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2021.9.28
お知らせ・イベント
2021年度9月 卒業証書・学位記授与式を挙行しました
9月25日(土)午前10時より桃山学院大学チャペル(聖救主礼拝堂)にて、2021年度9月 卒業証書・学位記授与式を執り行いました。

磯晴久学院長と牧野丹奈子学長より、門出を祝う言葉が卒業生に贈られました。

今年も新型コロナウイルス感染症の状況を考慮し、チャペルでの式典をYouTubeでライブ配信し、卒業生・ご家族・ご関係者の皆様にはキャンパス内の指定教室から視聴していただきました。

牧野学長による式辞

磯学院長による祝辞

2021年度9月 卒業証書・学位記授与式式辞

皆さん、ご卒業おめでとうございます。ご家族、ご親戚、関係者の皆様おめでとうございます。桃山学院大学の教職員を代表し、心よりお祝い申し上げます。この1年半は、世界中が新型コロナウィルス感染症のために苦しみました。皆さんにも、いろいろとご苦労をおかけしました。我慢することも多かったでしょう。その頑張りに、敬意を表したいと思います。そして何よりも、1日も早く平穏な日々が戻ることを祈ります。 

昨年から、私たちは、さまざまな制約の中でしか、人と直接会うことができませんでした。改めて、人と繋がることの大切さを感じた方が多かったのではないでしょうか。そこで今日は、アフターコロナを見据え、これからの社会で働き生きていく皆さんに、次のメッセージを届けたいと思います。偶然の出会いを大切にしましょう。なぜこれからの社会では偶然の出会いが大切になるのか?その前にまずは、人と繋がることの意味について話すことから始めたいと思います。

もし「あなたはどのような人間ですか?」と聞かれたら、皆さんはどのように答えますか?一言で自分のことを説明できるでしょうか?これはとても難しいですね。なぜなら、たとえば友人に接しているときの自分、家族と接しているときの自分、恋人と接しているときの自分、すべて少しずつ異なるからです。ではどれが本当の自分か、と考えた時、どれも本当の自分だと気づくでしょう。このようにいろいろな自分がいるため、自分のことを一言では言い表せないのです。では、なぜ、いろいろな自分がいるのか。それは、人はそのときの相手との関係において、自分の役割が決まり、自分の気持ちや言動などが決まるからです。人との関係によって自分がつくられ、そして自分がまた人との関係をつくっていく。このことは、そもそも人は人と繋がりながら生きていく存在であることを意味しています。そして、人と繋がりをつくっていく、その中でも特に偶然の出会いが、これからの社会では大切となります。
 
今日の社会は、不安定で、不確実で、複雑で、曖昧だとよく言われます。このような社会では、過去の成功体験も単純な将来予測もあまり役に立ちません。たとえば仕事においては、新しい価値を生み続けること、すなわちイノベーションが求められます。では、イノベーションの源は何か。もちろん、技術革新は重要です。しかし、もっと大切なことは、かつてなかったような新しい考え方です。何がよいか、何が正しいか、何が面白そうか、といったことを感じとったり、判断したりするための新しい考え方をもつことです。この新しい考え方があってこそ、技術も活きるのです。また、これは仕事に限ったことではありません。個人のライフスタイルでも同じことです。「皆がそれをやっているから」とか、「昔からそういうものだから」といったような基準で人生を歩んでいたら、これからの社会では道を誤ってしまうでしょう。新しいさまざまな考え方を積極的に取り入れつつ、自分のライフスタイルを自分で築いていくことが求められると思います。

とはいっても、人は、いったん身についた考え方を変えることはなかなかできません。そんなとき役立つのが、人との偶然の出会いなのです。

ここで、グラノベッター(M.Granovetter)という人の「弱い繋がり」という研究を紹介したいと思います。これは、家族や親友といった強い繋がりよりも、ちょっとした知り合いや滅多に会わない人のような弱い繋がりの方が、自分にとって価値のある情報を与えてくれる可能性が高いということを示した研究です。なぜならば、強い繋がりの人とは日々接していて、考え方や環境などが自分と似通っているために、持っている情報も自分と似ていることが多い。これに対して、弱い繋がりの人は自分と異なった考え方や環境などを持つ可能性が高いので、思いもよらない情報を与えてくれることがある。さらに結果的に、強い繋がりしか持たない人は、自分と異なる考え方に対して排他的になってしまう。これに対して、日頃から弱い繋がりも持つ人は、自分と異なる考え方に対しても自然とオープンな姿勢になれる、というものです。偶然の出会いから生まれる繋がりも、この弱い繋がりのような特徴を持っていると思います。

また、思わぬ人との偶然の出会いを招くのは、オンラインではなくリアルな繋がりだということを最後に話して終わりたいと思います。たとえば、何か面白い本がないかなと探すとしましょう。インターネットでキーワード検索するときは、知らず知らずのうちに自分で範囲を限定しながら本を探すことになります。これに対して本屋で探すときは、店内を歩きながら、ふと目に留まった思わぬ本を手に取ることがあります。本との偶然の出会いです。人との出会いも同じことです。オンラインでは、自分で限定した範囲内での出会いを増やすことはできますが、想定外の出会いはあまり期待できません。これに対して、リアルな繋がりでは、地理的な制約はありますが、たとえば自分の考え方と全く異なる人とたまたま知り合うといったような、想定外の出会いがあるでしょう。

これからの社会で、偶然の出会いを大切にしてください。その人の考え方が自分と違っていても、勇気をもって繋がってみましょう。そして、考え方の幅を広げながら、仕事でイノベーションを起こしたり、自分流のライフスタイルを築いたりしてください。皆さんのご活躍と幸せを、大学から、教職員全員で見守っております。


2021年9月25日
桃山学院大学 学長
牧野丹奈子