば、自身のアイディアを拡げる・深めるための仮想の対話相手にするといったような、「自ら主体的に学ぶ」ことを補助するツールとして利用することが考えられます。一方で、答えを求めて生成AIに依存しすぎると自身の学びに繋がりません。生成AIの利活用に際しては、特に以下の事項に注意してください。
①授業等における生成AI利用の可否は、それぞれの授業科目によって異なることがあるため、生成AIを利用する際は、事前に担当教員や指導教員に確認してください。
②意図せず剽窃(盗作)等の不正に当たる場合があるため、また、自身の学びに繋がらないため、生成AIの出力結果をそのままレジュメ、発表資料、レポート、卒業論文等に用いてはなりません。
③生成AIを利用した際は、利用した事実や生成AIを利用した該当箇所等を明記しなければならない場合があります。
④生成AIの出力結果を鵜呑みにせず、妥当性や信頼性を確認し、責任を持って利用してください。
⑤生成AIへの情報入力を介して、意図しない情報流出・漏洩が生じるおそれがあることを理解した上で利用してください。


【教育における留意事項(教員対象)】
学生の生成AIの利用をコントロールすることは困難であり、その利用を完全に排除することは現実的ではないと思われます。生成AIは、利用の仕方によっては、作業効率や教育効果の向上が期待できる一方、学生自身の学びの促進や厳格な成績評価に係わって大きな問題が生じることも懸念されます。教育目標を達成し、学生が学位授与方針に掲げられた諸能力を獲得できるよう、以下の事項を念頭に置きながら教育を実施する必要があると考えられます。
①レポート等、課題の提出を求める際は、生成AIの利用の可否、あるいは条件等について明確な指示を与える。
②ルールを守らなかった場合の対応について明確にした上で、適切に利用するよう注意喚起を行う。同時に生成AIのリスクについて注意喚起を行う。
③課題の出題方法を工夫する。例えば、インターネットで簡単に検索できる事実を記述させるような課題は避け、授業で取り扱った内容や意見交換を反映させることを評価基準とする方法などが考えられる。
④学生に生成AIを利用させず成績を評価したい場合は、生成AIの利用を禁止したうえで授業時間内に教室で実施できる課題、テスト、口述試験等の方法をとる。
さらに、教員自身が、生成AIに何ができて何ができないのかについて理解を深めた上で、生成AIの利用について向き合うことが必要であると思われます。例えば、仮に設定した課題を生成AIに入力し、その出力結果を評価することで、生成AIの特徴を理解し課題を工夫することができます。また教員が生成AIの出力結果を評価するプロセスを学生と共有し、さらには学生に出力結果を改善させることで、生成AIの利点と限界を学生に考えさせることができます。


※「(1)教育の観点」に関する質問等がある場合は、教務課に確認してください。


(2)研究の観点
【研究における留意事項(教員・学生(主に大学院生)対象)】
研究活動においても、生成AIのような新しい技術やツールの有効利用を図りつつも、関連する法律や研究倫理に反しない範囲内で責任を持って利用する必要があります。そこで、本学の研究活動における生成AIの利用においては、原則的に以下の点に沿って利用することとします。


<論文等の記述内容>
論文等の記述内容については、生成AIの利用有無に関わらず、研究者の責任であることを認識し、研究不正や権利(著作権、肖像権、商標権、意匠権など)侵害が生ずる恐れがある場合には生成AIを利用しないこと。


★特に注意を要する点
・情報の真偽確認:生成AIの出力には、事実ではない内容が含まれている場合があることに留意し、真偽の確認を徹底すること。
・情報の出典確認:生成AIの出力には、出典が不明な内容や他者の著作物の一部が含まれている場合があることに留意し、出典等の確認を徹底すること。
・情報の客観性確認:生成AIの出力は、世論やトレンド等を正確に反映していない場合があることに留意し、情報の客観性の確認を徹底すること(人種、民族、性別、政治的立場等について、差別や偏った意見等を一般的世論と過信することがないように留意すること)。


<個人情報、機密情報等への対応>
生成AIへの入力を通じて個人情報や機密情報等が流出・漏洩する恐れがあるため、個人情報や機密情報(未公開の論文、特許出願に関する情報等を含む)等を用いて生成AIを利用しないこと。


※「(2)研究の観点」に関する質問等がある場合は、学術支援課研究支援室に確認してください。


(3)業務の観点
【業務における留意事項(教職員対象)】
業務において生成AIを利活用することは教職員の業務効率化につながる可能性があるため、今後、様々な場面において利活用することが想定されますが、「6、7の注意すべき事項」に記載した問題を引き起こす可能性があることを理解した上で、以下の事項をよく確認の上、学内規則に則った利活用を検討ください。
① 個人情報や機密情報等の流出には十分留意し、安易な利活用はしないこと。
② 生成AIによって作成された文章には、虚偽や矛盾、不適切な表現、他者が著作権を有するもの等が含まれている可能性があるため、作成された文章を業務上利活用する前には、作成者自身がよく確認した上で、その内容を理解・評価し、修正や加筆を行うよう注意すること。
③ 生成AIをめぐる議論や利用時の注意に関する最新の動向を把握すること。


※「(3)業務の観点」に関する質問等がある場合は、学長室に確認してください。


9 事務所管

本ガイドラインの事務所管は学長室とする。


10 改廃

本ガイドラインの改廃は大学評議会の議を経て学長が行う。


付則

本ガイドラインは2024(令和6)年10月9日から施行。
本ガイドラインは2025(令和7)年1月22日から改訂施行。