独自の研究を突き詰め、本研究科を
修了した方々の実績をご紹介します。
私の研究テーマは何回も変わってきました。最初は「近代日本の翻訳語」、次は「福沢諭吉の思想」、現在は「日中の儒学思想」となっています。とんちんかんな変遷に見えるかもしれませんが、テーマを変える理由はきちんとあります。
明治前後の日本では、たくさんの造語が誕生しました。例えば「自由」、「恋愛」などのような新しい翻訳語が、近代西洋の概念とともに持ち込まれました。当時の日本に来ていた中国人留学生はこれらの言葉を習得して中国に持ち帰り、中国でも流行させました。近代日本の翻訳語は漢字という日中共有の言葉に、西洋の新しい意味合いをもたらしたと思います。
福沢諭吉の『学問のすすめ』はまさにこの時代背景で完成したものです。「天は人の上に人を作らず」という、人間は生まれからみな平等だという西洋の思想を説明するとき、「天」という中国思想の概念を使いました(ヨーロッパでは「神」が人を作りますから)。福沢諭吉は中国思想の代表と言われている儒教を勉強し、それと西洋思想を融合して本を書きあげたのに、その本人が生前儒学の悪口をたくさん言ったことも面白いと思います。福沢はどんな儒学を学んできたのかが気になり、今は近世の学問である儒学について調べています。
大学院は学部(大学)と違って、学生数は少ないです。特に文学研究科は当時、修士は6人ぐらいで、院生研究室一部屋を独り占めするときも多かったです。自分の部屋よりずっと暖かいし、設備も充実しています。図書館とはエレベーターで直通でとても便利でした。修論を書くとき、そこで一人で徹夜することが何回もありました。
学問は知れば知るほど、自分の未熟さと出会うことになります。大学院に入って、私は知らないことや、困ったことに対して、焦らずこつこつと探求できるようになった気がします。研究は楽しいことばかりでなく、寂しいときとか資料探しに挫けたときは、隣の経営学研究科を訪問したりしていました。
先輩たちもいい人柄で、卒業するときはたくさんのお土産を残してくれました。主なものは古本ですが、鍋などの調理器具を発見したこともあります。先生はみな親切で、学問に関することであれば、なんでも対応できるぐらい研究熱心な方がおられ、留学生活の悩みについても一緒に考えてくれる先生もいらっしゃいました。
私はいま故郷の大学の日本語講師の仕事をしています。大学院で学んだ日本語力といろんな演習から学んだ知識を役立てています。私が先生になるなんて思いもしませんでしたが、授業の後で学生に留学経験を話したり、日本旅行の質問に応じたりしています。いまの私の頭の中は学生たちのことでいっぱいですが、いつか機会がありましたら、彼らを日本へ、特に桃大へ連れて行き、日本のことを勉強させたり、理解させたりしたいと思います。また、日本の方でも中国文化を勉強して理解する人が増え、お互いに一層仲良くなれたら、というのが私の切実な望みです。
中国で生まれ、中国国籍でありながら韓国語(朝鮮語)を第一母国語、中国語を第二母国語として学んでいて、中学校時代に日本語を第三言語として学びました。いわゆるトリリンガルです。それを生かして将来日本人の方に論理的に中国語と韓国語を教えたいと思い、三言語の文法の比較について研究しました。
研究の上で面白く感じたことは、中日韓英の言語構造の共通点と相違点です。中国語は英語と同じように、基本語順はSVO(S=主語、V=動詞、O=目的語)で、一方、韓国語と日本語の基本語順はSOVです。このSVOとSOVの語順は自然言語の典型的な多数派の語順であります。中国語、日本語、韓国語を同時に比較対照することによって、SOV言語とSVO言語の共通点と相違点をあぶり出していくことができること、また、中国語と英語を比較することで、同じSVO言語の中でどのように相違点があるのかを明らかにできることです。
また、文法の点からみて、言語構造の違いが文化さらには国民気質に与える影響に関してもとても興味深く感じています。よく「中国人は思ったことをはっきり言う」「自己主張ばかりで相手に合わせようとしない」と言われることはありますが、中国語の言語構造では例えば、「私はこちらのほうが好きですけれど」と語尾の変化で曖昧さを表現し醸歩の余地を残す、という表現は難しいことに気づきました。文法のみならず、言語構造の違いによる文化多様性にも興味を持つことになりました。
大学院生時代には研究しながら、語学スクールや女子短期大学で非常勤講師として中国語、韓国語を教えていました。大学院修了後は、言語構造の違いによる日本と中国の比較文化的研究を続けることも考えましたが、「仕事の必要性もあり中国語を学びたい」という企業人や中国文化好きの主婦などが日本に多くいると知り、アカデミックな研究はいったん休止し、中国語スクールを立ち上げました。中国語の「基本」と「実践」の2本柱を大切にしながら日本人への教育を行っていきたいと思います。
桃山学院大学は、キャンパスが自然に満ちていてとても綺麗です。図書館などの施設が充実していて学習環境が整っていました。研究仲間達は同年代から年配の方までいらっしゃいますが、日頃から仲良くし研究の面でも色んなアドバイスをしてもらいました。指導教員は私の研究分野についてたくさん調べながら丁寧に指導してくださいました。国際交流センターからのサポートも厚く、楽しくて充実した留学生活を送ることができました。
(和文) 中国人英語学習者における自律性とテクノロジー利用の関係
(英文) The Relationship Between Autonomy and the Use of Technology in Chinese Learners of English
(和文) 映像作品を日本語教育の課外教材とするための基礎研究 —中国語母語話者に向けた日本語中級教材作成をめざして—
(英文) The Basic Research of Using Video Works as Extracurricular Materials for Japanese Education–For the Propose of Developing Intermediate Japanese Teaching Materials for Native Chinese Speakers–
(和文) 1995年以降における村上春樹作品の物語の変容 —『スプートニクの恋人』と『海辺のカフカ』を中心に—
(英文) The Transformation of Storytelling of Haruki Murakami after 1995 —on “Sputnik Sweetheart” and “Kafka on the Shore”—
(和文) インドネシア・バリ島における観光と子どもに関する人類学的研究~バリ舞踊実践を通して~
(英文) An Anthropological Study of Tourism and Children in Bali:The Practice of Balinese Dance
(和文) 福沢迷路 —福沢諭吉の『学問のすすめ』における創作本意—
(英文) The Maze of Fukuzawa –Fukuzawa Yukichi's Real Intention in An Encouragement of Learning
(和文) 妖精の世界:シェイクスピア『真夏の夜の夢』研究
(英文) The World of Fairies:A Study of Shakespeare's Midsummer Night's Dream
(和文) ヒト自然言語において疑問詞が異なる構造的位置で発音されるのは何故か?
(英文) Why are wh-phrases pronounced at distinct structural positions in human natural language?
(和文) 「赤・青・白・黒」から成る語句が色を表さない場合について
(英文) Compounds and Idioms Which Consist of Kanji That Means Color:When They Don't Have the Meaning of the Color
(和文) 日中関係の歴史的考察 —『漢書』から『新唐書』を中心に
(英文) Historical Study of the Japan–China relation from Han Dynasty to Tang Dynasty
(和文) 対談インタビュー番組における「ほめ」の会話分析 —「徹子の部屋」を通して
(英文) Conversation Analysis of Compliments in a Television Interview Program
(和文) 明代宦官の禍害と王朝の滅亡 —宦官の起源から漢・唐を経て
(英文) Eunuchs and the Collapse of Chinese Imperial Dynasties,With Particular Reference to the Ming Dynasty
(和文) インドネシアにおけるコスプレ文化の誕生と発展
(英文) The Birth and Development of Cosplay Culture in Indonesia
(和文) 「紅楼夢」における「荘子」の世界
(英文) Zhuangzi's World in Dream of the Red Chamber
(和文) 台湾のアジア花嫁 —高雄市における生活適応を中心として
(英文) Asian Brides in Taiwan :The Life Adjustment Process in Kaohsiung.
(和文) 21世紀の日本における茶 —そのあり方と意義—
(英文) Tea in 21st-century Japan:Its forms and significance.
(和文) 千利休切腹の原因およびその後の千利休の死をめぐる言説に関する研究
(英文) A Study of Sen no Rikyu's Death:The Circumstances behind his Seppuku, and its Subsequent Treatment
(和文) アフリカ系アメリカ人とアメリカン・ドリーム — ホワイト・アメリカとの交渉
(英文) African Americans and the American Dream:Negotiating with White America
(和文) 中国人日本語学習者の外来語習得の問題 —日本語教科書の外来語語彙と使用実態との乖離から—
(英文) The Problem of Learning Japanese Loanwords by Chinese Learners of Japanese : the Gap between the Loanwords Introduced in a Japanese Language Textbook and the Actual Usage by Japanese People
(和文) トロロープとアイルランド
(英文) Anthony Trollope and Ireland
(和文) 植民地期朝鮮における衡平運動の研究 —日本の水平運動の観点から—
(英文) A Study of the Equalization Movement in Colonial: Period Korea from the Perspective of the Levellers' Movement in Contemporary Japan
(和文) 朝鮮の「白丁」身分の歴史的分析
(英文) Historic Analysis of Paekjeong in the Chosen Dynasty period
(和文) Thomas Hardyの小説における光と闇:女性達の意識と身体
(英文) Light and Darkness in Thomas Hardy's Novels: Women's Consciousness and Body
(和文) 近代日本の豊臣秀吉認識 —現代の日韓における研究の比較
(英文) Estimations of Toyotomi Hideyoshi in Modern Japan: A Comparison of Current Korean and Japanese Research
(和文) パゾリーニの挑戦 —映画 『アッカトーネ』 にみるイメージの具象化—
(英文) The Challenge of Pasolini :The Representation of Reality in Accattone
(和文) 移民歌からみたアイルランド移民
(英文) A Study of 19th–Century Irish Immigrants and Their Songs
(和文) 台湾におけるアジア花嫁
(英文) Asian Bridges in Taiwan
(和文) 日本の家族と老人扶養の実態
(英文) The Family and Elderly Care in Japan
(和文) インプット処理に焦点を当てた文法指導の実証的研究
(英文) A Study of Grammar Instruction Focusing on Input Processing
(和文) Crystal Palace と Wuthering Heights
(英文) Crystal Palace and Wuthering Heights
(和文) 「日本人の「善悪」の価値規範形成の流れ」~『今昔物語集』巻二十六、二十九を中心に~
(英文) On a Formation of Norm Consciousness In Right and Wrong in Japanese People With Considering on Konjakumonogatari" Vol.26 and vol.29"
(和文) 1930年~1960年代における砂丘地農家の女性生活誌 —鳥取県北条砂丘に暮らす古老からの聞き取り—
(英文) Life Histories of Farming Women of the Tottori Sand Dunes,1930s~1960s:An Analysis of Interviews with Elders of the Hojo Sand Dune
(和文) 浅川巧の朝鮮認識における理想と現実 —「日記」の分析を中心にして—
(英文) Ideal and Reality in Asakawa Takumi's Image of Korea : An Analysis of His Diary
(和文) 『紅楼夢』にみられる『荘子』の世界 —第二十一回、二十二回、六十三回
(英文) Zhuangzi's World in Dreams of the Red Chamber and concentrated on Chapter 21,Chapter22 and Chapter 63"
(和文) ジェンクス版『エデンの園』—守られたヘミングウェイ像—
(英文) Jenks' Garden of Eden : Hemingway's Protected Image
(和文) ヴェネツィア・オペラの黄金期と劇場
(英文) The Golden Age of Venetian Opera and the Theaters
(和文) 日本昔話に登場する鳥のイメージ
(英文) The images of Birds in Japanese Folktales
(和文) フランシスコ=ザビエルの来日日付に関する一考察 —ザビエルの実像の解明に向けて—
(英文) A Study of the arrival date in Japan of Francisco Xavier– For the elucidation of the real image of Xavier –
(和文) 台湾における日本ポピュラー文化の変容 —テレビドラマを中心に
(英文) The transformation of Japanese popular culture in Taiwan – Through TV drama
(和文) 「ペアとなる外来語の造語成分としての機能について —「アップ」と「ダウン」を中心に」
(英文) The Function of Foreign Words in Japanese that Can Be Used as Suffixes:the case of appu(up) and daun(down)
(和文) 19世紀イギリスにおける「ゴシック・リバイバル」—ウィリアム・モリスと中世復興—
(英文) The Gothic Revival in Nineteenth–Century England: William Morris and Medievalism
(和文) 在日中国人青少年の日中両言語における親族呼称の使い方について —二言語環境の視点から—
(英文) Terms Used to Designate Relatives by Ethnic Chinese Student Living in Japan: A Study from the Bilingual– Environment Viewpoint
(和文) 現代日本の仏壇にみる霊魂観 —タイの霊魂観との相違において—
(英文) The Modern Japanese Conception of the Soul, as seen in Buddhist Altars–In Comparison with the Conception of the Soul in Thailand–
(和文) 『韓非子』解老篇にみえる『老子』思想について
(英文) Philosophy of Laozi in Hanfeizi, Jielao–pian
(和文) 南の思考 —イタリア思想に見る逆転の発想—
(英文) The ‘Southern Perspective' in Modern Italian Thought– A Reversal of Orthodox
(和文) 日韓国際結婚家庭におけるバイリンガリズム —就学前児童と1年生児童の二言語能力評価を通して—
(英文) Bilingualism in the Japan–Korea Mixed Marriage Families:Through the Proficiency Assessment of Japanese and Korean Language of a Pre–school Child and a First Year Student
(和文) 中国ルーツの児童の二言語能力評価 —日本語習得と母語保持を目指して—
(英文) The Bilingual Proficiency of an Ethnic Chinese Student in a Japanese Elementary School:A Study of Japanese–Language Acquisition and Chinese–Language Maintenance
(和文) 非外来語におけるカタカナ表記の実態–コーパス検索と中・上級日本語教科書についての調査から–
(英文) The Use of Katakana with Words of Non–Foreign Origin:A Study of the Balanced Corpus of Contemporary Written Japanese(BCCWJ)and Intermediate/Advanced Japanese Language Textbooks